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あした私は踊っていないかもしれない ~バレリーナ針山愛美の生き方~

2022年4月8日 12:40
あした私は踊っていないかもしれない ~バレリーナ針山愛美の生き方~
16歳で単身ロシアに渡ったバレリーナ針山愛美(はりやま・えみ)の「生き方」

針山さん「道のとこに戦車が、バーって。もう本当に生きるか死ぬかみたいな。本当に祈っていましたもん。ここから学校に帰るまで撃たれませんように…みたいな。明日何起こっても分からないなって。1日1日精一杯自分の出来ること」

「ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ!」

かつてベルリン国立バレエ団に所属していた針山愛美さん。いまは、子どもたちにバレエの楽しさを伝える活動を続けています。

針山さん「こういう子たちって、色んなアイデアを出してくるんですよ。それを形にするのが自分の役目だと」

2年前のことです。

針山さん「乳がんになって。私はすごく良かったこととしてとっていて、これは。色んなことがあっても、それには理由があると思ってて、私の人生はずっとそうだったのね」

医師「乳頭の方に向けて、こういう風に伸びてるので、このあたりにがんがあるだろうなと」

乳がんになったことで気づいたことがありました。

針山さん「もう一回踊りたいっていう気持ちが、すごく出てきたんですよ。どんな形でも、お客さんとか人に伝えることはできるなと思って」

16歳で、ロシアの名門「ボリショイバレエ学校」に入学。数々の国際賞を受賞しました。バレエ留学した当時、ロシアの政情は不安定でした。

針山さん「食べ物もなくなって、トイレットペーパーはない、シャワーは水だけのときもある。水さえも出ないような日もあるみたいな中で、唯一バレエやっていましたね。

この一瞬でもしかしたら何もできなくなるかもしれない。私は1日1日を全力で過ごすっていうことはすごく意味があって。今やるべき、やりたいことを本当にやりたいなって」

困難に直面してもぶれない、針山さんの“原点”がありました。

看護師「もう寝て起きたら終わってますのでね」

手術後わずか10日あまりでスタジオに立ちました。

針山さん「ちょっと痛いんですけど、もう大丈夫やと思います」

未来のバレリーナを育てるために舞台を企画していました。

世界で活躍するウクライナ出身のウラジーミル・マラーホフさんと子どもたちが、一緒に踊る舞台です。

針山さん「みんなにチャンスをあげたい。(舞台に)立ってそれで人生変わります」

去年11月、マラーホフさんは、外国人の入国停止措置が始まる1時間半前に出国。再会をはたしました。

マラーホフさん「元気のない回り方だね」

マラーホフさんの厳しい指摘に落ち込むこともある。でも、それを“原動力”に変えるのが、針山流。

「(クラシックバレエの)ピークはもう過ぎています。過ぎすぎ。アーティストとして、いちダンサーとして言うんだったら、何がピークかというのは違うと思います。もう最大限に、できないっていうところまでやってみたいなって思ったんで」

自分の限界に、ギリギリまで挑戦します。その姿を子どもたちが見ることで、何かを感じ取ってもらえたら…

記者「いよいよ明日ですね」

針山さん「いや全然、いよいよじゃないです。全く。あしたどこで何が起きるか分かりませんので」

3度の延期の末、2年越しで実現した公演。ようやく迎えることができました。

あした突然、“逆境”が来るかもしれない。だから…“いま”を大切に生きてほしい。

それが、表現者、針山愛美の「生き方」


2022年2月20日放送 NNNドキュメント「あした私は踊っていないかもしれない―バレリーナ 針山愛美の生き方―」(読売テレビ制作)を再編集しました。