【全文】佳子さま30歳の誕生日に当たってのご様子 「社会のために力を注ぐ人々に同じ社会に生きる一人として敬意と感謝」
秋篠宮家の二女、佳子さまは30歳の誕生日を迎えられました。佳子さまは、元日に起きた能登半島の地震と、豪雨による甚大な被害に心を痛め、各地の被災者が安心して暮らせるよう心から願われているということです。
またこの1年、社会のために力を注ぐ人々に、同じ社会に生きる一人として、敬意と感謝の気持ちを感じられることが多くあったといいます。
宮内庁皇嗣職が公開した佳子さまのご様子とこの1年のご活動について、全文紹介します。
(表記は宮内庁発表のままです)
【佳子内親王殿下30歳のお誕生日に当たり】宮内庁皇嗣職
佳子内親王殿下は、12月29日(日)に満30歳のお誕生日をお迎えになります。以下に、この1年間のご様子をお伝えします。
2024年は、1月に能登半島地震が起き、復旧にむけた努力が行われている中、9月に豪雨が起きました。内親王殿下は、甚大な被害があったことに心を痛めていらっしゃいます。そのような中、被災した方々とお会いになったり、支援に携わる方々からお話をお聞きになったりする機会もありました。この1年を通して各地で災害が起き、内親王殿下は、亡くなられた方々をお悼みになるとともに、被災された方々を心配なさり、被災された方々が安心して暮らせるようになることを心から願っていらっしゃいます。
そして、災害時を含め、社会のために力を注いでいらっしゃる方々に、同じ社会に生きる一人として、敬意と感謝の気持ちをお持ちでいらっしゃいます。この1年のご活動や日々の生活の中で、また、様々な媒体を通して、そのようにお感じになることが多くあったと伺っています。
内親王殿下は、これまでと同様に、誰もが安心して暮らせる社会になることを、誰もがより幅広い選択肢を持てる社会になることを、そしてこれらがあたりまえの社会になることを願っておられ、ご活動の際にも、この思いを胸に取り組まれています。
この1年間のすべてを記載することは叶いませんが、内親王殿下のご様子を月ごとにお伝えします。
【1月】「第43回手話狂言・初春の会」で、手話狂言を味わい深く鑑賞されました。その後、関係者とお会いになり、舞台を作り上げるまでのエピソードなどについて親しく懇談されました。
「第46回聴覚障害児を育てたお母さんをたたえる会」に出席され、受賞者と懇談されました。この催しでは、社会に大きく貢献されているきこえない人、きこえにくい人の表彰も実施されており、この賞を受けた石川県輪島市の蒔絵作家とお会いになりました。これまでに制作してこられた美しい作品の写真を一緒にご覧になりながら制作活動についてお聞きになったことが心に残られたご様子でした。直前の被災についてお見舞いをお伝えになり、お身体を大事に過ごされることを願っていらっしゃいました。
【2月】福岡県を訪問され、「第70回日本伝統工芸展福岡展」をご覧になりました。九州で活動する作家から、自身の作品を含めた出展作品について説明を受けながらご覧になり、それぞれの作品の魅力に惹き込まれたと伺いました。また、石川県の作家による、みごとな漆芸作品に見入っていらっしゃいました。作品をご覧になる前には、公益社団法人日本工芸会から、1月の地震により被災した石川県の様々な分野の会員の状況についてお聞きになり、とても心配していらっしゃいました。併せて、佐賀県の有田町を訪問され、江戸時代から伝わる「色鍋島」の技術などを受け継ぎつつ現代の「色鍋島」を創り出している「今右衛門窯」を見学されました。美しく豊かな表現の磁器ができあがるまでには、繊細な技を必要とする多くの工程があり、作り手の努力が積み重ねられていることに改めて感銘を受けられました。このご見学をきっかけに、工芸作品をそれまで以上に深く味わうようになられたと伺いました。
【3月】「第55回なるほど展」をご覧になりました。糸を通しやすい縫針や、タオル掛けからタオルが滑り落ちにくくなる補助具など、使い手の立場に立って、生活が便利になるように考えられた発明品を、興味深くご覧になりました。
