両陛下お声掛け 福島オンライン訪問詳報
東日本大震災から10年の節目に行われた天皇皇后両陛下の福島へのオンライン訪問。両陛下は28日、双葉町と大熊町の被災者6人を見舞われました。およそ2時間の訪問の中で、両陛下はどのような言葉を掛けられたのか、内容を詳しくお伝えします。
【内堀雅雄・福島県知事】
冒頭、天皇陛下は内堀知事に対し、「東日本大震災から10年になりましたが、復旧復興に尽力いただいたことに心から敬意を表したいと思います」とねぎらい、漁業への影響や2019年の台風被害、今年2月の地震被害、新型コロナウイルスへの対策についてもたずねられていました。
【双葉町「伝承館」で】
次に、両陛下は双葉町に昨年開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」をオンラインで視察されました。北海道や九州まで県内外の来館者が来ていると聞いた皇后さまは、「広い地域からたくさんの方が来られてよろしいですね」と伝え、陛下は中学生や高校生が展示を見て、どういう感想を持ったのかを尋ねられていました。
【伊澤史朗・双葉町長】
皇后さまは、町が計画している来年春以降の帰還に向けて「今戻ることを希望されている方は、わかっている範囲でどれくらいいらっしゃるのですか」と質問し、伊澤町長の「意向調査では、現状60%が戻らない意向を持っている」との答えに、両陛下は大きくうなずき、複雑な表情を見せられました。
また、皇后さまは獣医師でもある町長に対し「避難するときに動物も保護して、救済されたと伺いました」と、当時の対応をねぎらわれていました。
【双葉町:梅田壽嘉さん(74)】
陛下は「避難所もずいぶん転々とされたのではないですか」と気遣い、両陛下は梅田さんの避難生活の話に耳を傾けられました。当時飼っていた犬が今も元気で、15歳になったと聞き、皇后さまは「まぁ、今でも元気で。良かったですね」と声を掛け、陛下は皇后さまと目を合わせながら「私たちも犬を飼っているので気持ちはよくわかります」と話し、両陛下はとても喜ばれていました。
【双葉町:谷津田尊之さん(66)】
今年3月末まで福島第2原子力発電所の収束作業に従事していた谷津田さんに、陛下は「作業で一番ご苦労されたのはどういうことですか」と尋ね、皇后さまは今の子供たちの状況を気にかけられていました。
【双葉町:山本敦子さん(49)】
「やはり子どもたちが大変だったと思います」と、この10年を振り返り、急な転校を余儀なくされた娘のことを涙ぐみながら話す山本さんに、陛下は「皆さん本当にご苦労なさったのですね」と寄り添われました。
皇后さまが「本当に急なことで環境の変化が大変でしたが、お嬢さんも乗り越えられて、ほっとされたのではないですか」と語りかけ、山本さんがまた涙ぐむと、陛下は「よく頑張られましたね」と優しく声を掛けられていました。
【吉田淳・大熊町長】
陛下は復興への尽力をねぎらい、「町の一番の大きな課題はなんでしょうか」とたずねられました。両陛下は町長自身の避難生活の話にも耳を傾けられていました。
【大熊町:松永秀篤さん(68)】
自宅が津波で全壊し、避難指示が解除された地区に自宅を再建させた松永さんに対し、両陛下は「大変でいらっしゃいましたね」「本当に大変でいらっしゃったんですね」と語りかけ、話に耳を傾けられました。
最後に皇后さまは「戻っていらっしゃって良かったですね」と声を掛けられていました。
【大熊町:鈴木照重さん(77)】
陛下は「避難所を転々とされたと伺っているのですが、大変だったのではないでしょうか」とたずねられました。皇后さまは「大熊町に戻られていかがですか」「人の輪を作るのに尽力されたのですね」と声を掛けられていました。
【大熊町:鈴木真理さん(39)】
今年4月に開設した商業施設に雑貨店をオープンさせた鈴木さんに対し、皇后さまは「お店では町に帰還してきた人たちのためにいろいろとそろえていらっしゃると聞いていました」と声を掛け、陛下は「いろいろと夢がおありになるんじゃないですか」と今後の夢を尋ねられていました。
【オンライン訪問の最後に】
天皇陛下は、最後に内堀知事に対し、「理解を深めることが出来ました」とお礼を述べた上で、知事の体を気遣われていました。
皇后さまは「皆さまとお話が出来て大変うれしゅうございました」「だんだんと良い方向に向かうよう、心から願っております」と話され、およそ2時間のオンライン訪問が終了しました。