変異株にも2回接種で「効果期待」国内研究
12日、新型コロナウイルス感染症による重症者が過去最多を更新しました。そんな中、いま心配されているインド型の変異ウイルスにもワクチンの効果が期待できるのではないかという、日本国内での最新の研究結果が明らかになりました。詳しく解説します。
■全国の重症者数1189人…最多更新
12日、東京都内の新型コロナウイルスへの新たな感染者は969人となりました。2週間前が925人、1週間前が621人で、2日連続で前の週の同じ曜日を上回りました。
全国の重症者数は11日時点で1189人。第3波時の重症者数を超えて過去最多を更新しました。12日連続で1000人を超えています。
■コロナによる死者 全国の約半数が大阪
中でも厳しいのが大阪です。11日に確認された死者数は55人で、過去最多となりました。全国の死者数113人のおよそ半数が大阪だったということになります。
そして11日、大阪府は「適切な医療を受けられずに自宅で亡くなった方」が、いわゆる第4波だけで17人いたと発表しました。これは、自宅で容体が急変したあとも、病院で治療を受けられないまま亡くなった人の数です。今年3月1日以降、30代から80代の男女で、入院を待っている間に亡くなった人も4人いました。医療体制の危機的な状況が浮き彫りになっています。
■変異ウイルスにも「効果期待できる」 日本で新たな研究結果
こうした中、希望の光となるのがワクチンですが、12日、新たな研究結果が発表されました。
横浜市立大学の研究チームが、日本国内の105人を対象に実験を行い調べたところ、ファイザー製のワクチンは、いま心配されているインド型や、関西で猛威を振るうイギリス型(N501Y)といった「変異ウイルス」にも効果が期待できるということです。研究チームによりますと、このような、日本人で研究した成果は「初めて」だということです。
■ワクチン接種した血液で実験
変異ウイルスに対しては、ワクチンの効き目が低くなるのではという話もありましたが、今回の実験の結果、その答えも分かってきました。
実験は、研究への参加に同意した医療従事者105人の血液を使って行われました。それぞれ、ワクチン接種前、1回目接種から2週間後、2回目接種から1週間後の計3回採血を行い、この血液中にある免疫が、コロナウイルスにどれくらい抵抗するのかを調べました。
血液の中の成分(血清)と、新型コロナウイルスを混ぜて感染を再現すると「抗体」が生まれます。抗体は、ウイルスの表面にあるトゲトゲにくっついて感染力を失わせる働きがあります。この抗体の量が十分であれば、ウイルスの侵入を防ぐ力があるということになります。
■人工的に…実験に用いられた新たな手法
しかし、この方法では実際のウイルスを使うことになるため、人に感染させての実験ができない上、実験する人が感染してしまう危険もあります。
そこで、今回、研究チームは「人工的な新型コロナウイルス」を使って実験をするという新たな手法を考案しました。
まず、新型コロナウイルスに似せた特殊な粒子をつくり、その表面に本物のコロナウイルスのトゲトゲ「スパイクタンパク質」をつけることで、人工的にウイルスを再現します。さらに、この方法では「従来型」「イギリス型」「インド型」と、変異ウイルスの型を自由に作ることができます。これにより「安全に」「スピーディーに」実験ができるようになりました。
■“変異”にも2回接種で「効果期待できる」
まず、1回目のワクチンを打ったあとの血液を調べた結果は、「従来型」では57%の人に十分な抗体ができたのに対して、「イギリス型」の変異では18%、「インド型」の変異では37%にとどまりました。
次に、2回目のワクチンを打ったあとの血液を調べたところ、「従来型」で99%の人に十分な抗体ができたのに対し、「イギリス型」も94%、「インド型」も97%と、いずれも9割を超えました。つまり、1回目の接種では変異ウイルスに対しては十分な抗体ができませんでしたが、2回目の接種を終えれば、効果は十分に期待できるという結果になりました。
実験を行った横浜市立大学医学部の山中竹春教授は12日、私たちのインタビューに対し次のように話しています。
山中竹春教授「変異株に対してワクチンが効かないという根拠のない風潮がまん延していましたので、客観的にデータをとることによって、実際にどうなのかということが確認できたことに意味があると思います」
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今回の実験は、あくまで実験室の中での結果で、実際の人体とウイルスで同じ結果になるかは、まだ分かりません。ただ、インド型の変異にも効果が期待できるという結果がでました。今後は、ほかのワクチンでも効果があるかどうか、実験が進められるということです。
(2021年5月12日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)