わが子がコロナ陽性の医師「家庭内隔離は諦めた」――実践する「就寝時」「歯磨き」の工夫 4学会「自宅療養を」声明ナゼ?
4つの学会が2日、新型コロナウイルスへの感染が疑われても重い症状がないなどの場合は「慌てて受診せず自宅療養を」と訴える共同声明を発表しました。感染者らはどう受け止めたのでしょうか。子どもが感染した医師は「ゾーニング(隔離)による対策は諦めました」と話します。自宅療養での対策と準備を聞きました。
■「慌てず自宅療養を」…4学会が訴え
2日夕方、日本感染症学会など4つの学会が共同声明を発表しました。
日本プライマリ・ケア連合学会の大橋博樹副理事長
「症状が軽く、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、慌てて検査や(医療機関を)受診する必要はありません。自宅療養を続けられます」
日本感染症学会・四柳宏理事長
「症状のほとんどが2~4日間くらいで軽くなるということが知られています」「順調に経過すれば、普通の風邪とあまり大きな差はございません。検査を受けることができなくても慌てないで、ご自宅での療養をしていただくことが大事」
■医療機関を受診する「目安」とは?
重症化するのは「数千人に1人程度」だとして、医療機関を受診する目安を示しました。
「感染したかも?」と思った時、医療機関の受診が必要としたのは、65歳以上の人、基礎疾患がある人、妊娠中の人や、37.5度以上の発熱が 4日以上続く、呼吸が苦しいなどの症状がある人です。
一方、これらに当てはまらない65歳未満で、飲んだり食べたりができる、呼吸が苦しくない人は、急いで受診する必要はなく「自宅療養」を続けてほしいということです。
日本プライマリ・ケア連合学会の大橋副理事長
「コロナだと思って仕事を休もう、コロナだと思って自宅で療養しようという風に、まずは思っていただくことで、医療のひっ迫に協力いただける風潮が広まってほしい」
病床や救急車など、医療資源のひっ迫を緩和するためのお願いです。
■街の人「陽性かは確認したい」の声
都内で、街の人に受け止めを聞きました。
大学生(21)
「突き放された感じがします。でもそれだけ医療がひっ迫しているのかなと思うので、もっと気を引き締めないと」
会社員(27)
「そしたら自宅療養しますね。ただ、ちょっと申請すれば自分で検査できるキットを送ってもらえれば」
陽性かどうかは確認したい、という声が聞かれました。
■感染判明の女性、声明に「不安」も
2日に感染が判明したという女性(26)に夜、話を聞きました。
「全然体がしんどいとかもなくて、全然発熱もないから…。軽症のうちの本当に軽症の方だと思います」
1歳の子どもが発熱したことで病院へ行き、PCR検査で陽性となりましたが、熱はなく、症状はのどの違和感と鼻水程度。2日に発表された声明に照らすと「受診を控える対象」になりますが、「(受診しないのは)不安な気持ちですね」と漏らします。
「もし息子が発熱してなくてPCR検査受けてなかったら、 (コロナと思わず)多分そのまま外出し続けていたのかなと思いますね」
「(受診しないことで)自己判断で外出してしまう人もどんどん増えちゃうと思うので、さらにここから(感染が)どんどん拡大していっちゃうのかな、と思うところが不安ですね」
■日本感染症学会「療養期間は変わらず」
2日の会見では、記者から質問が寄せられました。
――情報発信を誤れば、「風邪だから歩き回っていい」という誤解を持つ人もいるのでは?
日本感染症学会・四柳理事長
「療養期間が10日間というのは今も変わっていません。症状が軽くなったからといって、隔離期間の間は自宅療養ですね」
一方で、顔色が悪いなど症状がある時は、救急車を呼ぶことをためらわないでほしいと話しています。
■現場の医師「発熱外来の強化を」
実際にコロナ患者を診ている医師は、今回の声明をどう捉えているのでしょうか。
昭和大学病院・相良博典院長
「発熱外来に非常に多くの患者さんが押し寄せている状況に関しては、少し軽減はできるのではないかなと思います」
この病院には現在、入院患者の中に重症者はいないといいます。相良院長は、患者を受け入れられるよう発熱外来を強化することも重要だと訴えます。
「ワクチン接種でいろんな接種会場をいろいろ作って、そこに集約してやっていますが、それと同じようなシステムで、例えば発熱外来のいわゆるその陽性者かどうか、ということをやるところ、(発熱外来の)施設をつくることでも、全然違うと思うんですよね」
■医師も痛感…「家庭内隔離」の現実
では、家庭内感染を広げないためにどうすれば良いのでしょうか?
都内で訪問診療を行う「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長(32)に話を聞きました。自身の子ども2人が陽性となり、一家は自宅療養中。3歳の息子は7月31日に、7か月の娘は8月1日にそれぞれ陽性となりました。
これまで医師として、家庭内感染を防ぐための対策を伝えてきましたが、いざ感染した子どもと一緒に生活してみると、難しい現実がありました。
息子
「公園行きたかったの…」
田代院長
「行きたいよね。でもね、今病気だから行けないんだ」
息子
「行きたい、行きたい! 行きたい、行きたい!」
室内で「マスクつけて」と田代院長が促すも、「いやーだー! おうち帰ってるからいやだ」と息子が拒む場面もありました。
田代院長
「飛沫発生源がずっとゾーン関係なくうろちょろしている状況ですので、非常に感染対策が難しいのが現状。私はゾーニング(隔離)による対策は諦めました」
■2つの「対策」と3つの「準備」
自宅内隔離が難しい環境でも、両親は感染していません。就寝時と歯磨きに工夫がありました。
子どもと寝る時は、「寝る時もマスクを着けて、外れないことを祈ります」と田代院長。アマゾンで買ったという、高規格の医療用マスクを常に着用しています。「(高規格マスクでない場合は)不織布マスクでもある程度、効果があるんじゃないかと思います」
歯磨きは換気の良い風呂場で行います。「お風呂場だと湿度も高いし、換気扇も回せますから」と言います。
感染前から準備できるものを聞きました。
田代院長
「3つ準備できるものがあります。1つは『医薬品』、2つめは『食料』、3つめはメンタルケアというか、かかると長い時は10日間とか家、ホテルに缶詰めになりますので、『娯楽』というんですかね、そういったものが意外と重要です」
■専門家、「全数把握」見直しを提言
2日夜、政府分科会の尾身会長ら専門家有志が、会見を開きました。ここで出された提言の1つが、保健所の負担となっている、全ての感染者を確認する「全数把握」の見直しです。
神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師
「サーベイランス(調査や監視)の仕組みを根本的に別のものを早急に打ち立てていく」
有働由美子キャスターは「新しいサーベイランスの構築とは具体的にどういうことでしょうか?」と質問。阿南医師は「全国くまなく全てを、ではなくても、一部分の抽出で傾向をつかむことも含めて、情報の取り方は変えていけるのではないか」と答えました。
(8月2日『news zero』より)