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【特集】塀の向こうの高齢化 食事は“刻み食”、受刑者が受刑者を介助 福井刑務所 特性に合わせた教育や指導も

2024年8月12日 10:57
【特集】塀の向こうの高齢化 食事は“刻み食”、受刑者が受刑者を介助 福井刑務所 特性に合わせた教育や指導も
福井刑務所

罪を犯した人を収容する刑務所にも今、高齢化の波が及んでいます。受刑者をただ懲らしめるのではなく、特性にあわせた教育や指導を。「社会復帰」に向けた塀の中の変化を取材しました。

福井刑務所には、初犯で26歳以上の男性受刑者292人が収容されています。このうちの1割が65歳以上の高齢の受刑者。年々その割合は増えていて、最高齢は90歳です。

こちらは高齢の受刑者が最も多い第7工場。刑務作業をする工場と居室は、階段を使わず移動できるよう同じフロアになっています。

■刑務官
「食事、とれ!」

麦飯に3種類のおかずが付く毎日の食事も、誤ってのどに詰まらせないよう、ミキサーで細かくした“刻み食”が用意されています。また、介助係となる30代から40代の若い受刑者もいて、皿の片付けなども代わりに行います。

■詐欺未遂などで服役中の男性
「介助をする機会はなかなかない。絶対に無駄にならない経験だと思う」

午後の刑務作業の時間。一部の高齢受刑者が別の部屋に集められました。

■刑務官
「きょうは月1回のアレ。買い物訓練をやりたいと思う」

値段が書かれた食べ物のパネルを商品に見立て、買い物をしながらお金の使い方を考える訓練。所持金は3000円。2日後に年金が支給されるというルールで、1日の食費は半分の1500円以内に収めるのが理想ですが…。

■受刑者
「これ、夜かな」
「夜はスペシャル弁当でしょ?」

すぐに食べたいものを買ってしまい、所持金をすぐに使いきってしまう受刑者も。

訓練を担当するのは、社会福祉士の資格を持つ福祉専門官で、買い物の仕方で受刑者の認知機能の衰えをチェックしています。

■福井刑務所 岡田伊佐央福祉専門官
「お金がなくて、物を盗んでしまう人も多い。そういう人には、お金の使い方を習得してもらおうという、地域に戻った時につながっていけばいいなと」

一方、受刑者にとって大きな課題となるのが、出所する際に身寄りがあるかどうか。窃盗などで服役中で、来年11月に出所予定の男性は、姉の家族を頼るつもりですが…。

■窃盗で服役中の男性
「(連絡は)取っていない。電話番号とか変わってるのかな。分からない。(周りの人間と)うまくやれるか、不安はある」

家族や地域から孤立する恐れがある受刑者の出所後を見据えて、民間の福祉サービスとも連携しています。

■福井刑務所 岡田伊佐央福祉専門官
「支援者と対象者を、刑務所にいる間から(支援の)関係を構築していくことが大事」

ところで、刑法の改正に伴って、来年6月から懲役刑と禁固刑を一本化した「拘禁刑」が新たに設けられます。木工や洋裁といった刑務作業が一律に義務付けられる懲役刑とは違い、受刑者の特性に合った作業や指導をするのが狙いです。

■福井刑務所 森川久浩所長
「特定のニーズがある人に、集中的な矯正処遇をすることで、今までよりも改善指導や矯正処遇の効果が高まればと思う。罰でありながら、罰の内容は我々が決める。罰を受けながら、改善更生に導く使命がある」

塀の向こう側で進む高齢化の問題。罪を犯した人を懲らしめるよりも、更生に重点を置いた法律の改正で、高齢受刑者の社会復帰と再犯防止に向けた模索が続きます。

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