「自給自足」3人家族の日常に2年密着 自然の中で成長続けるひとり息子に“変化”も【バンキシャ!】
青森で電気や水道を契約せず独自の自給自足生活を行っている田村さん一家を「バンキシャ!」は2年間、密着取材。今回の主人公・ひとり息子のタイチくんは、自然の中で伸び伸びと育ってきましたが、来年から小学生となるのを前に少し変化が出てきたようです。
◇◇◇◇
「バンキシャ!」は、2年前から青森・南部町で独自の自給自足生活を送る“田村さんチ”に密着してきた。
――電気、ガス、水道は?
田村余一さん(46)
「契約してないですね」
――生活費はどれくらい必要?
田村ゆにさん(37)
「月に4万円くらい」
電気・ガス・水道は契約せず、太陽光発電や薪(まき)を使って生きている。
田村タイチくん(当時3)
「あ!何かやってる」
余一さん
「あれは交尾をしているんだよ。交尾して生まれた卵じゃないと、ヒヨコは生まれないんだよ」
タイチくん
「うわぁ、すごい仕組みだな」
家族3人で住む家は、材料費0円。もらってきた木材だけで7年かけてつくった。
――全くの手づくりですか?
余一さん
「そうですね。独学で」
◇◇◇◇
生活費の大部分は、余一さんが近所の“ご用聞き”をして賄っている。冬の間、余一さんには必ずやることがある。向かった先は、海辺の岩場。
余一さん
「海水をくむのは砂がなるべく入らないように磯がいい」
澄んだ海水を一度に30リットルくむと、それを一週間かけて煮詰めていく。
余一さん
「(冬は)薪ストーブをずっと焚(た)いているので、水分が蒸発する。そこから、だんだん塩が析出してくる」
冬に1年分の塩を作る。米から味噌(みそ)、納豆まで、できるものは何でも手作りするのが田村さんチ。
余一さん
「手間を考えると買った方が早いけど、作ってみて、それを自分で消費するというのをやっていくと、その喜びに勝るものがない」
(※昨年9月)
そんな田村さんチで伸び伸びと育っているのがタイチくん(当時5)。
タイチくん
「ねえねえ!走ってレースしない?」
自然に囲まれた日々の暮らしの中で、いろんなことを学んでいる。
――卵はすぐ食べられる?
タイチくん
「でもウンチがついてるから。生で食べると…」
――すぐに食べちゃだめなの?
タイチくん
「うん」
そのタイチくんも、もうすぐ6歳。少しずつ自立心が出てきたみたいだ。
タイチくん
「おでこを思い切りぶったたくよ」
余一さん
「たたくというのは自分だって痛いんだよ」
そこには、田村さんチならではの親子の向き合い方があった。
◇◇◇◇
■“自給自足”生活 田村さんチの子育て
ことし最初の取材は、まだ冬の寒さが残る3月。
タイチくん
「これストローで飲みたい。僕はストロー好き」
毎日恒例のおやつの時間に、タイチくんが竹でできたストローを使っていた。
タイチくん
「カカ(母)は、竹ストローを作るの上手だね」
――ゆにさんの発案なんですか?
ゆにさん
「そう…自分で試行錯誤して」
この竹ストローは、敷地内でとれた竹をユニさんが加工して作ったお手製のもの。
――今、ストローがなくなってきている。紙ストローなんです。
余一さん
「へー!」
世の中の動きには関係なく、自分たちの生き方を貫いている。ただし、自給自足といってもスマホやパソコンは活用し、SNSで発信もしている。目指すのは、環境に優しく、でも自分たちも無理をしないハイブリッドな自給自足生活だという。
余一さん
「火を使ってご飯を炊くとか、1万年前の人間がやっていたこと、今しかできないツールが混在しているので、昔に比べたら(自給自足が)すごい簡単」
――ゆにさんのTシャツには何て書いてある?
ゆにさん
「食糧生産は国防って書いてます。尊敬している農家さんの格言」
◇◇◇◇
(※ことし6月)
タイチくん
「ここら辺、切って」
6月、夏になると、タイチくんは自ら坊主頭になる。
タイチくん
「来て!」
タイチくんが見せたいものがあるという。
タイチくん
「ここにいるニワトリ、みんな。」
タイチくんのお気に入りは3か月前に生まれたニワトリのヒナ。この1年で2回、自然孵(ふ)化をしたという。ニワトリは最大で26羽まで増えた。
タイチくん
「産まれたばかりのときなんてめっちゃかわいいんだよ」
――名前はあるんですか?
