【特集】寺の一人娘「憧れの宝塚か、住職か」葛藤から13年…かつての少女が選んだ道は?

13年前、ワイドニュースでは将来、宝塚を夢見ていた小学6年生の女の子を取材しました。歴史ある寺の住職の一人娘である彼女は当時、自らの夢へと進むのか、それとも寺を継ぐのかで葛藤していました。時が経ち、かつての少女は今、どのような人生を送っているのか再び取材しました。
甲州市塩山上萩原で400年の歴史を持つ曹洞宗の古刹・岩昌寺。2012年6月、この寺で得度式が行われていました。
得度式は僧侶を目指す人が10歳を超えると受ける、仏門の修行に入るための儀式のこと。
受けていたのは寺の1人娘、関口心理さん(当時12)です。
関口心里さん(当時12)
「間違えたりしないかな」
母・里香さん
「間違えたってそれはね、一生懸命やれば大丈夫」
地域の人が見守る中、心理さんの得度式は無事に終わりました。
この時、心理さんは12歳の小学6年生。実は心理さんには夢があり、本当に寺を継ぐのかは本人も、そして両親にも分からないことでした。
関口心理さん(当時12)
「(将来の夢は)びっくりすると思うんですけど、宝塚です。(Q.お父さんには話した?)お父さんはいいと言ってるんですけど、どういうタイミングで入ればいいのか」
父・石昌 住職
「できればこの寺を継いでほしいというのが本音ですが、先のことは全くわかりません。本人の意思に任せるしかございませんので」
あれから13年。25歳になった心理さんは今、どうしているのか。
再び、岩昌寺を訪ねると…
関口心理さん(25)
「副住職として、資格を取らせていただきました」
父の跡を継ぐ道を選んだ心理さん。去年11月に剃髪し、寺の副住職として修行の日々を送っていました。
どんな思いで父の背中を追ったのか、そして憧れの宝塚はどうなったのか尋ねました。
関口心理さん(25)
「両親に頭を下げてクラシックバレエと声楽を習わせていただいて、本当に日々、ストイックな毎日を送っていたんですけれども。(宝塚への)受検は2回させていただいて、結果としてはダメだった」
関口心理さん(25)
「くやしくてもう涙しか出なかったんですけれども、本当にやりきったなというのが一番で。そこからは次のステージに行かないといけないなと」
関口心理さん(25)
「少しずつでも自分のできる形で恩返しができたらなというのを一番(感じていた)」
岩昌寺の周りには以前、20以上の寺があり、地域コミュニティの中心として様々な役割を担ってきました。しかし、深刻な後継者不足を背景に現在は4つにまで減りました。
それでも、心理さんが住職になることを選んだのは、修行の中で出会った志を同じくする大勢の仲間に刺激を受けたからだと言います。
そして、最後に心理さんの背中を押したのは、父・石昌住職の言葉でした。
関口心理さん(25)
「『法要も舞台だと思え』『一つの舞台だ』という(父の言葉が)、人に届けるというところは一緒なんだなというのを感じました」
父・石昌 住職
「よく頑張ってきたと思いますね、自分なりに一生懸命こなしてきたなと。親から見てもよく努力してるなというふうに関心しておりました」
全力で夢を追いかけた日々を経て、仏門に入ることを決めた心理さん。その経験を大切にしながら、地域で親しまれる寺にしていってほしいと父・石昌住職は願っています。
父・石昌 住職
「(住職として)これから覚えることは本当に山ほどあるんですよね。限りなくあるんですけど、ただ一つ言えることは自分のカラーで一歩一歩、精一杯生きていく。決してあせらずにあわてずに一歩一歩進んでいっていただきたい、それが願いです」
関口心理さん(25)
「私も本当に悩んだ時期、本当に苦しかった時期があるので。それと同じ思いをしている人たちに少しでも寄り添いたいと思っているので、さまざまな人たちに立ち寄っていただけるようなお寺づくりを、自分のカラーでしていきたいなと思います」
宝塚を夢見たかつての少女は今、自らが信じる新たな道を一歩ずつ、歩き始めています。