岐阜の“ペンアーティスト” 奇抜なドレスで大会に出場 デザイナーは子どもたち
苦しみから救ってくれたアートを仕事に
岐阜県郡上市に住む“ペンアーティスト”の美濃島愛純(みのしまますみ)さんは、高校生の頃から12年間、極細の白と黒の世界と向き合ってきました。
次々と描かれる黒い線、その細さは0.03ミリ。ペン先の動きによどみはなく、白い紙の上に模様が浮かび上がっていきます。中学校時代のいじめから救ってくれたアートは美濃島さんの心の支えであり、今では仕事となりました。
現在、2人の子どもの母として子育て真っ最中の美濃島さんには、大切にしている作品がありました。目を閉じ、眠るような表情をした赤ちゃんの絵「生と死」です。
美濃島愛純さん:
「子どもたち2人の間に1人と、2人産んだ後に1人流産をして、その経験があったので、その時に描こうと思って。絵はどちらから見てもらってもいい。下を向いている状態は、おなかの中でお母さんの子宮の柔らかい中で、もうすぐ生まれるよって瞬間を描いた」
赤ちゃんが上を向いている状態は、子どもとの別れのつらさを形にしたもの。同じ経験をしたお母さんたちに伝えたかったといいます。
個性的なドレスをデザインしたのはアート教室の子どもたち
子どもの存在の大切さを、より強く感じた美濃島さんは、去年9月から子どもたちが通うアート教室を始めました。美濃島さんの救いとなったアートを通して、子どもたちにはいろんなことに挑戦し、夢を持ち続けてほしいと考えたのです。
アート教室は街で評判になり、先月、自身の社会貢献活動や実現したいことなどについて発信する大会「Beauty Japan」に出場することになりました。
大会の参加者たちは、ひまわりいっぱいのドレスや、ジーンズに黄色のキャップをかぶったDJスタイル、巨大な1万円札を掲げるなど、自分の活動を表した個性的な格好をしています。
そんな中、美濃島さんが身にまとったのは、一見、普通の黒いドレスのようですが、よく見ると足下に落書きのような絵が描かれています。
実はこのドレス、アート教室の子どもたちがデザインしたもの。お花があったり、お化けのような人間のような絵があったりと、個性豊かな模様がたくさん描かれています。美濃島さんがドレスを着て大会に出ることで、誰かに絵を見てもらう喜びを子どもたちに感じてほしかったのです。
その思いが通じたのか、大会中、美濃島さんが登場すると、ドレスの小さなデザイナーたちは、食い入るようにその様子を見つめていました。
美濃島愛純さん:
「今後も、ドレスにお絵かきするだけじゃなくて、布にお絵かきしてみたり、どこかに遠足に行って外の景色を描いてみたり、いろんな活動ができるように動いていきたい」
美濃島さんの活動は、挑戦することの楽しさや夢を持つことの喜びを、子どもたちの心に芽吹かせているようです。