余一さん
「名前はないですね。ウチはいずれは食べるので。あまり情がわかないように名前をつけない」
この生活をはじめて6年目。食べ物で困ることはほとんどなくなった。
余一さん
「食べきれない卵を“おすそ分け”すると、すごい喜んでくれますね。『卵の値段が高いでしょ』って言われて」
タイチくんが、何やらニワトリの近くで目を光らせていた。ヒナの多くはキツネなど野生動物に襲われて死んでしまうという。すると、4羽のヒナが敷地の外に出てしまった。それを追いかけていったタイチくんが傷だらけで戻ってきた。
――タイチくん、なんでケガしたの?
タイチくん
「猫がいたから追い払って…」
ゆにさん
「草むらとヤブを越えていった」
ヒナに近づいてきた野良猫を追い払ったのだという。
――猫もヒナを食べるのですか?
ゆにさん
「食べるというか、遊んで殺しちゃうんです。(タイチは)ヒナを守ってケガをしたんです」
◇◇◇◇
田村さんチの子育てにはルールがある。
――きょうは、ゆにさんが働く日?
ゆにさん
「そうです、きょうは畑仕事の日」
――余一さんは一日、タイチくんと遊ぶ日?
余一さん
「そういう日ですね」
育児は一日おきの交代制。その日は一日中タイチくんと過ごす。取材をしていて驚かされるほど、2人はタイチくんのために時間を使い続ける。
――ゆにさんは、子どもの遊びを止めないですね。ずっと付き合いますね。
ゆにさん
「そうですね、時間がくればですけど。自分自身が後悔しないため、こういう子育てを選んでいる」
田村さんチは、タイチくんが生まれた半年後に自給自足生活を始めた。幼稚園などは利用せず、生活の中で必要なことを伝えてきた。3歳のときに、飼っているニワトリの命をいただく、ということを教えた。“自分たちが食べるものは自分たちで作る”、タイチくんには、この暮らしを経験した上で自分らしい生き方を見つけてほしいという。
余一さん
「この自然で遊んで自然で育つというのは僕はすごい重要だと思っていて。(タイチは)一日中しゃべってるし、とにかく元気なんですよね」
――いつかタイチくんが『この生活を嫌だ』と言い出したら?
ゆにさん
「子どもってどちらかというと、当たり前にこういう環境で育っていたら違うものに憧れると思っているから、私はそうなると思っている。そう言うってことはこの暮らしに飽きてきた、慣れたっていうことだから(そのときは)ある意味、卒業するタイミング。そうなってくれたらうれしいですね」
◇◇◇◇
(※ことし3月)
そんなタイチくんももうすぐ6歳。親に反抗することもある。余一さんにインタビューをしていたときのこと。
タイチくん
「わー!ヤダ!ヤダ!ヤダ!。大人の話やめー!」
大人同士の話はつまらないからやめてほしいと余一さんに食ってかかる。
タイチくん
「次に僕がやめてと言ってもお話をやめなかったら、おでこを思い切りぶったたくよ」
余一さん
「そうなの?なんでそうなるの?それは誰が決めたの?」
こういうとき、田村さんチでは時間をかけてじっくり話し合いをする。
余一さん
「別にタイチを仲間外れにしているわけじゃないんだよ。君だけが全部のルールを決めるの?どうなの?ちょっと考えている?今」
(タイチくんが余一さんをたたくと…)
余一さん
「うわー、やられたー!今、手も痛かったんじゃない?たたいたら。たたくっていうのは自分だって痛いんだよ」
どんなにささいなことにも、親子できちんと向き合ってきた。タイチくんの言い分も聞いてみた。
――トト(父)は面白い?怖い?
タイチくん
「たまに怖いときある。僕はたまに暴力をふるったりするから、そのときに怒って…」
――なんで暴力をしたの?
タイチくん
「そういうことをしないと、僕の気持ちをわかってくれないんじゃないかと思って…」
来年から近くの公立小学校に通うというタイチくんが、「僕にもインタビューをしてほしい」と言ってきた。
タイチくん
「タイチと申します。本名は田村泰地です」
――小学校に行くのは楽しみですか?
タイチくん
「楽しみではない。行きたくないから」
――なんで行きたくない?
タイチくん
「まだカカとトトと離れたくないからかな。学校に行ってるときは離れているから」
◇◇◇◇
6月のある日、一日中農作業をしている余一さんのために、タイチくんが夕飯にサラダを作ることを考えた。
タイチくん
「ここにカイバミあったよ! これもキンギョソウの種類?」
ゆにさん
「うん」
庭に生えている食べられる植物はほとんど把握していて、5歳になってからは包丁も使っている。自家製のしょうゆと柿酢を使ってドレッシングを作ることも。
タイチくん
「塩がちょっと足りないね」
自給自足の食卓。これが5歳のタイチくんの日常だ。
タイチくん
「いっただきまーす!」
「僕のサラダおいしい?」
余一さん
「うん!おいしいよ!」
タイチくん
「僕が作ったんだよ」
余一さん
「レタスめっちゃうまい」
タイチくん
「食べられる花も入れておいたからね」
ゆにさん
「ありがとう、タイチ」
田村さんチには、きょうもゆったりとした時間が流れている。
(※10月6日放送『真相報道バンキシャ!』より)
◇◇◇◇
「バンキシャ!」は、2年前から青森・南部町で独自の自給自足生活を送る“田村さんチ”に密着してきた。
――電気、ガス、水道は?
