国民1人10万円給付ヘ 海外と比べると?
安倍首相は、与党に対し、すべての国民を対象に一律一人当たり10万円の給付を行う方向で再度検討するよう指示しました。
■「条件付き30万円?」「一律10万円?」混乱した政府の対応
もともと政府は、収入が基準以下まで減少した世帯に対して30万円を給付する案を出していました。一方、公明党は所得制限なしで1人一律10万円を給付する案を出していましたが、調整の結果、政府の案に歩調を合わせる形で4月7日、閣議決定されました。
ただ、政府の案はもらえる条件が複雑なうえ、実際に受け取ることのできる人がとても少ないなど不満の声が相次ぎ、自民党の幹部からも「党への苦情がすごい」という話も。
そこで急遽、自民党の二階幹事長が経済対策の第2弾として、政府の30万円の給付のあとに所得制限ありで1人一律10万円を給付する案を出しました。
すると、公明党が反発。だったら、自分たちが前から求めていた所得制限なしの1人一律10万円の給付をしたらいいじゃないかと再び求めることに。つまり、閣議決定した予算案を組み替えて、公明党の案にすることを提案しました。
■予算は約13兆円に
さまざまな案が乱立する状況を受け、安倍首相は16日、公明党が求めている10万円一律給付を行うために、補正予算案の組み替えの検討を指示。収入が基準以下の世帯へ30万円を給付する案から、所得制限なく国民一人当たり一律10万円を給付する方向へかじを切りました。
こうした給付金。総額はどのくらいになるのか。
政府が準備していた30万円の臨時給付金の案は、所得制限がかかるため、対象は最大で1300万世帯を想定。予算は約4兆円で組む予定でした。一方、公明党などが主張した、1人あたり10万円という案は、国民全員(約1億2700万人)が対象なので、予算は約13兆円が必要に。
なお、市区町村の窓口を通して行き渡らせるための事務経費、約1200億円もかかる予定です。
■海外の給付金は?
日本ではまだ混乱が続いている国民への給付金。一方、海外では個人への給付金が続々と打ち出されています。
<アメリカ>
世界で一番感染が拡大しているアメリカでは、トランプ政権が、先月220兆円規模の経済刺激策を打ち出しました。
年収が約820万円未満の世帯に対しては、大人1人あたり約13万円、子供1人あたり約5万4000円の現金を給付するというものです。 上限が年収820万円と、必ずしも低所得者層向けに限った支援ではありません。
<ドイツ>
ドイツでは、約6兆円規模の緊急支援策を発表しています。
特に注目すべきは対応の早さ。仕事が激減して困っている、ドイツ在住の日本人カメラマンに話を聞くと、給付金をオンライン申請したところ、2日後には約166万円が振り込まれていたといいます。また、申請する際、収入が減少したことを証明する書類の提出などは一切求められなかったということです。
<韓国>
韓国では全体の7割にあたる1400万世帯を対象に、1世帯あたり最大約8万8000円を商品券や電子マネーで給付。商品券や電子マネーは貯金できないため、消費に回ります。
<イギリス>
イギリスでは、休業せざるを得なくなった従業員に対し、政府が賃金の最大8割を補償。今月末までに支払いが始まる見通しです。
国民へ一律10万円を支給することが決まった日本。いまこの瞬間にも、家賃も払えない飲食店の方々など喫緊の課題に直面している人々がいます。
各国それぞれに事情があるように、日本には日本の事情があります。新型コロナウイルスの影響で生活に困っている人々の手に、一刻も早く支援が届くようにしてほしいと思います。