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地球規模の挑戦通して次世代リーダー創出

2021年5月28日 13:11
地球規模の挑戦通して次世代リーダー創出

海外インターンシップ事業や中高生向けの「探究プログラム」を通して人材育成に取り組む、タイガーモブ株式会社代表の菊地恵理子さん(32)。次世代リーダー創出を通して、次世代に残したいものとは。


■インスパイアからインパクトまで

菊地さんの会社では「次世代リーダーの創出」を目的として、日本人むけに海外インターンシップ事業を展開している。2021年5月現在、世界45か国、約380のインターン先と連携。コロナ禍で海外に行くことが難しい現在、オンラインでの海外インターンシップを提供する。さらに「海外インターンシップへのハードルの高さ」を感じる人にむけて、一歩手前の「自身の興味関心を探究する」プログラムに力をいれている。

「最近では、中学や高校などの教育機関でプログラムを導入していただくことが増えています。『自分が好きなことがよくわからない』『最近SDGsとかよく聞くけど、どういうことかわからない』という人向けに、興味関心をインスパイアする、実践型グローバル探究プログラムです。例えば、南アフリカでサファリガイドをする日本人から、野生動物保護の現状を聞いてアクションを起こすプログラムや、オンラインとオフラインをかけあわせてSDGsを学ぶプログラムなど、多様なテーマを扱っています」

様々な国で社会問題に取り組む実践者の話をリアルに聞けるのが特徴だという。また、社会問題について聞くだけでなく、自身が興味のあることは何か、内省する時間を設けている。

「『Learning by Doing(実践を通しての学び)』ということで、海外インターンによる実践と実社会にインパクトを与えることを大切にしてきましたが、その前に自分の興味を見つけたり、社会を知る機会も重要だと最近は感じています。プログラムを通して、未来にとってより良い選択をできる人を増やしたいと考えています」

次世代リーダーの創出の先には、「100年先の地球の未来を創るコミュニティ」をつくりたいと考える。

「それぞれ違った興味や関心があり、強みや弱みなど自分らしさを最大限いかした上で、自分が『これだ』と思う分野で旗を立てる人を増やしたい。そして、次世代のより良い地球のために活動する人たちの“生態系”となるコミュニティをつくっていきたいです」

■海外で気づいた「思考を広げる違和感」が原点

菊地さんは、海外経験が思考の幅を広げると考え、現在の事業を展開する。その背景には、自身の中国への留学体験があったという。

「大学3年生のとき、休学して中国に留学しました。最初は、道にゴミを捨てたり、つばを吐いたり、列に割り込みをしたりする人に対して、ストレスを感じていました。ただ、ある時『それは自分が勝手に思考の枠を作って、枠に合わないことにストレスを感じているだけだ』と気づきました。それから、違和感は思考を広げてくれるものだと考えるようになりました」

自身を広げてくれた海外での気づき。味をしめた菊地さんは、留学を終えた後、バックパックを背負い海外を回りながら、様々な人の「モットー」を聞いて回る。

大学卒業後に就職したのは、人材系のベンチャー企業。社会起業家として「事業を起こすための力をつけたかった」という。

「高校生くらいの頃から、将来は国連職員になって、社会問題を解決したいと思っていました。大学生になり社会起業家という選択肢を知りましたが、私には具体的な解決したいテーマがありませんでした。テーマが見つかったときに、問題を解決できる人間でいたいと思い、経営者に会う機会が多く成長できそうな、人材系のベンチャーに入りました」

「海外事業を展開していないこと」も決め手の一つ。自身が海外事業を立ち上げるチャンスがあるからだ。入社1年ほどして、今の事業の原型にもなる海外インターンシップ事業を立ち上げた。当時は、採用市場における、海外志向の学生と企業のミスマッチを解消するためだったという。

その後、事業を運営する中で、次世代リーダーを創出するという思いが芽生え、起業を決意した。

「海外インターンシップ事業をやっていると、応募者がすごくいいことを言うんです。ある学生は、水質環境の問題に取り組みたいといって、ケニアの会社にインターンしました。半年から1年くらいかけて、色々苦労もする中、水のない村で水を量り売りする「ウォーターキオスク」をつくることまで実現しました。こういう『次世代リーダー』をもっと増やしたいと思いました。一方で、熱い思いを持っていたのに、就職してから、元気がなくなってしまう人も見ました。社会では、出る杭は打たれてしまうのです。火種を持ち続けるために、同じ思いを持つ人が集まるコミュニティを作る必要を感じました」

海外インターンシップを、より早く、より大きな事業に成長させるため、タイガーモブを創業した。

■社会問題を解決していく“生態系”目指して

次世代リーダー創出を目指して会社を創業して、5年。最近では、次世代リーダーと共に、SDGsの達成や、未来の子どものために地球を残すことを意識しているという。

「子どもが生まれてから北海道に移住したのですが、大自然に囲まれて暮らす中で、この自然を子どもたちやその先の世代に残したいという気持ちが強くなりました。私が暮らしている場所は、特に春先は毎日景色が変わるような場所。茶色の世界から葉っぱがでてきて、黄緑から深い緑に変わっていく。湖が全面凍っていたと思ったら、シベリアから来ていた白鳥も帰っていく。そんな大自然を体験していると、自然と未来に気持ちが向きました」

未来の社会をつくるために、自分なりの火種を持つ次世代リーダーを創出する。そして次世代リーダーがつながり、シナジーが生まれることで、社会課題解決が加速する。そんな生態系をより大きくすることを目指している。

「私一人だったら、せいぜい一つのテーマを頑張るくらいしかできないので、1万人、100万人の規模にしていきたいです」

菊地さんが目指すコミュニティは「お祭り」のような場所だ。

「私の中でのお祭りは、高揚感があって、行ってみるといろんな人がいて、想像してなかったようなシナジーが起きる場所。タイガーモブでつくる“生態系”も、そんな場所にしていきたいです」


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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。