【4月】「東京ドーム」で開催された「第25回記念全国高等学校女子硬式野球選抜大会」の決勝戦を観戦され、選手やスタッフ、観客のエネルギーを感じながら応援されました。硬式野球に取り組みたいと思う誰もが活躍しやすい環境になるよう願っておられます。
【5月】「第33回森と花の祭典―『みどりの感謝祭』式典」に出席されました。お言葉では、森林の木々が大地に根を張り巡らして雨水を蓄え、また、土が流れ出すことを防いでいること、さらに、二酸化炭素を吸収して地球温暖化の防止に貢献するとともに、多様な生き物を育む場となっていることなど、「みどり」の意義について触れられました。また、森林や花を大切にする活動を実践している方々とお話をされ、活動の重要性を改めて感じられました。
日本とギリシャ共和国の外交関係樹立125周年及び「日本・ギリシャ文化観光年」にあたり、ギリシャを訪問されました。ご訪問に先立ち、様々な書籍をお読みになるとともに、ギリシャの歴史や文化に関する専門家、日本ギリシャ協会の関係者、外務省の関係者、オリンピア市の姉妹都市である愛知県稲沢市の市長から説明を受けられました。また、駐日ギリシャ臨時代理大使主催の昼食会にお出ましになり、多岐にわたるお話をお聞きになりました。ギリシャに滞在されている間、各ご訪問先であたたかくお迎えいただいたことを、ありがたくお思いになっています。ご帰国後の9月には、現地でもお会いになったギリシャ観光大臣が日本においでになりました。内親王殿下は宮邸で大臣とお会いになり、ギリシャでのおもてなしに感謝をお伝えになりました。内親王殿下は、本年を契機として、両国の友好親善関係がさらに深まることを願っていらっしゃいます。ご訪問後のご感想については、「佳子内親王殿下のご印象(ギリシャご訪問を終えて)」をご覧ください。(リンク<https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/162#119>)
【6月】「第71回産経児童出版文化賞」の贈賞式に出席されました。お言葉では、大賞を受賞した小惑星・隕石の図鑑をはじめとする受賞作それぞれに感想を述べられました。その後、障害、家庭や経済の状況、図書館へ行くことの難しさなどにより、本を買ったり借りたりすることや、本を読むことに困難を感じている人が、読書を楽しみやすくなる環境を整備するための努力が行われていることをお話されました。そして、このような取組が実を結び、多様な本がより多くの人たちの手に届くこと、誰もが様々な方法で隔たりなく読書をできる社会になることを願われました。続いて、作者や翻訳者、編集者と懇談され、個性的な作品を生み出す工夫や、その実現のために注がれた努力などについてお聞きになりました。
「第25回記念東京都障害者ダンス大会ドレミファダンスコンサート」に出席されました。様々な種類のダンスや演奏を、ポンポンを持ってリズムにのりながら、参加者と一緒に楽しまれました。終了後には、参加者となごやかに懇談されました。
【7月】静岡県で開催された「第58回全日本高等学校馬術競技大会」の開会式に出席され、競技をご覧になり、全国から集まった選手を応援されました。また、事前に宮邸で説明を受けられた上で「静岡県立静岡がんセンター」を訪問されました。患者や家族の気持ちに沿った対応、がん体験者の悩みや負担についての調査分析などが行われていることを、たいへん重要なことと受け止められました。そして、多様な専門家がそれぞれの専門性を高め、力を合わせて患者や家族の支援に取り組んでいることに、敬意を表していらっしゃいました。子どもや家族との交流も、深く心に残っていると伺っております。
【8月】福島県を訪問され、「第13回日本アグーナリー(国際障がいスカウトキャンプ大会)」に出席されました。「アグーナリー」では、大きなドーム作りや夕食の配膳など、参加者と交流されたことを嬉しくお思いでした。また、国や地域、言語、障害など、背景や状況の違いを超えて共に活動する場の大切さを改めてお感じになりました。併せて、「福島県立博物館」と「会津若松城」を見学され、福島県の歴史や文化の一端に触れられました。その後、只見線(福島県会津若松駅と新潟県小出駅を繋いでおり、2011年の豪雨による被害から復旧し、2022年に全線再開された鉄道路線)を盛り上げる活動をしている方々とお話されました。その際に受け取られた手作りの旗を振りながら、夏の深い緑に囲まれた「第一只見川橋梁」を走る列車をご覧になりました。地域を大切に思い行動する方々の熱い思いをお感じになりました。
