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無罪訴えながら死刑執行"菊池事件" 法医学者が「凶器」の矛盾指摘

2025年3月3日 20:44
無罪訴えながら死刑執行"菊池事件" 法医学者が「凶器」の矛盾指摘
弁護団・村上雅人弁護士

ハンセン病とされた男性が殺人の罪に問われ、無罪を訴えながらも死刑が執行された「菊池事件」。遺族が「当時の裁判はハンセン病差別に基づく憲法違反の手続きだ」と訴え「再審」=裁判のやり直しを求めています。この中で3日、法医学者が「凶器」とされた刃物についての矛盾を指摘しました。

菊池事件は、1952年、現在の菊池市で役場職員が殺害され、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園に入所していた男性が殺人の罪に問われたものです。男性が裁かれたのが、隔離されて事実上非公開だった「特別法廷」。

男性が無罪を訴えたものの弁護士は争うことなく死刑判決が確定し、1962年に執行されました。この裁判をめぐり熊本地裁は2020年、「ハンセン病を理由とした差別で法の下の平等に反する」として特別法廷は憲法違反と判断し、その後確定。

これを受けて遺族が裁判のやり直しを求め、おととし7月から裁判所・弁護団・検察による協議が行われてきました。

【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
担当の花木瞳記者とお伝えします。裁判のやり直しに向けた争点を教えてください。

(花木瞳記者)
まずは、元の裁判の違憲性です。弁護団はそもそも「死刑判決を出した特別法廷が憲法違反である以上やり直すべき」と主張。検察側は「憲法違反は再審の理由には当たらない」と反論しています。

2点目が確定判決で凶器とされた「短刀」についてです。確定判決では、被害者には20か所以上の傷があり、凶器は別の場所で発見された短刀だった。男性が犯行後短刀を洗ったため血液反応が出なかったとしています。

弁護団は、裁判をやり直す新たな証拠として、「凶器とされる短刀の矛盾」を示す鑑定書を提出しました。そしてこの鑑定書を書いた法医学者の証人尋問が、非公開で行われました。

【VTR】

3日午後、熊本地裁で証言台に立ったのは、山本医学鑑定研究所の法医学者・山本啓一所長です。記者会見を開いた弁護団によりますと、山本所長は「被害者の傷の中に、短刀ではできない傷がある」と述べたということです。

■弁護団・村上雅人弁護士
「(山本所長は)どう考えても、この短刀ではできないという風なことを明確に証言されていました」

一方、検察側はこの傷が短刀でできた可能性があるのではないかと質問しましたが、山本所長はこれを否定したということです。

弁護団は、さらに山本所長が犯人は多量の返り血を浴びたはずなのに、男性の着衣に返り血がついていないのはおかしいと証言したとして、改めて裁判をやり直すべきだと主張しました。

■弁護団・徳田靖之弁護士
「いくら裁判官がこの事件について死刑にしてしまっているというハードルが高くても、そんなあり得ない可能性を根拠にすることはないだろうと私たちは思ってて。100%意図したことが達成できたという風に思っています」

【スタジオ】
(花木瞳記者)
3月18日には、弁護団が求めたもう1人の証人尋問が予定されています。弁護団はこれらの証拠をもとに、熊本地裁が早ければ秋にも裁判をやり直すかどうか判断すると見ています。

最終更新日:2025年3月3日 20:44
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