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表情見える透明マスク 各地で広がり

2020年4月28日 13:01
表情見える透明マスク 各地で広がり

マスクの着用が毎日の生活に欠かせないいま、表情や口元が見える「透明マスクが」が各地で広がりを見せています。兵庫県伊丹市では独自に制作したマスクを手話通訳者に配布したほか、過去に販売されていた透明マスクの再生産に乗り出す動きも見られます。

■手話通訳者のアイデアが形に

ほとんどの人がマスクを着けている記者会見場で、手話通訳者だけがマスクをしていません。こんな光景がSNS上で話題になりました。手話は顔の表情も大切。手の動きだけでなく口元やあごの動きからもコミュニケーションをとります。マスクをしている人が増える中、ろう者や難聴者は不便に感じる場面が増えています。

そこで、表情が見える透明マスクを作る動きが各地で広がっています。兵庫県伊丹市の障害福祉課の酒井智子さん(47歳)は、市内で働く手話通訳者から聞いたアイデアがきっかけで、透明マスクを開発しました。その手話通訳者によると、手話通訳時は、正確に情報を伝えるため、基本的にマスクはつけないといいます。

ところが病院で通訳する時、どうしてもマスクが必要になりました。そこで不織布の普通のマスクを切り抜いてビニール袋を貼ったシンプルな透明マスクを作ったというのです。

酒井さんがこの話を聴力障害者協会の婦人部にしたところ、わずか数日で透明マスクのサンプルが完成。手作りのマスクの真ん中を四角く切り抜いた部分に透明のテーブルクロスをミシンでぬい合わせて出来ています。メガネ用のくもり止めを吹き付けて使用。完成したマスクは必要に応じて市内の手話通訳者に配布していくそうです。多くの反響があり、作り方をYouTubeに公開しました。

酒井さんは、「手話を頼りに生活している人がいます。透明マスクをしている人を見ても驚かれない世の中になれば良いと思います」と話します。


■かつて2万枚生産された透明マスクがあった

一方、静岡県浜松市で商品開発会社を手がける村松英和さん(68歳)が作った透明マスクがあります。きっかけは手話とはまったく関係がありませんでした。村松さんが10年ほど前に入院していた友人から聞いた話です。病院の中ではマスクをしている看護師さん。外でマスク無しで話しかけられた時、誰だか分からなかったというのです。このエピソードからアイデアが閃きました。

そこで、村松さんは透明マスクの開発に乗り出しました。鼻からあごにかけて液晶画面の保護に使われるTACフィルムを使用。あごから下が不織布で出来ていて、顔の表面全体が見える作りです。開発過程について村松さんは、「結露しないように何度も試作を重ねた」と苦労を語ります。

村松さんが考えた透明マスクを製造・販売することになったのが、東京・墨田区の「ミノウラ」です。2012年から2016年まで4年間で2万枚を製造しました。「Look at me」をもじって商品名は「ルカミィ」。当時の価格は1枚約200円でした。現在は製造を終了しており、生産ラインは別の商品に変更。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、手話通訳時の需要も含めて再製造の要望が多数寄せられているとのことですが、今すぐには作ることができない状態です。

村松さんは新たに生産できる工場を探しているところ。安定供給に向けて急ピッチで動いているといいます。