1年後の自分へ手紙を贈る場所「自由丁」
■「未来へお手紙書けます」
東京・蔵前『贈る。』企画の第2回は、未来の自分に手紙を贈ることができる場所「自由丁」。軒先には店への案内が。
「未来へお手紙書けます」――どんな店なのでしょうか。
出迎えてくれたのはオーナーの小山将平さん。エッセイストでもあります。
オーナー・小山将平さん
「ここは素直な気持ちと日々を味わうをコンセプトにしたお店です」
ここでは、普段とは違う時空に身を置いて未来の自分へ手紙を書くことができます。その手紙は、1年後指定した住所に届くよう投函してくれます。
書かれた手紙は月ごとにまとめて、1年間保管。毎月100通から200通ほどを届けているといいます。
真っ白な自由帳に素直な気持ちを表現していた子どもの頃。ありのままの気持ちを表現できる、そんな文化のある街のような店になりたい。店の名前は「自由丁」にしました。訪れるのは転機を迎えた人、悩みごとがある人、ふらっと通りかかった人などさまざま。
■未来へ手紙を書くメニューは心境に合わせて、5種類から
まず、レターセットを自分の心境に合わせて選びます。「夢に向かうとき」「少し立ち止まって自分と向き合いたいとき」「答えを探すとき」など5種類が用意されています。
レターセットには、エッセイストでもある小山さんからのプレゼントが。手紙を書く前に素直な気持ちと向き合えるよう、小山さんがつづった短いエッセイがそれぞれの心境に合わせて添えられています。中には、自分を見つめ直す質問が書かれたカードも。
今の気持ちを1年後の自分だけでなく、大切な人に伝えたい。そんな人のために、レターセットにはポストカードも入っています。2人で来てお互いに向けてメッセージを書く人もいるといいます。
ドリンクも1杯ついていて、小山さんが心境に合わせてセレクトしたコーヒーやお茶を飲みながらじっくり2時間、自分と向き合いながら手紙をしたためます。自分を見つめ直しながら手紙をしたためる姿は真剣そのものです。
書き終えると自分で手紙に封を。好きな色のろうを溶かして「シーリングスタンプ」で閉じます。書かれた手紙は1年間、自由丁で大切に保管されます。
■手紙を書いた人は…?
手紙を書いた人
「将来の1年後の自分に向かって今、大学でどういう方向性に進めばいいのかわからなくて、迷子みたいな状態だったので、将来の自分に希望を込めて、やりたい道はみつかったか、とかそういうことを自分に向けて書きました」
手紙を書いた人
「今の自分の気持ちを整理するのにすごく役立つ時間だったなと思いました」
手紙を書いた人
「(1年後)変わってても全然いいし、変わっていなくてもいいから、本当に深く考えずに前を向いていてほしいなと未来の自分に思いました」
夕方。来年、社会人になる節目を迎え、手紙を書きに訪れた人も。
手紙を書いた人
「(1年後)色々変わっててほしいなと思います。大事にしてることとかは変わりたくはないけど、もっと成長できてたらというか、読んだときに昔こういう風に思ってたんだって。今はもうちょっと違う風に思ってるなとか成長みたいなのを感じられたら一番うれしいです」
■「自由丁」オーナー小山さんが自分と向き合う場所を作ったワケ
1年後の自分へ送る手紙。オーナー小山さんの思いとは…
――手紙が届くのを1年後にした理由
オーナー・小山将平さん
「10年後とか20年後だとエンターテイメントになっちゃうなと思ったんですよね。それよりも1年後にしたら、近い現実的な未来を想像してくれるのではないかなと思ったので」
――コロナ禍で思うこと
オーナー・小山将平さん
「家にいる時間が増えて、自分の内側に内側に考えが向くような人が増えたのではないかなと思いますし、そういうときに落ち込んでいってしまうのではなくて、少しでも明るい未来を想像してもらえるようになれたらいいなというのが僕らとしてはあるので、そういう方々に見つけてもらえたらうれしいなと思っています」
――自分と向き合う場所を作った理由
オーナー・小山将平さん
「人生生きていればいくらでも悩みがあって湧いてくるし、悩みなんてない人っていない気もする。ちゃんと自分と向き合って自分の素直な気持ちとともに限りある命を人生を歩んでいけるような人が増えたら、もう少し社会って明るくなるのではないかなとか、もう少し人々の会話って優しくなるのではないかなとかそういう風なことを思ったので。悩んだり考えたり、ちょっと自分の気持ち整理したいなと思ったときに僕たちここにいるよというのを覚えててもらえたらうれしいなと思ってやってますね」
1年後、手紙を受け取った人は、「忘れていた過去の悩みを思い出し、成長した自分をほめてあげたくなった」と話す人や、さらなる1年後の自分へ手紙を書きに訪れる人もいるということです。
■贈るとは、「自分の素直な気持ちを純度の高い状態で伝えること」
――小山さんにとって『贈る。』とは
オーナー・小山将平さん
「自分の素直な気持ちを、なるべく純度の高い状態で伝えることかなと思います。気持ちって言葉ではないじゃないですか。一番最初は感情の起伏だし、そこに言葉はないはずなんだけど、僕らは言葉をつけがちになっちゃう。だけど贈るというのは、言葉ではなくてもいいわけじゃないですか。未来の自分に手紙を贈るっていっても絵を描く人もいるし、その日の訪れたお店のカードを入れる人もいれば、写真を入れる人もいるし。そういう風に言葉も含めてですけど、いろんな自分の素直な気持ちというものをなるべくどうしたら伝えられるだろうと考えて、届けるものが贈り物だし、だからそういう風に素直な気持ちを純度高く伝えられるということが『贈る。』ということかなと思います」