牛の飼育にかける青春 畜産を学ぶ高校生がコンテストへの出場を目指して牛の飼育に向き合う姿を追いました。 広島・庄原市
特集です。私たちの食を支える「牛肉」や「牛乳」ですが、今、牛を飼育する畜産農家が減っています。
そんななか、畜産を学ぶ高校生がコンテストへの出場を目指して牛の飼育に向き合う姿を追いました。
庄原市にある県立庄原実業高校。
3年生の松木紗希さんと児玉真梨菜さんです。
「モー」
放課後になると制服から「つなぎ」姿に。
2人は牛を育てる「畜産女子」です。
児玉さんのお気に入りの作業は、子牛のミルクやりです。
■児玉さん
「兄が入学しててそれで動物もあるから来てみたらと誘われたのがきっかけで、めっちゃ牛かわいいじゃんとなってそこで哺乳で牛にはまってしまって」
牛との交流を大切にする松木さんはブラッシングが得意です。
■松木さん
「自分は家が農家なわけでもなくて非農家出身なんですけど、小さい頃から動物が好きで動物に関わる仕事に就きたいなと思ってたときに庄原実業という学校があると知って」
「前よ前よ前前そーよ」
51人が学ぶ生物生産学科。授業として取り組む「和牛の飼育」で、2人は中心的な存在です。
■児玉さん
「上手く歩けるようになるとこからがスタートなんで難しいですね」
広島県内の和牛の畜産農家は170戸。30年で240戸余り減りました。深刻な後継者不足に直面しています。そんななか2人は…
■児玉さん
「(将来は)畜産農家になれたらなと思ってて今庄原の課題とか現状を知れたので、それを自分の力でも変えていけるように肥育牛の農家になりたいと考えてます」
■松木さん
「畜産って素晴らしいなと思うので最終的には庄原とかに戻ってきて牛に携われるようになったらなと思います」
2人が目指しているのが、コンテストへの出場です。
今年で100回目を迎える「広島県畜産共進会」。和牛と乳牛が出品され、体形の美しさを競います。
この日、生徒たちは畜産に関する研究や技術支援をしている広島県の施設を訪れました。
「牛の鼻に刺激を直接与えることによって牛に指示を出してます。頭の高さなんですけど頭の高さとお尻ですね一直線になるように頭を上げてるといいということになります。牛の足を見て頂ければ前足後ろ足揃ってると思う。調教してきてるので足が揃ってる状態で立っている」
■松木さん
「すごいプロだなって思います」
■児玉さん
「人の言うことを聞いて落ち着いて歩いてるのですごいなと思います。なかなか出来ないなという」
■県立畜産技術センター 保本朋宏次長
「特に3年生の方々目つきが違いましたね。将来の担い手として人が育っていると見えますのでとてもうれしく思ってます」
学んだ技術は学校へ持ち帰り日々の調教に生かされます。
コンテストに出場するためにはまずは審査に通る必要があります。
最初の関門に向けて最終調整です。
牛から離れると普通の高校生。家族も畜産を学ぶ2人を応援しているといいます。
■松木さん
「テレビとかで牛の話題とか畜産系の話題が出ると何か知っとるんじゃないんとか言われるので、それで家族の会話にもなったりするのでこういう特殊なことが学べる高校に来てよかったと思う」
■児玉さん
「就職も厳しいじゃないと言ってくれるんですけど実業で学んだ知識をしっかり生かしていきたいので、いや私は畜産を変える気持ちで頑張っていきたいと思っている」
迎えた審査の日。
評価してもらうのは、自信を持って送り出した3頭の雌牛。
「全農ひろしま」や広島県の職員などが審査します。
緊張した面持ちの児玉さん。牛の体型を良く見せるため慎重に歩かせます。審査では、牛の胸囲などを測定。また、肉付きや毛並みなどを手で触って確認していきます。
およそ70頭のうち、上位20頭が出場することができます。
「この牛のいい所は横から見たときも後ろから見たときも近称とか雌牛らしさの品位体の伸びというところがいいところかなと思います。お尻の形がこの牛からすると少し惜しまれる点かなというところですね」
■児玉さん
「どの牛にも褒めてもらえるところがあったし、逆に悪いところが見つかったのでこれからの飼育で少しでも改善していけたらと思ってます。上位20頭の中にぜひ1頭は入ってほしいなと思ってます」
9月17日、審査結果が学校に届きました。担当教諭から告げられた結果は…
「選ばれました。おーパチパチパチよかったりんちゃんなんですかえーパチパチパチよもちゃんかと思ってた」
選ばれたのは、「りんりん号」でした。
■松木さん
「1頭でも県共に行けてすごいうれしいです。頑張ってきて良かったなと思う」
■児玉さん
「先生方と協力しながら育ててきた子なので次の大会(県共)でもいい結果が出せるようにしていきたい」
目指してきた最高の舞台は10月29日。
牛と向き合う日々が続きます。
【2024年9月24日 放送】