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【町工場の挑戦】ブドウ畑はないけれど…社員10人の町工場がワイン造りに奮闘 農業とは縁遠い町に開設した初のワイン醸造所 「ワインは1+1が“3”にも“4”にも“0”にもなるからおもしろい」 愛知・春日井市

2024年9月28日 8:00
【町工場の挑戦】ブドウ畑はないけれど…社員10人の町工場がワイン造りに奮闘 農業とは縁遠い町に開設した初のワイン醸造所 「ワインは1+1が“3”にも“4”にも“0”にもなるからおもしろい」 愛知・春日井市
「春日井ワイナリー春の風」の船戸社長

お酒造りの経験ゼロ、全く別業界の町工場が、社員総出でワイン造りに挑んでいます。ふか~い味わいの奥には、ふか~い思いがありました。

「ワインを造りたい!」 愛知・春日井市の町工場がゼロからの挑戦

9月25日、愛知県春日井市のとある場所に大量のブドウが届きました。その量、なんと1トン! 入り口をふさいでしまうほどです。“デラウェア”という日本でも昔から食べられている品種ですが、暑さの影響か、今年は少し酸味が強いといいます。この大量のブドウで、一体何をするのでしょうか。

実はここ、春日井市で初めて開設されたワインの醸造所「春日井ワイナリー春の風」。去年からワイン造りを始め、今年で2年目を迎えました。このワイナリーで造っている赤・白・ロゼ合わせて5種類のワインは、どれもすっきりとした甘さと華やかなブドウの香りが特徴です。

この日は、ワインを仕込む1年で最も忙しい日。届いたブドウを機械にいれて軸から実を取り外したあと、圧搾機にかけてゆっくり絞り、タンクで3~4か月発酵させます。大量に届いた“デラウェア”は、こうして白ワインに生まれ変わるのです。

社長の船戸さんはお酒が好きで、自分で造ってみたいとワイナリーを開業しました。しかし、ラベルの製造者の欄には「船戸電機」というワインに似つかわしくない文字が…。

実は船戸さん、このワイナリーの社長であると同時に“町工場”の社長でもあるのです。先代の父親が始めた“町の電器屋さん”から徐々に業種を変え、今は電機制御盤などを製造・販売しています。

住宅街と町工場が入り交じり、ブドウ栽培などの農業とは縁遠いイメージの春日井市。そんな町で船戸さんがワインの製造に乗り出したのには、“お酒が好き”以外にも理由がありました。

船戸隆博社長:
「産業自体が衰退とは言わないですけど、賃金が安くて、なり手が少ない。農業もそうですけど、そういうのをなくしたい。なかなか農業に参入することもできず、一から造れるのがワインだった」

年々苦しくなる日本の産業を少しでも残したい。工場の他にワイン造りを始める事で、働く人や農家を助けられるのでは…と考えたのです。

船戸さんは社長業の傍ら、福井県が行っているワイン製造に関わる人材を育成する「福井ワインカレッジ」に参加。月4日ほど福井に通い、発酵技術やブドウの育成まで学びました。研修中は、頭から洗剤をかぶりながら醸造タンクの掃除をしたといいます。

「春日井ワイナリー春の風」で造るワインに使われているのは、山形産のブドウ。年々少なくなっているという日本のワイン用ブドウを守ろうと活動している人たちで、福井でワインを学んでいる時に知り合った人に紹介してもらったといいます。船戸さんは「人の縁でこのワイナリーはできている」と語ります。

福井に通っている間、会社は社員に任せて放置していたそうですが、社員たちは「いつも社長は突発的に何かをやり始めるので『そうなんですか~』って感じ」と、意外と冷静な反応。しかし、社長の熱意はしっかりと伝わっているようで、仕込みの日は社員総出でワイン造りに取り組みます。

船戸隆博社長:
「工場は1+1=2なんだけど、ワインは1+1が“3”にも“4”にも“0”にもなる。そこがおもしろい」

仕込んだワインができあがるのは12月から年明けごろ。まだまだ、春日井ワイナリーの挑戦は続きます。

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