“ほぼ裸”ポスター「子どもの目に留まったら」……都知事選で異例の事態 犬の写真で“掲示板ジャック”も【#みんなのギモン】
「20日告示された東京都知事選で、ポスターの掲示をめぐって異例の事態となっています。20日夜、候補者の1人がポスターを撤去する事態となりました」
「この候補者は自ら貼ったポスターに『表現の自由への規制はやめろ』などといった文言とともに、ほぼ裸の状態の女性の写真を掲載しました。警視庁は、これが都の迷惑防止条例違反にあたるとして警告。候補者が自らポスターを撤去していました」
「このポスターをめぐってはSNSなどで『子どもの目に留まったら一体どうするのか』などと懸念する声が相次いでいました」
鈴江奈々アナウンサー
「私の子どもの通学路にも掲示板があるので、撤去されていなかったら朝、目にしてしまうのかなと不安になっていました」
鈴江アナウンサー
「こういったものが掲示されていても、私たちとしてはどうすることもできないですよね?」
近野解説委員
「自分で勝手に処置していいのか、ふさいでいいのかなと考える人もいるかもしれませんが、はがしたりふさいだりといった行為は、選挙の自由を妨害する行為として公職選挙法違反となります」
「その上で、もし掲示板を街で見て公序良俗に反すると思った時は、最寄りの警察署や交番に相談してください」
鈴江アナウンサー
「声を上げることはできるということですね」
近野解説委員
「ポスターをめぐる異例の事態は他にもあります。ずらっと、犬の黄色いポスターが貼られています。これを貼ったのは、NHKから国民を守る党の立花党首で、この犬は立花氏が飼っている犬です」
「立花氏自身は今回の選挙の候補者ではありませんが、この部分はNHK党が擁立した24人の候補者に割り当てられた枠です。立花氏は『投票率の向上に努めるには、ワンちゃんネコちゃんが投票に行こうと呼びかけた方が有権者に響く』と主張しています」
「NHK党は今回、『ポスター掲示場をジャックせよ』という前代未聞のプランを打ち出しています。これは、NHK党に寄付金を納めることで都内に約1万4000か所ある掲示板の中から、1か所に自分の好きなポスターを最大24枚貼ることができるというものです」
森圭介アナウンサー
「寄付金を払えば立候補していない人でも、好きなポスターを貼ることができるということですか?」
近野解説委員
「NHK党はそういう形で寄付金を募集しています。誰でも申し出ることができるということです。寄付金の額は時期によって異なりますが、21日の時点では2万5000円からとなっています」
「実際にこれまで約650万円の寄付金が集まり、猫や候補者でない人たちのポスターなどが掲示板の半分を占めている場所もあります」
刈川くるみキャスター
「好きなポスターを貼れるとなると、商品やお店など個人的な広告に使われる可能性もありそうですけど、それは大丈夫なのでしょうか?」
近野解説委員
「ルール上どこまでが許容されて何がNGなのか気になっている方、実際に掲示板を見た時に『あれ?』と考えた方はいらっしゃると思います。今回なぜ可能になり、掲示板はどのようなルールになっているのでしょうか?」
「掲示板は告示前のまっさらな状態だと、番号が振ってあります。都の選挙管理委員会によると、この番号は立候補の届け出順です。NHK党は25番以降に届け出をしていて、掲示板を取り囲むように貼ることができています」
忽滑谷こころアナウンサー
「だからぐるっと貼られているということなんですね。なんでもありと聞こえてしまいますが、事前にどんなポスターを貼るかチェックするシステムはないんですか?」
近野解説委員
「選挙管理委員会はチェックしないし、ルールもそこまで厳しくないんです。具体的には、1つ1つのポスターに責任者の名前と住所を記す必要はありますが、候補者本人の顔写真でなくてはいけないというルールもありません」
「枠の中にさえ収まっていれば、必ずしもポスターの形は四角じゃなくてもいい。形に制限はないので、ハートや星の形もOKです」
鈴江アナウンサー
「そんなに自由度があるものなんですね」
近野解説委員
「NHK党の事例では、寄付をして選挙に関係ない人が自由に貼る行為はどうなのかという疑問があります。総務省によると選挙ポスターは他の候補者の応援や虚偽の内容でない限り、特段の制限はないそうです。掲示枠の販売行為についても禁止規定はないそうです」
近野解説委員
「ただ、林官房長官は21日の会見で『(掲示場は)自身の選挙運動用ポスターを掲示するために設置されるものであることから、候補者以外の方が使用できるものではないということでございます』と、候補者以外は使用できないとの認識を示しました」
近野解説委員
「公職選挙法に詳しい日本大学法学部の安野修右専任講師は『公職選挙法の理念に照らし合わせた時に、いいか悪いかという話になる。民主主義の健全な発展のためにという文脈でとらえた時に、本当に資する行為なのかという疑念は持っている』と指摘しています」
「選挙制度を研究する、早稲田大学政治経済学術院の日野愛郎教授も『政策主張を訴えて公職を志すことができるのが選挙制度で、それは民主主義の根幹。そこの大前提を崩してはならない。今回は非常にゆゆしき事態だ』と話しています」
森アナウンサー
「現時点では法律違反でもないしルールに違反しているわけでもないということになりますから、こういったことが想定されていなかったということですよね。有権者がそれぞれ判断してどう考えるかということになるわけですね」
近野解説委員
「今回の事態について、東京都知事の小池百合子氏は『コメントは差し控えた方がいいかと思います』、安芸高田市前市長の石丸伸二氏は『コンプラは重視するべき。選挙のやり方やルールはアップデートが必要』としています」
「元航空幕僚長の田母神俊雄氏は『他人が迷惑することはやるべきではない、前参議院議員の蓮舫氏は『立候補は自由だと思いますので、特段申し上げることはありません』ということです」
鈴江アナウンサー
「掲示板の件をめぐってはそれぞれの考え方や受け止め方はあると思いますけれども、既に立候補している皆さんは政策を打ち出しています。政策と、こういったやり方を含めて有権者が意思を示す、投票に行くということが大事ですね」
近野解説委員
「都知事選挙には50人以上が立候補しています。投開票日は7月7日です」
(2024年6月21日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
●あなたの身の回りの怒りやギモンをお寄せください。
お寄せいただいた情報をもとに日本テレビ報道局が調査・取材します。