吃音症の会社員がスピーチに挑戦 伝えたいメッセージとは
吃音症(きつおんしょう)をご存知でしょうか。
話すときに滑らかに言葉が出てこない言語障害のひとつです。
この吃音症のある県内の会社員が先月、金沢市で開かれたイベントの舞台に立ち、苦手なスピーチに挑戦しました。
自身の体験を通して届けたいメッセージとは。吉田記者のリポートです。
先月28日に金沢市内で開かれたイベントです。
舞台で歌などを披露する出演者たちには、ある”共通の個性”がありました。
司会「きょうはですね、『吃音』のある方々がそれぞれの個性を存分に発揮して、素敵なパフォーマンスを披露してくれる日です」
舞台に立つ演者は、滑らかに話すことができない『吃音』の当事者たちです。
当事者が人前で自己表現をすることで自信をつけてもらおうと、地元の当事者団体が初めてこのイベントを企画しました。
緊張した面持ちで出番を待っていたのは、魚津市の新木裕也さん。
「この場で、見ている感じと、実際にそこに立って話す感じとやっぱり違う気がするので…」
新木さんは、今回初めて、大勢の人の前でスピーチに挑戦します。
本番の2週間前。
新木さんは、自らの体験などをまとめたスピーチの準備を進めていました。
「(学生時代に)大勢の前で自己紹介する際に盛大にどもってしまったので、人と話すことが苦手になってしまったという体験を説明する資料です」
吃音の主な症状には、同じ言葉を繰り返す「連発」や声が出てこない「難発」などがあります。
日本人の100人に1人が吃音症とされていますが、現時点で、確立された治療法はありません。
新木さんは学生時代、友人とのコミュニケーションや就職活動などで、「難発性」の吃音に悩まされてきたといいます。
「マネされるというのが一番辛くて、自分と話すときはわざと誇張表現みたいな感じで、わざとどもって話しかけてきたりというからかわれ方はしたので、そこは辛かったですね」
「『吃音 悩み』だったり『吃音 将来』だったり『吃音 不安』とか 吃音についての不安や悩みなどを検索していましたね」
現在は、県内の半導体関連の企業でエンジニアとして働く新木さん。
社会人になった今、苦手なスピーチに挑戦してでも伝えたいことがあると話します。
「いま吃音で悩んでいる学生だったり、就活を前にして不安な大学生に向けて、少しでも役に立つ情報を提供できればと」
迎えた本番の日。
80人以上の観客が舞台を見つめる中、新木さんの出番が訪れます。
司会「新木さん、プレゼンの方をよろしくお願いいたします」
「がんばって」「はい」「えっと、新木裕也と申します」
「言葉」に悩まされてきた新木さん。今度は、その「言葉」で同じ悩みを持つ人を勇気づけます。
「自分の好きなことに全力で取り組んで、自信をつけることで、前向きになれますし、吃音をばねに頑張ってきた経験というのは、必ず、自分の武器になりますので…」
拍手「パチパチパチパチ…」
石川県内の男の子「尊敬しました、とても」
大阪から来た男の子「かっこよかった」
男の子の母親「この子の将来と重なってしまうんですが、就職活動とか社会人になって1人で生きていくうえですごく心が動かされたというか、この子も自信をもって生きて行ってもらいたいなと思いました」
新木さん「(吃音は)悩みの種であることは変わりないんですけど、吃音があったからこそ成長できた点もありますので、憎い反面、ありがたいと思うこともあったかなと」
新木さんの語りかける言葉が吃音に悩む人たちの背中を押しています。