世界初の品種改良法を発見 暖冬に強い新たな小麦の品種登録へ 細胞質の遺伝情報を活用 県立大学・村井研究室
地球温暖化に強い小麦を作り出す、世界初の品種改良法を県立大学の研究室が発見し、暖冬でも安定した収量が得られる品種の開発が期待されます。
小麦は秋に種をまき、冬の間に茎が地表で枝分かれした後、上に伸びていきます。しかし、冬の気温が高いと枝分かれせずに早く伸びてしまうため、穂の数が減り、収量が落ちるという課題があります。
県立大学の村井研究室は、トルコ周辺や中東に自生する「エギロプス・ムティカ」という小麦の野生種を活用し、その細胞質に含まれる、暖冬でもゆっくり成長させるという指令を出す「ゲノム」と呼ばれる遺伝子情報を、日本の小麦の核に与えました。その結果、暖冬でもゆっくり枝分かれが進む品種が作り出せることを発見しました。
これまでの品種改良は細胞核に含まれる遺伝情報を活用してきましたが、細胞質の遺伝情報を活用する方法は世界初の発見ということです。
■福井県立大学 創造農学科 村井耕二教授
「これまでとは全く違う新しい手法で温暖化に打ち勝つ品種ができるんだということを示した意味がある。おそらく世界中の温帯地域の小麦の品種改良にこの手法は役立てると思う」
小麦の品種改良を巡っては、県立大学の学長を務めた故・常脇恒一郎氏が研究に取り組んでいて、今回はそのデータを活用した15年来の発見ということです。
村井研究室では、この技術を使って来年には県産「ふくこむぎ」を品種改良し、5年後には、暖冬に強い新品種の登録を目指したいとしています。