当事者「やっと1つ壁を越えられた…ただ」 性別変更めぐり“違憲”判断 最高裁
性別を変更するには生殖機能をなくす手術が必要とされている法律の要件について25日、最高裁判所は「違憲」との判断を示しました。この判断にトランスジェンダーの当事者は…。
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女性の体で生まれたトランスジェンダーの杉山文野さん(42)。
杉山文野さん(42)
「やっと1つ壁を越えられたと。ただ、まだ1つだという感じもしていて…」
「この条件が厳しすぎることで、苦しんできた当事者は非常に多かったと思う」
性同一性障害の人の性別変更をめぐる、最高裁判所への申し立て。25日、初めての判断が示されました。
現状、戸籍上の性別を変更するには2人以上の医師から「性同一性障害」と診断を受けた上で、法律で定められた5つの要件を満たす必要があります。
●性別変更の要件・性同一性障害特例法
(1)18歳以上である
(2)現在、結婚していない
(3)未成年の子どもがいない
(4)生殖腺や生殖機能がない
(5)変更する性別の性器に近い見た目をもつ
このうち4つ目と5つ目は実質的に手術を受けることを求める要件となっていて、今回の裁判の申立人は「手術の強制は重大な人権侵害で憲法違反」として、手術を受けなくても性別変更を認めるよう求めていました。
そして25日、最高裁はこの「生殖機能がないこと」を求める要件について憲法に違反する「違憲」との判断を初めて示したのです。
これまで、2019年の最高裁では「社会の変化に応じて継続的に検討すべき」などとしつつ、「現時点では合憲」としていました。
今回、「違憲」となった理由について、最高裁大法廷は「生殖機能がないこと」を求める要件は、性同一性障害の人に対して「意思に反して生殖機能をなくす手術を受けるか、性別変更をすることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになっている」と指摘しました。
一方で、もう1つの「変更する性別の性器に近い見た目をもつこと」を求める要件については、審理が尽くされていないとして判断を示さず、審理を高等裁判所でやり直すよう命じました。
申立人の裁判が続くことになったことを受け、代理人弁護士はコメントを代読。
代理人弁護士
「今回の判断は予想外な結果で大変驚いております。(性別変更の判断が)先延ばしになってしまったことは非常に残念です。今回の結果がよい方向に結びつくきっかけになるとうれしいと思います」
また、今回の判断を見守った杉山さんは、次のように話していました。
杉山文野さん(42)
「やっと、1つクリア。でも、まだまだ気は抜けないなと。社会が多様化してるにもかかわらず、法律や制度が変わらない。その齟齬(そご)によって大きな生きづらさを生み出していると思いますので、よりよくするために制度を更新する、アップデートすることが何よりも大事」
(10月25日放送『news zero』より)