「第41回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席されました。開会式では手話でお言葉を述べられ、高校生の手話によるスピーチをご覧になりました。出場者が自身の経験を振り返り、考えをまとめ、色々な工夫をしながら努力してきたことを感じられ、一人一人が伝えたいことをしっかりと受け止めていらっしゃるご様子でした。その後、出場者となごやかに懇談されました。
【9月】日本工芸会等が主催する「第71回日本伝統工芸展」の展示をご覧になった後、授賞式とレセプションに出席され、作家と懇談されました。日本工芸会に関しては、工芸会の7つの部門のうち、この1年間で開催された4つの部門(1月と12月に漆芸、5月に染織と陶芸、6月に金工)の部会展もご覧になりました。内親王殿下は、伝統工芸の作品をご覧になるたびに、古くから続く精緻な技術を活かしつつ、現代に生きる人々にとって魅力的な作品を生み出す創造性に惹かれるとおっしゃっています。
鳥取県で開催された「第11回全国高校生手話パフォーマンス甲子園」に出席されました。交流会では、大会に出場する全チームの代表者や大会関係者と懇談されました。本大会では手話でお言葉を述べられ、コントやダンス、演劇などのパフォーマンスを、観客とともに笑ったり、美しさに見入ったり、演者が社会に伝えたいことを感じたりされながらご覧になりました。出場校同士で繋がりができるなど、この催しをきっかけに交流の輪が広がっていることも嬉しく思われたと伺いました。また、「植田正治写真美術館」では、作品と館内施設をご覧になり、写真を学ぶ地元の高校生と交流されました。障害のある人の就労継続支援等を行う施設「地域活動支援センターおおぞら」では、「りっぷる音楽団」による演奏を楽しまれ、音楽団の方々と懇談されました。演奏・歌の力強い響き、この日にむけて多くの準備をしてくださったこと、長きにわたり施設や音楽団を支えてこられた関係者の努力に、深く心を打たれたとお聞きしています。
【10月】「ガールズメッセ2024」にご出席になり、暴力をなくすための活動や、防災の重要性を伝える活動など、社会をよくすることを目指した取組を行っている受賞者と懇談されました。お言葉では、「より良い社会を目指して真摯に考え、声をあげ行動を続けることは、とてもエネルギーを要し、勇気がいると思います。皆様の活動を知ることで、『自分もできるのではないか』という気持ちになり、真摯に考え、行動を起こす人もいるかもしれません。これからも、こうした連鎖が広がっていくことを願っています。」と述べられました。
「有明テニスの森」で開催された、2つのテニスの試合を観戦されました。いずれも、力強いプレーに圧倒されながら、熱心に応援されました。
10月は、佐賀県を2度訪問されました。「第78回国民スポーツ大会」では、スポーツクライミング競技と陸上競技を観戦され、総合閉会式に出席されました。「第23回全国障害者スポーツ大会」では、バレーボール競技と車椅子バスケットボール競技を観戦されました。参加者が力を合わせて作りあげた閉会式とそれぞれの競技の熱気が思い出に残っていると伺いました。併せて、佐賀県の様々な施設を訪問されました。「佐賀県立九州陶磁文化館」では有田焼の歴史や美しさが、「唐津市曳山展示場」では「曳山」とお囃子の迫力が印象的だったとお聞きしました。「佐賀県立ろう学校」では打楽器の演奏や工芸・被服の作品を、「障害福祉サービス事業所PICFA」では美術作品をご覧になりました。「佐賀星生学園」では自分の強みをみつける活動や演劇・ダンス・手話の発表、「佐賀県立視覚障害者情報・交流センター」では手芸作品の展示やオカリナとギターの演奏がありました。いずれの施設についても、生徒や利用者との交流が心に残り、施設の運営に関わる職員やボランティアに敬意をお持ちになっていらっしゃいます。
