尖閣諸島めぐり中国が“新たな動き” 中国船が「信号」発信 “実効支配”アピールか
沖縄県の尖閣諸島沖にたびたび侵入する中国海警局の船が、これまでにない動きを見せています。尖閣諸島の実効支配を目指す中国が自国の立場を有利にするためのアピールと見られています。
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尖閣諸島は日本固有の領土です。しかし、中国は領有権を主張しています。海警局の船を常駐させ、海上保安庁の巡視船に対し、「日本海上保安庁巡視船、こちらは中国海警局。釣魚島およびその付属の島々は、従来、中国の固有領土である」と日本語で主張。これに対し、日本の巡視船は「こちらは日本国海上保安庁巡視船・PL90である。尖閣諸島は日本の領土である。貴船の主張は受け入れられない」と応じるなど、海上でのにらみ合いが続いています。
こうした中、中国の海警船に、これまでにない動きが見られました。識別信号の発信です。
外洋を航行する客船などは安全のため自動的に船の名前や位置などの識別信号を送受信する装置「AIS」の搭載が義務づけられています。その情報は、世界中の船舶の運航情報を公開するサイト「マリントラフィック」で確認することができます。
しかし、海上保安庁の巡視船など政府所有の船舶は、任務中にAISのスイッチを切ることが多く、中国海警局の船もこれまでは尖閣諸島周辺でAISの信号をほとんど出していませんでした。
ところが、マリントラフィックで最近の船舶の動きを見ると、中国海警局の船が尖閣諸島の周りでAIS信号を出していました。「Chinacoastguard」などと表記された海警船の動きを尖閣諸島の周辺で確認することができたのです。
海上保安庁の関係者によると、今年3月以降、尖閣諸島の周辺でAISを作動させるようになったといいます。尖閣諸島の実効支配を目指す中国が国際社会に向けて始めた新たなアピールとみられます。
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私たちは先週、尖閣諸島で漁を行った石垣市の仲間均石市議から映像を入手。マリントラフィックの情報と照らし合わせると、中国側の狙いがより明らかになりました。
仲間市議の乗った漁船が尖閣諸島の領海に入ったのは、8日の正午ごろです。
仲間均市議
「巡視船が我々の船の間に入っています」
追ってくる海警船の船首には「海警2302」の文字が見えます。「海警2302」と「海警2502」の2隻が漁船を追って領海に侵入してきました。
漁船を守る日本の巡視船は、映像で確認できるだけでも6隻いました。しかし、海上保安庁の巡視船はAISを切っているため、マリントラフィック上では、あたかも「海警2302」と「海警2502」の2隻だけが島のそばで活動しているような印象を見る人に与えます。
中国側はこうした“証拠”を残すことで、自国の立場を有利にしようとしているとみられます。
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海上保安庁もAISを出す必要はあるのでしょうか。
元尖閣警備巡視船隊指揮官・遠山純司氏
「海上保安庁による尖閣の警備というのは、何層にも分けて彼らの侵入を阻止する非常に複雑なオペレーションをしている。AISをすることによって、手の内を読まれるデメリットがある」
仲間市議は、漁師の立場から、こう訴えます。
仲間均市議
「台湾有事よりも、今現在起こっている現状に目を向けて、国はぜひこの問題から解決していただきたい」