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「台風を予報するだけでなく、制御する」専門家チームが進める最新の研究と「台風の目」に突入して分かったこと

2022年4月10日 20:00
「台風を予報するだけでなく、制御する」専門家チームが進める最新の研究と「台風の目」に突入して分かったこと
記者が入った台風の目 コックピットから撮影

温暖化の影響で近い将来、日本にも到達が懸念される「スーパー台風」。そんな中、まるで“アベンジャーズ”のような専門家チームが「台風を予報するだけでなく、制御する」研究を進めているといいます。日本テレビ社会部・気象庁担当の牧尾太知記者が解説します。

■海外では6000人以上が死亡も…「スーパー台風」の恐ろしさ

毎年、私たちに大きな被害をもたらしている台風。一般に台風の強さは「普通の台風」「強い台風」「非常に強い台風」「猛烈な台風」と最大風速によって4段階に分かれています

例えば、千葉県のゴルフ練習場の鉄柱が倒壊した2019年の台風15号は「強い台風」。そして、関西各地に大きな爪痕を残した2018年の台風21号でさえ「非常に強い台風」の分類です(いずれも上陸時の強さ)。実は日本に「猛烈な台風」が上陸した記録は、未だありません。その理由は、熱帯地域で発生した台風は北上するにつれて比較的海面水温が低い地域を通り、勢力が弱まっていくからです。

しかし近年、温暖化により海面水温が上昇している影響で、これまでの猛烈な勢力を上回る台風が確認されています。それが「スーパー台風」。海面水温の上昇は日本近海では特に変化が大きく、近い将来、スーパー台風が日本に到達する可能性もあるというのです。

スーパー台風だと、どのような被害になるのでしょうか。牧尾記者は2013年にフィリピンに来たスーパー台風についてこう解説します。

「高波と高潮が両方合わさった形になり、あたかも巨大な津波がきたかのような被害が沿岸に出ています。結果的にフィリピンでは6000人以上の方が亡くなったと言われています」

■台風を「予報するだけでなく、制御する」研究も

こうした中、日本でもまるで“アベンジャーズ”のような、台風研究の最前線を走る専門家チームが立ち上がりました。「台風科学技術研究センター」です。「台風の予報の精度を上げるだけでは人の命は救えない」という想いから、この専門家チームは、台風を「予報するだけでなく、制御する」研究を進めています。

台風をどうやって制御するのでしょうか。台風は目の中の温度が高いほど気圧が低く、勢力が強いとされています。そこで、飛行機で台風の目の中に突入して大量の氷を撒き、熱を奪い温度を下げることで台風の勢力を弱める方法などを検討しています。

■まるで“ラピュタ”の世界 台風の目に入ってみた

実際に、牧尾記者が専門家チームの観測調査に同行し、「台風の目」の中にジェット機で進入しました。その日の最大風速は秒速50mで、台風の勢力は「非常に強い」に分類されます。台風の雨雲に入ると、真っ白で何も見えません。

暴風に揺られること10分、台風の目に入ると、青空が広がっていました。その下にははっきり(→ハッキリ)と渦巻く「目」。台風の目の周りは壁雲と呼ばれる、高さ15km以上の厚い雲に覆われていました。調査の結果、この台風の目の中は周りより約20度も高く、日本列島に接近した場合には非常に危険な台風だとわかりました。

牧尾記者は「あまりにも幻想的すぎて、天空の城ラピュタを思うような、まさかこれが危険な台風の中にいるのか、全く実感が湧かないような景色でした」と振り返ります。

新生活…「土砂崩れや浸水の恐れがないか」など確認を

温暖化により強い台風の上陸や大雨災害がさらに多くなることが予想される今後、牧尾記者はこう呼びかけます。

「特にこの4月に新生活を始めて、ご家族で新しいところに引っ越した方も多いと思います。例えばお子さんの通学路に土砂崩れが起きやすいところは無いかなど、大雨シーズンの前にきっちり確認して、備えをお願いします」

(2022年4月9日放送「有働由美子とフカボリ記者」より)