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【社員の半数は元受刑者】「批判を受けても続けたい」再犯防止のために雇い続ける"トラック母さん"

2023年11月15日 10:54
【社員の半数は元受刑者】「批判を受けても続けたい」再犯防止のために雇い続ける"トラック母さん"

愛知県東郷町にあるコウエイ物流の社長・村上結美さんは、11年前、離婚をきっかけに会社を立ち上げた。当初はトラックが2台だけしかない小さな運送会社で、幼い息子たちを家に残し、夜遅くまで慣れない仕事を必死でこなした。その頑張りが実を結び、現在はトラックも15台に増え、会社の経営も安定した。だが、村上さんは働き詰めで息子たちにさみしい思いをさせたことを、ずっと後悔していた。息子たちにとって自慢の母親になりたい。背中を見せるために何かできることはないか。そんな思いで始めたのが「元受刑者を積極的に雇うこと」だった。

「人は一人では生きていけない」 悪循環を断ち切るために手を差し伸べる

コウエイ物流のドライバーは17人。そのうちの半数以上は前科がある人たちだ。村上さんは、出所したばかりの社員を食堂に連れて行き、おなかいっぱいご飯を食べさせる。住むところがない社員には寮を用意して面倒を見る。社会から孤立しやすい元受刑者を積極的に雇い、再び犯罪に手を染めることがないようサポートしているのだ。

この活動を続ける理由は、村上さん自身が母子家庭になった時に、人は一人では生きていけない、一人で何もかもやっていくのは不可能だと痛感したからだという。

人生には誰かの助けが必要なときもある。だが、元受刑者に手を差し伸べる人は決して多くはない。本人が罪を悔い改めて立ち直ろうと努力しても、社会から排除され孤立してしまうと、犯罪を繰り返すという悪循環に陥る。その悪循環を断ち切るためにまず必要なのが、「仕事」と「居場所」なのだ。

「ひとりぼっちで抱え込まないで」 家族のような温かい居場所作り

村上さんは仕事や住む場所を提供するだけでなく、生活面もサポートできるような体制を整えている。寮では先輩社員の柴田宏文さんが生活を共にし、仕事を終えた社員たちを「おかえり」と笑顔で出迎え、手作りの温かい料理をふるまっているのだ。

柴田宏文さん:「ひとりぼっちで抱えて色々問題起こしちゃうっていうのがどうもありそう。中にはアットホームというものを経験したことない子もいるので、(経験)してもらえたらいいなと。最終的には再犯防止。これが全てですので」

法務省のホームページによると、犯罪や非行の原因について、「家族や地域社会とのつながりが希薄で孤立しているといった問題を抱えている者も少なくない」としている。安心して帰れる場所がある。困ったことがあったら相談できる家族がいる。そういう環境に恵まれなかったために、犯罪に手を染めてしまった人も多いということだ。再犯防止においても、社会でも家庭でも孤立させないということが非常に重要なファクターとなる。

「困っている人は放っておけない」 母親の背中を見て育つ息子たち

このような素晴らしい活動をしている村上さんだが、好意的な意見ばかりが寄せられるわけではないという。元受刑者に対する世間の風当たりは想像以上に強い。だが、どんなに批判されても、村上さんの心が揺らぐことはないようだ。

村上結美さん:「誰かがそういった活動をしていかないと、結局(元受刑者の)働き場所がなくなっちゃうので、私は批判されてもやっていきたいと思います」

元をたどれば「息子たちの自慢の母親になりたい」と思ったことがきっかけで始めたこの活動。村上さんの息子たちはどう思っているのだろうか。

中学生になった村上さんの次男は、学校生活で困っている人がいたら助けたいという思いで生徒会に入った。困っている人を放っておけないのは母親の影響が大きいという。そして、将来は母親の会社で働きたいと語る。

息子たちはしっかりと母親の背中を見て育っているようだ。村上さんの活動は親子二代にわたって続いていくのかもしれない。

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