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人口325人の粟島浦村で進むデジタル化 “スマホで乗船”に“デジタル島民” 「島の人口減少を食い止める」ユニークな取り組みとは 《新潟》

2023年10月27日 20:01
人口325人の粟島浦村で進むデジタル化 “スマホで乗船”に“デジタル島民” 「島の人口減少を食い止める」ユニークな取り組みとは 《新潟》

人口325人、新潟県の粟島浦村。いま、島ではデジタル化が進められています。
先日行われたのは「デジタル島びらき」…デジタル化によって島を盛り上げようとユニークな取り組みが始まっています。

村上市の岩船港からフェリーで約1時間半。日本海に浮かぶ小さな島が見えてきます。
粟島浦村です。
10月21日、港に島民が集まっていました。手にしていたのはスマートフォンです。

〈島民〉
「ここでお金を渡さなくても窓口がいらなくなるってことだよね」
「よく“PayPay”でさ、乗る時に前に払っていて“PayPay”でお願いしますって同じ感じなんだ」

この日、開かれていたのは「デジタル島開き」。
粟島浦村が進めるデジタル化を体験してもらおうと開かれました。

〈島民〉
「理解できないよ。私の頭では」
Q)“便利そう”というのはありました?
「便利になることは分かるんだけど理解するまでは時間がかかる」

人口325人の粟島浦村。
旬の魚を入れた器に焼いた石を落とす「わっぱ煮」が名物で主な産業は漁業と観光です。

島に大きな変化が訪れたのは去年。島内全域でWi-Fiが使えるようになりました。
これを機に島のデジタル化を進めようと様々な取り組みが始まります。

そのひとつが乗船手続きのデジタル化です。

これまで、粟島汽船に乗る際は乗船申し込み書をひとりひとり手書きで記入する必要があり、時間がかかっていました。しかし、事前に登録しておけばスマートフォンをかざすだけで手続きが完了します。また、切符も必要なくなり、乗船に関わる業務が大幅に削減されます。

〈島民〉
「(スマホは)電話をかけたり聞いてるだけの道具だから、今度粟島汽船でやるとなればやっぱり覚えておかないといけないものだから。それできょうここに来たんです。それで切符買うまでのことは全部できたのでよかったなと」

この日はスマートフォンの貸し出しも行われ、多くの島民がスタンプラリーなどを通してデジタル技術に触れていました。

〈スタンプラリーに参加〉
「初めてやったので楽しみだったからこういうのができて嬉しかったです」

島の様々なところで進むデジタル化。それは教育の現場でも進んでいます。

漁船に乗ってやってきたこちらの女性。漁師、ではなく教師です。

〈粟島浦小学校 岩崎未佳教諭〉
「(粟島の人は)お話をしてつながると“じゃあ漁に来るか”とかそういうつながりみたいなものはいいなと思いながら生活しています」

粟島小学校に赴任して2年目という岩崎教諭です。

島のデジタル化で教育現場にも変化を感じていました。

〈粟島浦小学校 岩崎未佳教諭〉
「一人一台タブレットで使って進めてはいるんですが、本土の方では(1人)1台のタブレットで持ち帰りをして課題とか宿題とかも全部紙媒体じゃなくてデジタル化が進んでいると思うんですけどここはようやく今年持ち帰りが始まって、ようやく進み出した感じがします」

さらに粟島の魅力を知ってもらおうとユニークな取り組みも。

それが「デジタル島民」です。

船を降りると目に飛び込んでくる大きな壁画。この壁画をデジタルアートにしてふるさと納税の返礼品にしました。

これを「島民証明書」とすることで日本中どこにいても「デジタル島民」になることができます。

10月11日に受け付けがスタートし、10月26日までに22人の「デジタル島民」が誕生しました。

こうした取り組みは中越地震の被災地、長岡市の旧山古志村でも行われています。

おととし、「デジタル村民」の住民票にもなるデジタルアート「Nishikigoi NFT」を発行すると全国で話題に。

いまでは実際の人口を超える約1000人以上がデジタル村民となっています。

中越地震の発生から19年を迎えた10月23日。追悼式典の準備が進む会場にデジタル村民の姿がありました。

〈デジタル村民〉
「きょうという日にここで一緒に過ごさせてもらうというのを目的に(震災で)何が起きたかは知っているけどやっぱり違いますよね、絶対。でも一緒に過ごすことによって何かを感じられるんじゃないかと思いますけど」

そして地震発生時刻の午後5時56分。

「黙とう…」

インターネット上の仮想空間、メタバースでも追悼式典の様子が中継され、多くの人が見守っていました。

デジタルを通して人と人とのつながりが広がっています。

「デジタル島民」の募集を始めた粟島浦村。脇川善行村長はデジタル島民とともに島を盛り上げていきたいと話します。

〈粟島浦村 脇川善行村長〉
「最終的な目標は人口減を食い止める。そのためにはいろんな人と交流をもったりしていろんな意見を聞いて粟島のいいところ、悪いところを伸ばすところは伸ばし、だめなところは改正して、どんどん移住者も増やすかたちでやっていかないと人口減が進んでいくので」

デジタル島開きが行われたこの日、島の体育館ではプロレスの大会が開かれました。

そこに登場した新潟プロレスの鈴木敬喜選手。デジタル島民のひとりです。

〈新潟プロレス 鈴木敬喜選手〉
「自分らが表に出る人間だからこそまず自分らが先にデジタル島民になって周りの人にデジタル島民のよさを伝えられるようにしたいなと思ってなりました」

実はこの試合の前、島民によってある投票が行われていました。

「卍固めだよ。はい」

粟島汽船の運航状況や災害の情報など島の様々な情報が届く、いわば回覧板のようなアプリ「しらせあい」。このアプリの投票機能を体験してもらおうと、今回、プロレスで見てみたい技の投票が行われました。

結果は…。

「第1位31票。卍固め。島民の方が見たいという技の第1位が卍固めでした」

今後はこうしたアプリの投票機能を使って島の取り組みについて意見を募る計画もあります。

進むデジタル化。

島で宿を営む本保和平さんはデジタル島民などを通じて粟島のことを知ってもらい、移住につながればと期待しています。

〈かねひら旅館 本保和平さん〉
「デジタル化で新たな層の方が来ていただいて少しでも島の魅力を感じていただいて住んでみようかなと考えていただけるとありがたいと思っている」

人口325人の粟島で進むデジタル化。今後、島にどのような変化をもたらすのでしょうか。

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