ふらふら走る不審車「何杯飲んだか覚えていない…」 飲酒運転の取り締まりに密着 北海道
忘年会シーズンを迎え、強まるのは「飲酒運転」への懸念です。
悲惨な事故を繰り返さないという強い思いで取り締まりにあたる警察官にカメラが密着しました。
眠らない街・すすきのを走る一台の白い車。
道警交通機動隊の覆面パトカーです。
歳末の繁華街 覆面パトカーで取り締まり
助手席で車の状態や運転の仕方などに目を光らせているのは、交通取り締まり歴4年の吉田巡査です。
(吉田巡査)「こんばんは。お酒の取り締まりをやっていまして、ご協力お願いします」
この時期、特に懸念されるのが飲酒運転です。
新型コロナウイルスが5類に移行してから初めての年末を迎える札幌の街には、以前のような賑わいが戻っています。
道警によりますと、忘年会などでお酒を飲む機会が増える12月は、飲酒運転の検挙数が1年の中でもっとも多く「根絶」には程遠い数です。
2015年には、砂川市の国道で飲酒運転をした車がワゴン車に衝突し、4人の命を奪いました。
忘年会シーズン 飲酒運転の検挙数は12月が最多
現在も飲酒による重大事故は後を絶ちません。
悲惨な事故を繰り返さないために、警察は飲食店にも注意を呼びかけています。
(警察官)「車を運転しているお客さんにはお酒を提供しないということをお願いします」
しかし、客にまで呼びかけが届かないのが現状です。
ふらふらと走る1台の車を発見
「午前3時ごろ」
この日、パトロール中の吉田巡査の目に留まったのは1台の車。
(吉田巡査)「ふらふらしてる?」
(渡邊巡査部長)「修正しながら走っているような気がするけどね。行きますか」
(吉田巡査)「前の運転手さん、左に寄って停まってください」
(渡邊巡査部長)「こんばんは。交通機動隊です。飲酒運転の取り締まりです」
(吉田巡査)「穴に向かって息ふーって吹いてください。はい、ありがとうございます」
この運転手はアルコールは検出されませんでした。
(運転手)「なんで僕とめられたんですか」
(渡邊巡査部長)「運転の仕方がハンドルを急にきゅっとやっている感じだったので。酒気帯び運転の人って判断が遅くなったりするから、速度が速くなったり遅くなったり、きゅってなったりするんですよ」
(吉田巡査)「ハンドルをしっかり持って運転お願いします」
こういった地道な取り締まりが事故防止につながると吉田巡査は考えています。
(吉田巡査)「友達だとか家族でも、過去に交通事故にあってけがをしたり痛い思いをしているので、そういう思いをする人が一人でも減ればいいなと思って取り締まりをしています」
吉田巡査が警察官を目指したきっかけは、小学生の時に見た女性警察官の制服姿です。
(吉田巡査)「女性の方が背筋が伸びて凛としていたのがかっこいいと思って。あこがれたものだったので、(警察官に)なりたての時とかは、自分これ着れるんだとドキドキしましたし、今も着て鏡を見たりネクタイを締めたりすると、仕事するぞという気持ちの切り替えになります」
つかの間の休憩時間・・・
食事はコンビニのかつ丼とエナジードリンクです。
ベテラン警官とペアで深夜の取り締まり
(記者)「いつも一緒に食べるんですか?」
(渡邊巡査部長)「ペアの時は時間を合わせて食べることが多いですね」
(記者)「コンビニのご飯は一緒に買いに行くんですか?」
(渡邊巡査部長)「吉田さんはいつも買いに行っているよね」
(吉田巡査)「私はほぼコンビニでできているので」
吉田巡査とペアを組む渡邉巡査部長は、17年間交通取り締まりの任務についています。
吉田巡査にとっては憧れの存在です。
(吉田巡査)「経験値の差がすごい、大先輩です。運転が上手いです、運転のプロなので。思ってます、本当に思ってますよ」
(渡邊巡査部長)「吉田さんの方が着眼点すごいなとは思っていますよ。よくそれを見つけたなと」
長い時間にわたり同じ任務にあたる2人は、いまでは息ぴったりです。
年末を控えたこの日は深夜からの取り締まりになりました。
飲酒運転による事故は、終電が無くなる午前0時以降から明け方にかけて多く発生しています。
取り締まりを始めてからおよそ4時間後。
(渡邉巡査部長)「おいおい」
ふらふらと走る不審な車を見つけました。
不審な車に停止求めるも700メートルも走行
(吉田巡査)「左に寄って停まってください。気づいてる…よね?」
何度も呼びかけているにも関わらず、乗用車は応じる様子がありません。
(吉田巡査)「キューブの運転手さん、左に寄って停まってください」
乗用車が停止したのは、最初に吉田巡査が声をかけた場所からおよそ700メートル離れたところでした。
(吉田巡査)「こんばんは。お酒飲んでますか?ちょっとアルコール臭いですね」
詳しく検査をするため、運転手の女を覆面パトカーに乗せます。
(吉田巡査)「数字読めます?」
(運転手)「0.56」
(渡邊巡査部長)「基準値が0.15だけど今回4倍近く出ているね。飲んだの間違いないね。飲酒運転になるの分かっていたよね。どれくらいのお酒を飲みましたか?」
「何杯飲んだか覚えていない」あきれる言い訳も
(運転手)「何杯飲んだか覚えていなくて。予想でいいですか。13とか」
記憶が定かではないほどに酒を飲んだと開き直った様子で話す女。
(渡邊巡査部長)「なして運転したの」
(運転手)「お金がかかるから…」
(渡邊巡査部長)「お金は持っていたの?」
(運転手)「クレジットカードがあるからなくはないけど…」
飲酒運転をした場合、運転免許の取り消しや罰金、もしくは懲役刑が科されます。
また、同乗者にも話を聞くとー
(吉田巡査)「運転手さんだいぶお酒臭かったけど、お酒飲んでるの気付きませんでした?」
(同乗者)「わかんないですね。ははは。今何時ですか?もう朝ですよね。勘弁してくださいよ~」
同乗者の酒の有無にかかわらず、飲酒運転と知りながらその車に乗ることや、運転するように頼むことは飲酒運転同乗罪に問われます。
運転手の女と同乗者2人は警察署などで事情聴取をうけることになりました。
「飲酒運転は大変危険な行為」歳末の警戒続く
(吉田巡査)「飲酒運転は大変危険な行為ですので、絶対に飲酒運転をしないでいただきたいなと思います」
「飲酒運転はしない、させない」
悲惨な事故をなくすために、きょうも吉田巡査は取り締まりに向かいます。