コナン一色…聖地巡礼に沸く一大観光都市・函館市 経済効果は絶大 その戦略とは?
本格的な観光シーズンに入り、賑わいをみせているのが北海道函館市です。
「名探偵コナン」の映画が公開されたことで“聖地巡礼”を楽しむ人で活気づいています。
いったいどんな効果が現れているのでしょうか?
連載30周年を迎えた、人気アニメ「名探偵コナン」。
劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は、シリーズで初めて観客動員数1000万人を突破しました。
興行収入も140億円を超えて最高記録を更新しています。
この映画の舞台が函館市です。
(恩田記者)「旧函館区公会堂です。コナンファンがたくさん集まっています」
函館には連日、多くの観光客が訪れていて、劇中に登場する観光スポットはファンで賑わいをみせています。
五稜郭にも、たくさんの人!
金森赤レンガ倉庫では、人気キャラクターの怪盗キッドからの予告状が貼りだされたり…
コナンとコラボしたバスや市電が走っています。
コナンの市電にあえて乗ろうと、ここにも行列ができていました。
車内のアナウンスはコナンが担当しています。
(江戸川コナン)「湯の川温泉、湯の川温泉です」
交通安全を促す電光表示板も「運転中の居眠り名探偵でも救えない!」「大切にしよう“かもしれない”の推理力!」コナンにちなんだ呼びかけになるなど、マチはコナン一色です!
“聖地巡礼” 全国各地から観光客殺到
(静岡からの観光客)「すごいですよね、マチ一帯になっていろんなところにポスターが貼ってあって」
(長野からの観光客)「どこに行ってもコナンの看板があって楽しい」
経済効果も期待されていて、観光客が利用するJR函館駅の観光案内所には、建物の外にまで長い行列ができていました。
旅の目的はというと…
(札幌からの観光客)「コナンのスタンプを押しに来ました」
(青森からの観光客)「コナンの映画が始まったので、マチ巡りをしに来ました」
(札幌からの観光客)「(服を)コナン仕様で来ました。コナンくんっぽくルーズソックスにして。聖地を全部巡れたらな」
映画やアニメに登場する土地を巡る「聖地巡礼」です。
多くのコナンファンが訪れていて、いま函館市内を巡るスタンプラリーが人気です。
江別市から来た畠山恵美さんと娘の心瑠さんです。
(畠山恵美さんと心瑠さん)「聖地巡礼!」
(畠山恵美さん)「あなたが推しているのは誰ですか?」
(畠山心瑠さん)「服部平次です!」
(畠山恵美さん)「映画のここにいる人がこの子の推しで、京都まで行ってきました」
心瑠さんは大のコナン好きで、これまでも京都や大阪などコナンの聖地を巡ってきました。
まず向かったのは函館朝市です。
(父)「函館、人口2倍くらいになっているんじゃない?」
あまりにも長い列に驚く父をよそに、スタンプラリーに夢中の母と娘。
一日でより多くの観光スポットをまわるための戦略を立てて巡ります。
次の目的地は金森赤レンガ倉庫です。
スタンプに描かれたキャラクターは施設によって違うため、自分の「推し」にどこで出会えるかも楽しみのひとつです。
(畠山恵美さん)「推しキャラの予想は?」
(畠山心瑠さん)「どこだろう」
(畠山恵美さん)「悩むよね、五稜郭か函館の夜景はいるよね」
待つことおよそ10分…
(畠山恵美さん)「あ!!服部平次でしょ、大変なことになった」
心瑠さんの推し・服部平次が早くも待っていました!
(畠山恵美さん)「推しのスタンプをきょう中にゲットできた。やばい、にやけがとまらない」
(畠山心瑠さん)「北海道が自分が住んでいるところだから、推しが来た時、え!って思いました。だから聖地巡礼は行きたかったからめっちゃ楽しい」
熱心なファンが多い名探偵コナンは、道外からの観光客も函館へ呼び込む力があり、経済効果は絶大です。
五稜郭タワーや函館山ロープウェイなど、市内の観光スポットの入場者数です。
映画公開から1か月間で軒並み伸びています。
コロナの緩和、桜の時期や天候なども理由のひとつではありますが、やはりコナン効果は大きいということです。
(関西からの観光客)「北海道は来たいなと思ったことはあったけど、コナンくんきっかけで一歩勇気が出たというか、来ることができました」
(東京からの観光客)「コナンの映画を見ていろんなところがあるんだなって知れた。(観光に来る)きっかけになった」
函館市は2000万円の予算をつけ、スタンプラリーやフォトスポットの設置などファンを迎える準備を進めてきました。
(函館市観光部 巌美羽さん)「マチをあげての映画とタイアップしたのは今回が初めての取り組みです。市役所と民間企業と合わせてみんなが一帯となってマチを盛り上げていけている実感があります」
地元の飲食店もコナン人気の効果をすでに感じています。
こちらの店では、映画の公開記念舞台挨拶で声優らに配られたという「函館玉子鶏黄」が連日完売になっています。
(まる屋 高野遥代表)「コナン効果としては、だいたい売れ行きが10倍くらいにはなっています。コナンも史上最高の出来だと聞いているので、これがずっと続くといいなと思っています」
駅の目の前にあるこちらのホテルは、およそ200室あり、来月までの予約が埋まりつつあるといいます。
(プレミアホテル 廣川真由美総支配人)「お客様のアンケートにも、コナンの映画を見て来ましたというのもあるので、お客様が増えているんだなという実感はあります。函館の魅力をホテルから発信できるようにこれからも取り組んでいきたい」
そして意外にも、観光客があえて訪れているのが、映画館です!
(シネマ太陽函館 木村常麦さん)「これが午後3時50分です。車いすスペースがあるので一般は1席しか空いていません」
ゴールデンウイーク期間中は1日12回上映し、連日満席が続いていました。
(上ノ国町からの観光客)「(きょうだい3人)席はバラバラで取れたけど、ギリギリでした」
(青森からの観光客)「本当は青森で映画を見てから来る予定だったんですけど間に合わなくて、こっちで見ようと思ったら満席でした」
(シネマ太陽函館 木村常麦さん)「今回に関しては、道外の方とか地元以外の方も多く、かなり多くのお客様が来ていて、過去に例がないくらい来ています」
アニメなどの聖地巡礼に詳しい専門家は、有名コンテンツに依存し続けない取り組みが重要だと話します。
(近畿大学 岡本健教授)「名探偵コナンという世界中に莫大なファンがいるコンテンツで五稜郭や函館市が紹介される周知効果・広告効果は、(市の予算)2000万円という金額以上にあると思われます。ここでどういう体験をしてもらってどういう出迎えをして、これからファンがどうなるか、函館の魅力を変わらずに発信することが重要なのではと思います」
江別市から訪れた親子です。
この日6か所目となる最後のスポット・函館山に到着しました。
劇中で登場した場所で写真を撮ったり、函館でしか買えない限定グッズを集めたり、心瑠さんにとって満足のいく聖地巡礼になったようです。
(畠山心瑠さん)「ここからの景色、この形がコナンの映画の予告で出てた場面があったので、あ!ここだ!って思いました」
(畠山恵美さん)「忙しかったけど楽しかったです。函館市内を回って、あっち行ってこっち行って、ぜひ札幌方面でもやってほしいよね」
函館市内のイベントは9月末まで続けられ、さらなる集客も期待されています。
名探偵コナンの勢いはまだまだ続きそうです。