郡山ガス爆発事故…点検業者の1人を在宅起訴・福島
4年4か月の歳月を経て、事故は新たな局面を迎えました。
2020年に郡山市の飲食店で起きたガス爆発事故で検察は26日、事故当時店のガス設備を点検していた業者の1人を在宅起訴しました。
この事故で大けがをし真相究明を求めていた被害者が取材に応じ、その胸の内を明かしてくれました。
■被害者(50代女性)インタビュー
「頭から離れることはないです。毎日のように思います」
被害者は今も4年前の事故に苦しめられています。
2020年7月、郡山市の飲食店で起きたガス爆発事故。
1人が死亡、31人が重軽傷を負ったほか、300棟以上の建物が被害にあいました。
警察は業務上過失致死傷の疑いで店の運営会社の社長ら5人を書類送検しましたが、検察は約2年半におよぶ捜査のすえ全員を不起訴処分に。
その後、責任の所在を明らかにしてほしいと被害者の1人から異議申し立てを受けた検察審査会は、2024年1月、事故で死亡した1人を除く4人の容疑者について不起訴処分は「不当」との判断を示しました。
それから10か月…
検察は、申し立てのあった4人のうち事故当時、店のガス管を点検していた保安管理センターで調査部長をしていた50代の男を業務上過失致死傷の罪で在宅起訴したのです。
起訴状によりますと男は、爆発した店のガス管について必要な調査を実施せずにガス管の腐食を見落としたうえ適切な予防措置を店などに教えなかったことで、ガス漏れとその後の爆発で28人を死傷させたとされています。
検察は被告の認否を明らかにしていません。
爆発事故で命をさまよう大けがをし検察審査会に異議申し立てをした女性です。
■被害者(50代女性)
「時間はかかりましたけれど、再捜査していただくなかで、1人でも起訴という結果が出たことは素直に受け止めている」
女性は、爆発で3メートルほど吹き飛ばされあごなどを骨折する大けがをしました。
いまも定期的に通院しながら、事故の責任はどこにあるのかと問い続けています。
■被害者(50代女性)
「落ち着くとか、慣れるとか、治ったとかはない。私のなかではただただ時間だけが過ぎてしまったという思い、気持ちでしかなくて。時間だけが過ぎたというそれだけ」
事故の関係者が立件されたことで今後は、裁判で真実が究明されることに。
女性は、それによって同じような事故がまた起らないことを願っています。
■被害者(50代女性)
「知りたいと思うことは自分のなかでたくさんあるが、言葉にしていくのが難しい。とにかくまだまだ終わりではないので、1つ1つ向き合って、1歩1歩進んでいきたい」
ここからは爆発事故の取材を担当する鎌田記者とお伝えします。
検察は最初の判断から一転させて1人を「在宅起訴」としました。
こうした判断は珍しいケースなのでしょうか。
福島地方検察庁の次席検事は、26日報道陣の取材に「検察審査会を議決を受け再捜査した結果、有罪を立証できる証拠がある」とし起訴したと話しました。
法務省の犯罪白書によりますと嫌疑不十分で不起訴とした処分のうち検察審査会の「起訴相当」「不起訴不当」の議決後に起訴となる割合は、10.8%となっています。
いろいろな事件、いろいろなケースをひっくるめた数字なので一概には言えませんが、数字だけでみれば珍しいと言えそうです。
今後、この事故は裁判所に舞台を移しますが、この裁判を私たちはどう受け止めれば良いでしょうか。
VTRで紹介した被害女性は、取材でこんなことを話してくれました。
■被害者(50代女性)
「爆発事故は他人事ではない、自分は当事者ですけれど、どこでも起こり得ることなのかなと思うと、とても怖い。きちんと原因を追究して対策を練って、改善策を見つけて、伴っていかないと、また同じことが起こることはあり得ること。」
過失といわれる事故・事件というのは「過失」ですから一般的に、当事者たちはそれを起こそうと思って、起こしているわけではなく、注意不足であったりミスだったりによって起きています。
だからこそ、その過程でどんな失敗や見落としがあったのか同じような事故を防ぐためにどうすれば良いのか社会全体で共有すべきポイントがいくつもあります。
今回は刑事裁判となりますから被告の無罪・有罪などを争うことになりますが、その過程で同じような悲惨な事故を無くすために社会でどんなことが共有できるのか。
私たちも見ていかなければなりません。
一方で、重大な過失事故や事件の教訓が裁判という手続きを経ないと公にされない社会に共有されないという捜査や司法の在り方も問われているように感じます。
以上、鎌田記者でした。