産みの選択 新型出生前診断で揺れる命
障がいがあるかもしれない赤ちゃん、産みますか?やめますか?
血液の検査だけで、ダウン症などが高い確率でわかる新型出生前診断。この医療の進歩で悩む、妊娠3か月のRYOさん。
RYOさん「一番最初に、妊娠おめでとうって書いているのを見て、幸せを感じるのでしょうけど、見ると見るだけ辛くなるので」
RYOさんの兄と弟。2人には障がいがあります。
RYOさんの兄「(妹は)そんなに怖くないんですけれども…」
RYOさん「そんなに怖くないけど、怖いんでしょ?」
RYOさんの家系には、男性だけに発症する可能性がある遺伝病があるのです。兄は1歳、弟は小学校に入った頃に、知的障がいなどがあることが分かりました。
RYOさん「(小学校で)同じプールに入ったら汚いとか、(レストランで)ちょっと手が触れただけで店員さんが、あっ汚いみたいによけられたりとか、そういうのを思い出したり」
赤ちゃんの父親とは結婚していません。初めての妊娠。お腹の赤ちゃんは男の子でした。
RYOさん「出産して障がいが発症してということがとても不安で…」
父親である男性に遺伝病のことを伝えましたが理解されず、時間に追い立てられるように、中絶を選びました。
赤ちゃんの3回目の命日。
RYOさん「そのまま延命していたらきょうで3歳になるんだなっていう後悔と、仕方なかったのかなっていう、複雑ですね」
そして、2度目の妊娠。本当なら幸せいっぱいのはずなのに…。男の子か、女の子か、性別が分かる健診の日。
RYOさん「今回本当に女の子であってほしいなという希望で。それがクリスマスプレゼントになればいいなと思いながら」「本当に女の子であってほしいんですけど…先生」
先生「ちょっと診てみましょう。胎盤(たいばん)の位置もいいし、気になるところもない。やっぱり(性別)聞きたい?」
RYOさん「心の準備があるのと、(男の子だったら)堕胎を考えているので。いま何センチくらいですか?」
先生「もう体は全部できあがっています」「(性別を)知りたい?」
RYOさん「知りたい」
先生「たぶんね、男の子です。こっちがペニスの先。ここのところ白っぽくなっているでしょ。まだ100%とは言い切れないです。どちらが可能性が高いかと言われればこっち(男の子)」
RYOさん「男の子かぁ…。(超音波)見るまでは男の子だったら絶対堕胎だなと思っていたんですけど、見ちゃうと…産みたいですけどね」
そして…。RYOさんは3774グラムの男の赤ちゃんを出産しました。産むという決断を最後に支えたのは家族の存在でした。
RYOさんの母「産んでほしいって気持ちがあったので、産んだらって言ったんですよね。強く生きていけるんじゃないかなって気がしたんですよね。親子ともども」
RYOさん「一番大きかったのは『産みなさい』という言葉じゃないですか。それって大きな勇気につながって、自分でも(産む)決断をしたんじゃないかな」
男の子は1歳に。いまのところ障がいがあるかは分かっていません。
※2015年5月、くまもと県民テレビで制作したものをリメイク
【the SOCIAL×NNNドキュメントより】