260人超を解放“監禁され”特殊詐欺か…実態の証言“拠点”内部の映像も【バンキシャ!】
ミャンマーで監禁され、詐欺に加担させられたとみられる外国人260人超が解放され、日本人の少年も保護されました。バンキシャ!は、実際に特殊詐欺グループの拠点で働かされていたという複数人の証言と、拠点の内部映像を入手しました。【バンキシャ!】
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15日、私たちはタイ北西部で車を走らせていた。
富永大介 記者 NNNメソト
「検問所が見えてきました。今、タイとミャンマーの国境に近づいているんですが、検問所が設置されています」
「日本のメディアです、OK?」
検問所を抜け、国境へと向かう。すると…
富永記者
「国境の町です。至る所にこのような看板が掲げられています」
看板には、赤字で“警告”の文字。「だまされてミャンマーに連れて行かれた人は、すべてを失います」と書かれていた。
そして、いよいよ国境へ。
富永記者
「ありました。ここが260人以上の被害者が解放された場所です」
川の向こうが、ミャンマーだ。この場所で12日、多くの人々がタイ側に渡る船へと乗り込む。
内戦状態が続くミャンマーでは、国境地帯に中国の特殊詐欺グループが拠点を置き、拉致した外国人を働かせているとみられている。
この日、そうした外国人260人以上が解放され、タイに逃れたのだ。被害は日本人にも及んでいる。
1月には17歳の高校生が保護され、14日には新たに16歳の少年が保護されたことがわかった。2人とも特殊詐欺の拠点で働かされていたとみられている。
日本人を含む多くの人々が連れて行かれた“特殊詐欺の拠点”。いったいどんな場所なのか。
わたしたちの取材でその一端が見えてきた。
「ここに閉じ込められて17時間も18時間も働かされています。給料も休みもないんです」
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13日、タイ・バンコクの空港で1人の日本人が身柄を拘束された。藤沼登夢容疑者、29歳。日本に住む17歳の高校生をだましてミャンマーへ連れて行き、詐欺に加担させた疑いがもたれている。
高校生は藤沼容疑者とオンラインゲームを通じて親しくなり、タイへ渡航するよう誘われたとみられている。
さまざまな手口で、特殊詐欺グループの拠点へと集められた人々。
ミャンマーの国境地帯にある、中国系特殊詐欺グループの拠点。そこに監禁され、脱出してきたという2人に話を聞くことができた。
1人目は38歳の中国人の男性。上海でアルバイトをして暮らしていたという。
記者
「どういう経緯でミャンマーに行くことになった?」
監禁されていた 中国人(38)
「SNSで、映画のエキストラの募集を見つけたんです。有名な監督が撮影するかなり大きなプロジェクトだということでした。セリフももらえて、報酬は1か月で1万元(約21万円)と書かれていました」
応募すると、合格の通知が。指定された場所へ行くと男がいて、車に乗せられたという。
中国人(38)
「途中で、なにか変だなと思いました。ホテルもないし、ロケで使うはずの照明も、衣装スタッフも見当たらない。『ここは本当にロケ地ですか』と聞きましたが、答えは返ってきませんでした」
「そして移動を始めて3日目、ミャンマー北部の町に着いたんです」
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次に話を聞いたのは、30歳のケニア人男性。きっかけは2024年10月、転職エージェントにタイでの仕事を紹介されたことだった。
監禁されていた ケニア人(30)
「給料がいいシェフの仕事があると言われました。条件にひかれてタイに行くことを決めたんです。バンコクの空港に着くと豪華な車が迎えに来ていました。とてもいい職場だと思いました」
しかし喜びもつかの間。車は空港からミャンマーとの国境へ。
ケニア人(30)
「国境の川では数人が私たちを待ち構えていました。荷物をとられ、ボートに乗せられ、ミャンマー側に連れて行かれました」
では2人が連れて行かれた“特殊詐欺の拠点”とは、どんな場所だったのか。
私たちがタイで取材していると…
富永記者
「今わたしはタイ側にいるんですが、見えるのがミャンマーの詐欺の拠点とみられる場所です」
実はミャンマー国内には、“特殊詐欺の拠点”が集まるエリアが複数あるとされている。その1つがタイ側から垣間見えた。
「マンションのような建物がいたるところにあって、1つの町のようになっています」
1月30日、さらに私たちはドローンで、別のエリアを撮影した。
広大な敷地に立ち並ぶ、大小さまざまな建物。この中に、“特殊詐欺の拠点”があるとみられている。中国人の男性が連れて行かれたのも、こうした建物。そこでSNSを使った“ロマンス詐欺”に加担するよう強制されたという。
監禁されていた 中国人(38)
「朝10時半から夜中の2時まで詐欺をやらされました。インスタグラムでお金を持っていそうなターゲットを探して、ひたすらメッセージを送るんです」
「各フロアには銃を持った監視役がいて、常に見張られていました」
厳しい監視の下、実に数百人が、特殊詐欺をさせられていたという。
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これは“拠点”の内部で、15日撮影したとされる映像だ。
人身売買対策に取り組むタイのNGOが入手したという。宿舎だろうか。狭い空間に2段ベッドがところ狭しと並んでいる。
「ここに映っているのは16人ですが、ほかにも大勢の人がいます。カメルーン、ナイジェリア、ケニア、ルワンダ、リベリア、エチオピア。みんなここに閉じ込められているんです」
拠点では日常的に、暴力もふるわれていたという。これはバンキシャ!がタイの市民団体から入手した映像。
黄色の服を着た“監視役”とみられる人物が横たわった男性を蹴ったり、殴ったりする様子が捉えられている。
監禁されていた ケニア人(30)
「監視役に逆らうと、棒で殴られたり、気絶するまでスタンガンで電気ショックを与えられたりしました」
「私は毎日、『これは私の人生ではないんだ』『絶対にここから出てやる』と自分に言い聞かせていました」
男性は9日、監視役の隙をついて脱出することができたという。
あまりにも過酷な環境。そこには「複数の日本人もいた」と人々は口をそろえる。
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私たちが話を聞いたバングラデシュ人は…
監禁されていた バングラデシュ人(25)
「日本人はいました」
「(犯罪組織の)リーダーに『日本や台湾の人はよく働くのに、なぜお前たちバングラデシュ人は働かないんだ』と怒られて、それで日本人もいるんだとわかったんです」
監禁されていた 中国人(38)
「最近、日本人と韓国人を高いカネで集めていると聞きました。『日本人と韓国人をだますためには、ネーティブの方がいいから』と言っていました」
被害者の支援にあたるタイの市民団体は、少なくとも31人の日本人が今も“拠点”にいるとみている。
*2月16日放送『真相報道バンキシャ!』より