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【沸騰化時代の処方箋】ウニにキャベツをあげると美味に変身! 海藻食べ尽くす厄介者を有効活用

2024年5月30日 17:52
【沸騰化時代の処方箋】ウニにキャベツをあげると美味に変身! 海藻食べ尽くす厄介者を有効活用
キャベツを餌にするムラサキウニ

地球“沸騰化”と言われる時代に生きる知恵。海を荒らす厄介者を、意外な方法でごちそうに変える取り組みを取材しました。

「サザエやアワビがとれない」 尾鷲の海で異変が…

三重県尾鷲市にある鮮魚店。店先には地元でとれた海の幸が並んでいましたが、“あるもの”が品薄状態になっていました。店主が「昔はこれより大きいのが、たくさんあったんですけど…」と言いながら見せてくれたのはサザエです。さらに、アワビも数が少なくなっているといいます。

実は今、尾鷲の海でサザエやアワビがとれなくなっているのです。一体、何が起きているのでしょうか。

尾鷲の海でスキューバダイビングのガイドをしている三木浦ダイビングサービスの山田哲郎代表に、沖に出て海の中を撮影してもらうと、ある異変が起きていました。海藻が生い茂る一帯を抜けると、その先は岩がむき出しに。海藻が生えない「磯焼け」と呼ばれる現象が起きていました。

海藻が無くなった岩場の隙間にいたのは、長いトゲを持つ「ガンガゼ」という生き物。山田さんが活動するエリアでは、近年このガンガゼの数が増えていて、海藻を食べ尽くしてしまうことが磯焼けの原因の一つだといいます。

さらに、尾鷲市でガンガゼを調査する尾鷲市水産農林課の石川主任は、海水温の上昇が磯焼けを更に深刻にしていると指摘します。

尾鷲市水産農林課 石川達也主任:
「水温が上がってしまうと、ガンガゼなどのウニや魚の活動が活発になり、海藻が多く食べられてしまうことで、海藻が減っていると考えられています」

黒潮は通常、日本列島に沿うように流れていますが、2017年からは大きく蛇行するように流れが変化。この現象は「黒潮の大蛇行」と呼ばれています。その影響で三重県の海に温かい海水が流れ込み、尾鷲市では冬の海水温が2020年には、大蛇行の前に比べて2.7℃も上昇しています。

黒潮の大蛇行の影響で海水温が上昇し、その結果、ガンガゼなどの生き物の活動が活発になり、海藻が食べ尽くされて磯焼けが発生。これが、海藻を餌にするサザエやアワビが減少する一因となっていたのです。

海藻を食べ尽くす厄介者を“ごちそう”に変身

神奈川県では、海の厄介者をごちそうに変えようという取り組みが始まっていました。

神奈川県水産技術センターで飼育されているのはムラサキウニ。ガンガゼと同じく神奈川県の海で海藻を食べ尽くす厄介者です。飼育している水槽を見せてもらうと、キャベツを切ったものが浮いていました。実は、ここではムラサキウニにキャベツを与えて育てているのです。

神奈川県水産技術センター 原田穣主任研究員:
「(キャベツを与えると)甘みを感じさせるアミノ酸が増えて、苦みを感じさせるアミノ酸が相対的に減っていくことで、より甘みを感じさせる。味の改善効果もある」

ニンジンやカボチャ、エノキなど、色々な野菜を試してみたところ、キャベツが一番食いつきがよく、ウニの味も良くなったといいます。キャベツを与える前は身が少なかったムラサキウニも、与え続けると身が大きく成長。キャベツを食べるウニということで「キャベツウニ」と名付けられました。

ムラサキウニをとった場所では海藻が増え始めていて、いずれは生い茂ることを目指しています。

厄介者からごちそうに変身したキャベツウニ。原田主任研究員はキャベツウニの今後について「地域の産業として成立させるような養殖方法を編み出し、地域振興に役立てる手立てとしたい」としています。

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