岐阜県を訪問されました。「国際陶磁器フェスティバル美濃'24」で、「国際陶磁器展美濃」と「アール・ブリュット美濃展」を、時折作家とお話になりながらご覧になり、作家が作品に込めた思いを深く感じたり、作品の斬新さや独創性に驚いたりされながら、魅力あふれる作品の数々を鑑賞されました。また、「モザイクタイルミュージアム」では小さな色とりどりの陶片が広がる世界を楽しまれ、「織部の里公園」では大きな登窯や出土品の陶器を関心深くご覧になりました。ご訪問を通して、美濃焼自体の美しさに加え、空間の味わいを深めたり、食事やお茶を更においしく感じさせたりする、美濃焼の多様な魅力に気付かれたとお聞きしました。
石川県を訪問され、石川県の著名な伝統工芸作家とお会いになり、「第71回日本伝統工芸展金沢展」をご覧になりました。お会いになった作家の中には、1月の地震や9月の豪雨により被災した方もいらっしゃいました。内親王殿下は、お見舞いの気持ちをお伝えになり、その後も度々にお会いになった方々のことを思い出され、お身体を大事に過ごされているよう願っていらっしゃいます。そして、一つ一つの素晴らしい作品とそこに作家が込めた深い思いや、地域を大切に思う心が胸に残っていらっしゃると伺いました。その後、「石川県文化財保存修復工房」で、古文書や古地図などの文化財を修復する緻密な作業に見入っていらっしゃいました。また、「国立工芸館」では、独創的な工芸作品を鑑賞され、それを活かす展示の工夫等について興味深くお聞きになりました。内親王殿下は、これまでも折に触れて石川県で作られた伝統工芸をご覧になり、その美しさを感じてこられました。今回その地を訪れ、作家にお会いしたり、伝統工芸に関連する場所を見学されたりしたことを、とてもありがたく思われています。
【11月】神奈川県川崎市で開催された「令和6年度全国都市緑化祭」に出席され、富士見公園につくられた様々な庭園や壁面緑化をご覧になり、記念式典にてお言葉を述べられ、記念植樹をなさいました。続いて生田緑地にいらっしゃり、「ばら苑」では、香りの良いばらを楽しまれ、「日本民家園」では、歴史ある家屋を見学されるとともに、民具の製作や民家の維持、茶道、華道に取り組む方々と交流されました。「かわさき宙と緑の科学館」では、ここでプラネタリウムの仕組みを学んだ方が製作に携わった貴重なプラネタリウムをご覧になり、「藤子・F・不二雄ミュージアム」では、ご自身にとっても懐かしいドラえもんの世界を味わわれました。また、ご訪問を通して、ボランティアや地域の方々の活躍をお感じになったと伺いました。
11月15日に、崇仁親王妃百合子殿下が薨去されました。内親王殿下が小学生のころ、三笠宮邸にご挨拶に伺った際に、緊張されている内親王殿下にとても優しく接してくださったことなど、お小さいころから度々にお会いになった時のできごとが懐かしく思い出され、寂しく思われたと伺いました。そして、深い感謝の気持ちをお持ちになりながら、哀悼の意を表されました。
【12月】みどり豊かなまちづくりの取組を進める催しである「第7回みどりの『わ』交流のつどい-都市の緑三賞表彰式-」にご出席になり、その後、受賞者と交流されました。学生が主体となり企業などと連携して生物多様性の保全に成果を上げてきた活動、年齢や障害の有無などを越えて人々がともに過ごすお庭を作るプラン、地面から屋上にかけて立体的なみどりを育て季節を感じる空間を作り出す技術など、様々な活動について興味深くお聞きになり、多岐にわたる分野の参加者が経験を伝え合うことの意義もお感じになりました。
以上、ご様子の一部をご紹介しましたが、このほかにも、海外から来られた方々とお会いになったこと、展覧会をご覧になったことなどがありました。内親王殿下は、この1年間を通して、お会いになった方々、お迎えくださった方々、催しの準備に当たられた方々、様々な形で支えてくださった方々や心を寄せてくださった方々へ、感謝の気持ちを持ち続けていらっしゃいます。