田村余一さん(46)
「契約してないですね」
――生活費はどれくらい必要?
田村ゆにさん(37)
「月に4万円くらい」
電気・ガス・水道は契約せず、太陽光発電や薪(まき)を使って生きている。
田村タイチくん(当時3)
「あ!何かやってる」
余一さん
「あれは交尾をしているんだよ。交尾して生まれた卵じゃないと、ヒヨコは生まれないんだよ」
タイチくん
「うわぁ、すごい仕組みだな」
家族3人で住む家は、材料費0円。もらってきた木材だけで7年かけてつくった。
――全くの手づくりですか?
余一さん
「そうですね。独学で」
◇◇◇◇
生活費の大部分は、余一さんが近所の“ご用聞き”をして賄っている。冬の間、余一さんには必ずやることがある。向かった先は、海辺の岩場。
余一さん
「海水をくむのは砂がなるべく入らないように磯がいい」
澄んだ海水を一度に30リットルくむと、それを一週間かけて煮詰めていく。
余一さん
「(冬は)薪ストーブをずっと焚(た)いているので、水分が蒸発する。そこから、だんだん塩が析出してくる」
冬に1年分の塩を作る。米から味噌(みそ)、納豆まで、できるものは何でも手作りするのが田村さんチ。
余一さん
「手間を考えると買った方が早いけど、作ってみて、それを自分で消費するというのをやっていくと、その喜びに勝るものがない」
(※昨年9月)
そんな田村さんチで伸び伸びと育っているのがタイチくん(当時5)。
タイチくん
「ねえねえ!走ってレースしない?」
自然に囲まれた日々の暮らしの中で、いろんなことを学んでいる。
――卵はすぐ食べられる?
タイチくん
「でもウンチがついてるから。生で食べると…」
――すぐに食べちゃだめなの?
タイチくん
「うん」
そのタイチくんも、もうすぐ6歳。少しずつ自立心が出てきたみたいだ。
タイチくん
「おでこを思い切りぶったたくよ」
余一さん
「たたくというのは自分だって痛いんだよ」
そこには、田村さんチならではの親子の向き合い方があった。
◇◇◇◇
■“自給自足”生活 田村さんチの子育て
ことし最初の取材は、まだ冬の寒さが残る3月。
タイチくん
「これストローで飲みたい。僕はストロー好き」
毎日恒例のおやつの時間に、タイチくんが竹でできたストローを使っていた。
タイチくん
「カカ(母)は、竹ストローを作るの上手だね」
――ゆにさんの発案なんですか?
ゆにさん
「そう…自分で試行錯誤して」
この竹ストローは、敷地内でとれた竹をユニさんが加工して作ったお手製のもの。
――今、ストローがなくなってきている。紙ストローなんです。
余一さん
「へー!」
世の中の動きには関係なく、自分たちの生き方を貫いている。ただし、自給自足といってもスマホやパソコンは活用し、SNSで発信もしている。目指すのは、環境に優しく、でも自分たちも無理をしないハイブリッドな自給自足生活だという。
余一さん
「火を使ってご飯を炊くとか、1万年前の人間がやっていたこと、今しかできないツールが混在しているので、昔に比べたら(自給自足が)すごい簡単」
――ゆにさんのTシャツには何て書いてある?
ゆにさん
「食糧生産は国防って書いてます。尊敬している農家さんの格言」
◇◇◇◇
(※ことし6月)
タイチくん
「ここら辺、切って」
6月、夏になると、タイチくんは自ら坊主頭になる。
タイチくん
「来て!」
タイチくんが見せたいものがあるという。
タイチくん
「ここにいるニワトリ、みんな。」
タイチくんのお気に入りは3か月前に生まれたニワトリのヒナ。この1年で2回、自然孵(ふ)化をしたという。ニワトリは最大で26羽まで増えた。
タイチくん
「産まれたばかりのときなんてめっちゃかわいいんだよ」
――名前はあるんですか?
余一さん
「名前はないですね。ウチはいずれは食べるので。あまり情がわかないように名前をつけない」
この生活をはじめて6年目。食べ物で困ることはほとんどなくなった。
余一さん
「食べきれない卵を“おすそ分け”すると、すごい喜んでくれますね。『卵の値段が高いでしょ』って言われて」
タイチくんが、何やらニワトリの近くで目を光らせていた。ヒナの多くはキツネなど野生動物に襲われて死んでしまうという。すると、4羽のヒナが敷地の外に出てしまった。それを追いかけていったタイチくんが傷だらけで戻ってきた。
――タイチくん、なんでケガしたの?
