空から命を救いたい…密着!蒔苗ひかり巡査「北海道警航空隊」史上初の女性パイロット
『北海道警察航空隊』。
山岳救助や水難救助など命を救う活動のほか、日々パトロールの目を光らせ、北海道の安全を空から守っています。
その道警航空隊にたったひとり、女性パイロットがいます。
空から見た現場と、目標に向かって奮闘する姿にカメラが密着です。
(無線)「高校教頭からの通報で生徒が自ら爆弾を作ったと現在…」
(蒔苗ひかり巡査)「わかりました。了解です」
(隊員)「出動要請。隊長にいま言ってる」
(蒔苗ひかり巡査)「あ、わかりました」
北海道警察航空隊に走る緊張。
高校のグラウンドに不審物、上空から確認せよ。
(隊員)「機体出し行ってくれる?」
(隊員)「隊長OK」
ヘリコプターの操縦席には、蒔苗ひかり巡査(31)。
毎日、空から北海道の安全のために目を光らせる仕事です。
山岳遭難や水難事故での救助なども。
その活動は多岐にわたります。
道警航空隊は1963年に発足。
年間1000件を超える出動を18人のパイロットで担います。
配属4年目の蒔苗さんは、その中で唯一の、そして道警航空隊・61年の歴史で初の女性パイロットです。
蒔苗さんは「副操縦士」。
日々の任務の中心は小型機でのパトロールです。
(整備士)「これあれ前方なに?火事か?」
(機長)「なんか煙出てたんですよね。なんだあれ?」
(蒔苗ひかり巡査)「確認しますか?」
しかし、パイロットの仕事は空の上だけではありません。
(蒔苗ひかり巡査)「機長からも言われるんですけども、空で実践するためには地上でどれだけイメージトレーニングができているかというのを、 ここで操縦するときも言われています」
事務所での待機時間も常に勉強。
大きな目標があるからです。
(蒔苗ひかり巡査)「今年度末に、中型機の機体の資格を取るために訓練が開始されるんですが、機体の構造とかいろいろシステムとか勉強しないと受験に挑めないので」
機長の鈴木さんと、この日はシーズン入りを前に、冬山の遭難事故を想定して山に近づく訓練です。
(無線)「ランウェイ32。クリアード・フォー・テイクオフ…」
(蒔苗ひかり巡査)「離陸します」
(蒔苗ひかり巡査)「アフターテイクオフチェックお願いします」
(機長)「はい、アンテナダウン」
(蒔苗ひかり巡査)「アンテナダウン」
空中で機体を安定させることは重要ですが、高度な操縦技術を要します。
特に山岳地帯では、急激な気流の変化で機体が一気に降下する危険もあるため、より高度な技術が求められるのです。
(機長)「もうちょい高度下ろして」
(蒔苗ひかり巡査)「はい」
(機長)「もうバックサイド(低速)だから落とされないように。もうちょい。ちょっと高いかな。一回離脱して」
(蒔苗ひかり巡査)「右斜め前に離脱します、高度はそれほど上げないでいきます。離脱!」
(機長) 「おお、いいね」
(蒔苗ひかり巡査)「わかりました」
(機長)「これくらいでどうだ。これだったら130フ ィート」
1時間半の訓練飛行を終え、戻ってきました。
緊張が解ける間もなく、すぐに反省会です。
(機長)「進入の仕方としてはよかったかなと。あれでもうちょっと低いと今度下降気流あるから。 どーんとぶつかっちゃう」
緊張と集中が連続する任務。
しかし、笑顔の蒔苗さんも職場内では多く見られます。
(航空隊 鈴木弘樹係長)「結構大きい声で笑ったりするので、雰囲気もよくなるんじゃないかなと思います。意思は結構強いので、このままどんどん成長していってくれればと思うんですけど」
(航空隊 馬場恵吾隊長)「とても素直ですし、好奇心旺盛で向上心が非常に高いので。今後、北海道警察の航空隊を背負っていく人間ではないかなと考えております」
(蒔苗ひかり巡査)「ただいま」
(父・英孝さん)「チョコ好きだよな」
自宅では父親と二人暮らし。
ひとり娘の毎日に心配を寄せる親心です。
(藤得記者)「パイロットになるって聞いた時には…?」
(父・英孝さん)「最初はね、ピンとこなかったんですよ。なにを言ってるのかなと思ったんですね。ほんとにヘリに乗る状況になったら(ヘリの)バタバタって音がしたら見ますよね、(娘が) 乗ってるかもしれないって。色を見て青いのだったら道警(のヘリ)だな、とか」
道民のために働く仕事がしたい。
その思いで警察官を志し、振り出しは交番勤務。
(蒔苗ひかり巡査)「刑事もなりたかったんですけど、まったくやったことないこともやってみたいっていう気持ちが勝ったというか。そういうところに挑戦したいっていう気持ちがやっぱりあって」
パイロットを募集している。
7年前の上司のひとことで、人生の歯車が大きく動きました。
道警に在籍しながら、栃木県の陸上自衛隊・航空学校で訓練に励み、3年前に免許を取得。
道警初の女性パイロットの道を切り開きました。
蒔苗さんがもう一つ楽しみにしている日課がー
自衛隊・航空学校時代に知り合った、ご主人の銀竜さんとの電話です。
(夫・銀竜さん)「最近、あれはうまくいってるの?エンジン始動とか」
(蒔苗ひかり巡査)「そりゃそうでしょ!エンジン始動できなかったら飛べないじゃん」
(夫・銀竜さん)「週末はなにするの?」
(蒔苗ひかり巡査)「勉強だよ」
(夫・銀竜さん)「勉強か。もうすぐクリスマスだね」
(蒔苗ひかり巡査)「そうだね、確かにね」
(夫・銀竜さん)「休み中どっか行ったりする?」
(蒔苗ひかり巡査)「行かないよ」
(夫・銀竜さん)「勉強?」
いまは離れ離れの生活ですが…
目指す高みに向かって、飛び続ける毎日です。
(蒔苗ひかり巡査)「航空隊を最初に目指したところが、人命救助の現場に携わりたいというところだったので。一人でも多く道民の方を助けたいという気持ちがあるので、それを目標に頑張っていきたいと思います」
北海道の安全を空から守る。
蒔苗さんはきょうも操縦かんを握る手に力を込めます。