【解説】大型統合の狙いは? ホンダ×日産、経営統合へ協議入り
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鈴江奈々キャスター
「ホンダと日産、大手自動車メーカー同士が経営統合に向けて協議に入ったということですが、2社の狙いは何ですか?」
経済部 安藤佐和子解説委員
「一言で言えば、生き残りです。日産ですが、本業のもうけである営業利益が、今年前半、前年比で10分の1まで落ち込むという厳しい状況になっています。要因の一つはアメリカでの不振です。利益よりも『販売台数』の方にこだわってたくさん売ろうと、安売りを続けてしまった。その結果、安売りがブランド価値を下げることになり、人気が落ちてさらに売れない、という悪循環が続いています」
鈴江キャスター
「一方のホンダは、どんなメリットを感じているのでしょうか?」
安藤解説委員
「ホンダも一社だけではこれから世界で戦っていけないということです。この話が表に出たときに、経産省の幹部は『トップがやっと覚悟を決めた』と評価しました。取材した関係者や専門家からは『一緒になるしかない』『トヨタ一社だけじゃ日本の屋台骨が崩れてしまう』と、統合するのが当然の流れとする声しか聞こえてきませんでした」
鈴江キャスター
「自動車産業は日本の基幹産業のひとつですが、世界で戦っていく上では、今、日本は何が遅れてしまっているのでしょうか?」
安藤解説委員
「自動車業界が今後ずっと避けて通れないEV、電気自動車が重要になります。世界が脱炭素に向かい、CO2の排出を削減しなければ、商品価値も落ちるという中で、質でも価格でもEVで勝っていかなければ生き残れないという状況です」
安藤解説委員
「世界でのEV販売台数のランキングをみると、1位はテスラ。そして、10位までの多くを中国メーカーが占めています。日本は日産が22位、トヨタグループが23位、ホンダが24位という結果になっています」
鈴江キャスター
「全体の販売台数からみると、EVは世界に差をあけられている状況なんですね」
安藤解説委員
「そうなんですね。日産は、日本ではEVの先駆者でしたが、それが今みると、かなり後れを取る形になっています。日産の元幹部は『日産は、中国がEVで世界を席巻しようとするのを横目に見ながら、十分に投資してこなかった』と話しました」
鈴江キャスター
「といいますと?」
安藤解説委員
「EVの生産を精度良く、コストを下げて行うには、まずは大規模な生産設備の投資が必要です。テスラや中国メーカーはそのような大型投資を行って、今こうして10位までにランクインする状況になっています。日産の元幹部は、製造コストを削減するためにまず大型投資をする、すると2割、3割と販売価格を下げていくことが将来的にできると言っています」
鈴江キャスター
「日産の経営をしていたカルロス・ゴーン氏は、この2社の統合はお互いを補えないと指摘していましたが、今回の経営統合の話は、うまくいくとみられているのでしょうか?」
安藤解説委員
「今、うまくいっていないから統合するということなので、もし『救済』のための統合、くっつくけれどもお互いそれぞれ変わらないということで、うみを出して抜本的な改革を避けるようであれば、効果は期待できません。ただ、規模が大きくなることでコストの削減、世界のビジネスでの交渉力も増すので、一つのゴールを決めて、利益を拡大していければ、消費者にとっても、よりよい車がよりお得な価格で買えるようになるのではないかと期待できます」