遺品整理人が作ったミニチュアが伝える孤独
遺族や関係者からの依頼を受けて、遺品の整理や家の清掃を行う“遺品整理人”。
およそ8年前から年間350件もの現場に携わる中で、特に気になるというのが、「孤独死。50~60代の方が一番多い」
“普段、目にすることのない孤独死の現場を多くの人に知ってもらいたい”そんな思いで作ったミニチュアは、11点。作ったのは、遺品整理人・小島美羽(こじま・みゆ)さん、29歳。
ある日、孤独死の現場の依頼が入る。亡くなっていたのは、一人暮らしをしていた50代後半の女性。
死後10日以上たってから、デイケアのスタッフが発見した。遺品が多く、一人では片づけられないと、遺族が遺品整理と清掃の依頼してきた。
小島さんは、花を供えたあとで作業へ。布団や衣類が山積みになった部屋の中から思い出の品や貴重品を見つけ出し、最後に、遺族へと引き渡す。亡くなった人の大切な物を捨ててしまわないように、とひとつひとつ慎重に確認。遺品を全て片付けた後は、清掃。
4人~5人で5日間かけて、すべての作業を終えると…。最終日には、遺族の希望があれば、祭壇まで設けて供養する。祭壇に置かれていたのは、小島さんたちが見つけた、亡くなった人の若い頃の写真だった。
「やっぱりただの片付けじゃないんですよね、遺品整理って。最後にその人のことを思い出してあげるというか」と小島さんは言う。
小島さんがミニチュア制作を始めたのは、作品を通して、少しでも多くの人に「孤独死」について知ってほしいという思いから。一番苦労したという作品というのが、ゴミが山積みになった部屋。
「心身ともに疲れちゃうとこういう状況になるんだよ。リストラだったりとか、離婚だったり、いじめだったり。自分は関係なくないですよ、自分にも起こりうることですよっていうのをわかってもらうために制作して」
実際、このようにゴミが山積みになった部屋も多いのだそう。孤独死を、他人事ではなく、誰にでも起こりうる問題として考えてほしいという小島さん。遺品整理人になるきっかけは身近な人の死だったという。
「自分の父が、高校2年生の時に突然倒れて…」
13年前、別居していた父のもとへ母が訪ねると父は意識のない状態…まもなく亡くなってしまう。
「亡くなって初めて本当は父のことを尊敬していたんだなって。失ってから気づくことって結構多くて…」
気づいたのは、“あの日、母が父を訪ねていなければ父は誰にも気づかれず孤独死していたのではないか…”ということ。こうした経験から、孤独死をした人の遺族の気持ちに寄り添うことができるかもしれない、と22歳で「遺品整理人」に。そんな小島さんが立ちあう、孤独死の現場は、コロナ禍によって、変化が見られるようになったという。特に驚いたというのが…。
「『餓死』ですね。冷蔵庫に何も入っていなくて唯一豆腐のカラが山積みにされていた。安いものでお腹を満たしていたのかな」
誰も、頼れる人がいなかったのかもしれないと言う。以前は死後2~3日で発見されることが多かったそうだが、いまは3週間以上、なかには半年後というケースもあるという。
コロナ禍で、小島さんが制作していたのが『二世帯での孤独死』という作品。亡くなった父親の部屋の食卓にはカビが生えた食事。その横に置かれたバナナは黒ずみ、発見されるまでの時間の長さが表現されている。二世帯住宅で暮らしていても、隣の部屋で亡くなっていることを知らずに、発見するまで1週間ほどかかったケースもあるという。
小島さんは作品を通して、「やっぱり直接会ったりとか連絡とか取らないと、何が起こっているかわからない。そういえばあの人、最近どうしているかな、と気になるきっかけになればいい」と伝えたいという。
※詳しくは動画をご覧ください。(2022年6月27日放送「news every.」より)