協力金は売上に応じ…“まん延防止”適用へ
政府は1日、新型コロナウイルスの感染が急拡大している大阪、兵庫、宮城に『まん延防止等重点措置』を初めて適用する方針を決めました。今までとどう変わるのか、緊急事態宣言と何が違うのか、詳しく解説します。
■東京で新たに475人の感染確認
東京では1日、新たに475人の新型コロナウイルスへの感染が確認されました。3月31日の感染者数はわずかに前の週を下回りましたが、1日は再び前の週を上回りました。
■大阪府「変異株の影響」急速に感染再拡大
全国で3月31日に新たに確認された感染者は2841人で、2800人を超えたのは1月30日以来、約2か月ぶりでした。青森、宮城、新潟の3県で過去最多となり、大阪では599人と、東京を上回って全国で最も新規感染者が多くなりました。(*新潟は過去最多タイ)
その大阪府の新規感染者数の推移をみてみると、緊急事態宣言が2月末で解除された後、急速に感染が再拡大しているのがわかります。3月31日は、1月8日に記録した過去最多の654人に迫るほどの数でした。特徴的なのは、今回は20代~30代の若い世代で感染が広がったという点です。
大阪府の吉村知事は感染急拡大の理由について、「変異株の影響や、春休みに入って若者の動きが増えた可能性」を指摘しています。
■初の『まん延防止等重点措置』適用へ
こうした中、政府は、感染が拡大している地域に初めて『まん延防止等重点措置』を適用する方針を決めました。対象は、大阪、兵庫、宮城の一部地域です。
大阪は『病床使用率』や『人口10万人あたりの療養者数』など指標の全てが『ステージ3相当』以上で、特に『人口10万人あたりの療養者数』は、最も深刻な警戒レベルである『ステージ4相当』となっています。
兵庫では特に『病床使用率』がひっ迫していて、病床全体でみても、重症者用の病床だけをみても『ステージ4相当』となっています。宮城も『ステージ3相当』や『ステージ4相当』の指標が多くなっています。
そこで今回、初の『まん延防止等重点措置』を適用する方針となりました。
■『まん延防止等重点措置』と『緊急事態宣言』 なにが違う?
まん延防止等重点措置と緊急事態宣言には、次のような違いがあります。
【対象地域】
緊急事態宣言は都道府県ごとに出されますが、まん延防止等重点措置は、知事が細かく地域を指定できます。
【発出の目安】
緊急事態宣言は『ステージ4相当』で発出するかどうか判断されますが、まん延防止等重点措置では基本的に『ステージ3相当』を想定しています。
【要請・命令】
緊急事態宣言は『時短』『休業』ともに要請や命令が可能ですが、まん延防止等重点措置は『時短のみ』で、休業の要請や命令はできません。
【罰則】
緊急事態宣言は、過料が30万円以下であるのに対し、まん延防止等重点措置は20万円以下となっています。
■今回の『まん延防止等重点措置』の内容は?
今回のまん延防止等重点措置では、対象地域が、大阪市、兵庫県の神戸市・尼崎市・芦屋市・西宮市、宮城県の仙台市となっています。期間は、今月5日から『5月5日』までの1か月とする方針です。政府はゴールデンウイークに対策を徹底する必要があるとして、この期間を含めた1か月としました。
今回のまん延防止等重点措置が適用されると、対象地域では、日中を含む不要不急の外出自粛が求められます。特に夜8時以降は徹底してほしいとのことです。
飲食店については、時短営業の要請や命令は『夜8時』までで、飲食店にある『カラオケ設備』についても利用自粛を要請する方針です。
一方、時短要請に応じた場合の協力金については、現在と同様の一律一日4万円ではなく、事業者の売り上げに応じて支給されることになりました。
また、飲食店に対しては、客にマスク着用などの感染防止措置を周知し、従わない客は入店禁止などとするように要請します。
県民に対しては、時短要請の時間帯にみだりに飲食店に出入りしないよう要請します。
■聖火リレーにも影響か「大阪市内は中止すべき」
今回のまん延防止等重点措置適用の方針で、東京オリンピックの聖火リレーも影響を受けそうです。大阪市では、まん延防止等重点措置中の今月14日に聖火リレーが予定されていますが、大阪府の吉村知事は、次のように述べ、聖火リレーの中止に言及しました。
大阪府・吉村知事「大阪市内における聖火リレーは中止すべきだと思います。大阪市外、いわゆるまん延防止等重点措置地域以外については、感染症対策を実施して、聖火リレーを実施する。この調整に入りたい」
一方、政府は、感染状況次第では、まん延防止等重点措置を、今後、他の地域にも適用することになるとみています。菅総理周辺は、「今後、まん延防止等重点措置の地域の指定と解除を、何回も繰り返すことになるだろう」と指摘しています。菅総理も周辺に対し、まん延防止等重点措置による対策は「長丁場になる」と話しています。
さらに、専門家からは、まん延防止等重点措置をもっと早く出すべきだったとの声も上がっています。
日本医師会の中川俊男会長は、「いま確実に第4波に向かっていて、措置を出すタイミングは遅い。今後、首都圏も同様に一気に増加することが強く予想される」としています。会議では多くの委員から、東京を含むその他の地域も今後注視すべきとの意見が出たと言います。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は、それを発出したり解除すること自体が一つのメッセージとなって国民に伝わります。今回、大阪などにまん延防止等重点措置が出たことで、深刻な状況を伝えるメッセージにはなりますが、逆に「緊急事態宣言まではいかない」とか、「措置が出ていない地域は大丈夫」というメッセージとして受け止められる可能性も十分にあります。政府には、そうしたことも踏まえた上で、対策のとり方やタイミングを適切に判断してほしいと思います。
(2021年4月1日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)