タイチくん
「猫がいたから追い払って…」
ゆにさん
「草むらとヤブを越えていった」
ヒナに近づいてきた野良猫を追い払ったのだという。
――猫もヒナを食べるのですか?
ゆにさん
「食べるというか、遊んで殺しちゃうんです。(タイチは)ヒナを守ってケガをしたんです」
◇◇◇◇
田村さんチの子育てにはルールがある。
――きょうは、ゆにさんが働く日?
ゆにさん
「そうです、きょうは畑仕事の日」
――余一さんは一日、タイチくんと遊ぶ日?
余一さん
「そういう日ですね」
育児は一日おきの交代制。その日は一日中タイチくんと過ごす。取材をしていて驚かされるほど、2人はタイチくんのために時間を使い続ける。
――ゆにさんは、子どもの遊びを止めないですね。ずっと付き合いますね。
ゆにさん
「そうですね、時間がくればですけど。自分自身が後悔しないため、こういう子育てを選んでいる」
田村さんチは、タイチくんが生まれた半年後に自給自足生活を始めた。幼稚園などは利用せず、生活の中で必要なことを伝えてきた。3歳のときに、飼っているニワトリの命をいただく、ということを教えた。“自分たちが食べるものは自分たちで作る”、タイチくんには、この暮らしを経験した上で自分らしい生き方を見つけてほしいという。
余一さん
「この自然で遊んで自然で育つというのは僕はすごい重要だと思っていて。(タイチは)一日中しゃべってるし、とにかく元気なんですよね」
――いつかタイチくんが『この生活を嫌だ』と言い出したら?
ゆにさん
「子どもってどちらかというと、当たり前にこういう環境で育っていたら違うものに憧れると思っているから、私はそうなると思っている。そう言うってことはこの暮らしに飽きてきた、慣れたっていうことだから(そのときは)ある意味、卒業するタイミング。そうなってくれたらうれしいですね」
◇◇◇◇
(※ことし3月)
そんなタイチくんももうすぐ6歳。親に反抗することもある。余一さんにインタビューをしていたときのこと。
タイチくん
「わー!ヤダ!ヤダ!ヤダ!。大人の話やめー!」
大人同士の話はつまらないからやめてほしいと余一さんに食ってかかる。
タイチくん
「次に僕がやめてと言ってもお話をやめなかったら、おでこを思い切りぶったたくよ」
余一さん
「そうなの?なんでそうなるの?それは誰が決めたの?」
こういうとき、田村さんチでは時間をかけてじっくり話し合いをする。
余一さん
「別にタイチを仲間外れにしているわけじゃないんだよ。君だけが全部のルールを決めるの?どうなの?ちょっと考えている?今」
(タイチくんが余一さんをたたくと…)
余一さん
「うわー、やられたー!今、手も痛かったんじゃない?たたいたら。たたくっていうのは自分だって痛いんだよ」
どんなにささいなことにも、親子できちんと向き合ってきた。タイチくんの言い分も聞いてみた。
――トト(父)は面白い?怖い?
タイチくん
「たまに怖いときある。僕はたまに暴力をふるったりするから、そのときに怒って…」
――なんで暴力をしたの?
タイチくん
「そういうことをしないと、僕の気持ちをわかってくれないんじゃないかと思って…」
来年から近くの公立小学校に通うというタイチくんが、「僕にもインタビューをしてほしい」と言ってきた。
タイチくん
「タイチと申します。本名は田村泰地です」
――小学校に行くのは楽しみですか?
タイチくん
「楽しみではない。行きたくないから」
――なんで行きたくない?
タイチくん
「まだカカとトトと離れたくないからかな。学校に行ってるときは離れているから」
◇◇◇◇
6月のある日、一日中農作業をしている余一さんのために、タイチくんが夕飯にサラダを作ることを考えた。
タイチくん
「ここにカイバミあったよ! これもキンギョソウの種類?」
ゆにさん
「うん」
庭に生えている食べられる植物はほとんど把握していて、5歳になってからは包丁も使っている。自家製のしょうゆと柿酢を使ってドレッシングを作ることも。
タイチくん
「塩がちょっと足りないね」
自給自足の食卓。これが5歳のタイチくんの日常だ。
タイチくん
「いっただきまーす!」
「僕のサラダおいしい?」
余一さん
「うん!おいしいよ!」
タイチくん
「僕が作ったんだよ」
余一さん
「レタスめっちゃうまい」
タイチくん
「食べられる花も入れておいたからね」
ゆにさん
「ありがとう、タイチ」
田村さんチには、きょうもゆったりとした時間が流れている。
(※10月6日放送『真相報道バンキシャ!』より)
最終更新日:2024年10月8日 11:29