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震災14年 “助け合い”中華そば「311円」に込めた思い 藤井貴彦キャスターが岩手・宮古市のラーメン店を取材

2025年3月12日 6:33
震災14年 “助け合い”中華そば「311円」に込めた思い 藤井貴彦キャスターが岩手・宮古市のラーメン店を取材
東日本大震災から3月11日で14年。「news zero」の藤井貴彦キャスターが、被災地で夫婦と娘が営む岩手県宮古市のラーメン店を取材しました。

(※動画の中で一部、津波の映像が流れます。ストレスを感じる方は視聴をお控えください)

   ◇

先週、訪ねたのは…

藤井キャスター
「野菜たっぷりタンメンの店と書かれています。中に入ってみましょう。いい香りがしています」

岩手県宮古市のラーメン店。東日本大震災で被災した大久保久枝さん(58)は、夫の秀司さん(57)、娘のわかなさん(28)と共に店を営んでいます。

藤井キャスター
「こちらに大船渡山林火災募金箱とありますけども…」

大久保久枝さん
「このたび(大船渡)の火災がすごく大きかったので、当初は能登半島地震の被災地への募金箱の設置だけだったんですけれども、急きょつくりました」

藤井キャスター
「大船渡と能登半島ということで、2つの募金箱が並んでいるところですね」

さらに募金だけではなく、普段は800円で提供している中華そばを、3月11日に限り、1杯311円に。その売り上げを、去年に続き能登半島地震の被災地のために寄付するといいます。

藤井キャスター
「被災者としての経験があったからこそ、こういった募金箱を置こうと思ったのでしょうか」

久枝さん
「そうですね。たくさん助けられましたので。能登半島や大船渡で被災した方に届くのであれば、再建に使っていただけるので」

   ◇

14年前、久枝さんたちが暮らしていたのは、津波で甚大な被害が出た宮古市田老(たろう)地区です。

藤井キャスター
「実際に自宅があったのはこのあたりですか?」

久枝さん
「そうですね。ここにアパート兼テナントがあって(当時)2階にいました」

大きな揺れがおさまると避難したのは、歩いて5分ほどの高台にある、田老駅のホームです。

娘・わかなさん
「私はみんなをせかしていました」

藤井キャスター
「中学生のわかなさんが、早く避難しようとせかした?」

娘・わかなさん
「気持ちは焦っていましたね」

そして“やっとの思い”で駅のホームへ。その約15分後、津波が街に押し寄せました。田老地区を襲ったのは、17メートルを超える津波。当時、高さ10メートルあった防潮堤をはるかに越え、181人が犠牲に。

久枝さん
「すごい速さでした。一瞬にして屋根がどんどん目の前を流れていって」

久枝さんは、この地区に住んでいた父と弟を亡くしました。

震災当日の夜、久枝さんたちは近くの高校へ避難。店には大きな被害はなかったものの、当初、店をやめることしか考えられなかったといいます。ただ、気持ちに変化があったのは避難所での“ある男性の言葉”がきっかけでした。

久枝さん
「ある男性が『ああラーメンが食べたい』と言ったのを聞いて。(その)言葉が耳に残って、ラーメン食べてもらえたらどんなにうれしいだろうって、その一心で始めて。その後、知人の協力もあって炊き出しができまして、深々と頭を下げて『どうもありがとうね、おいしかったよ』って言われたときに、早くお店を開けなきゃって気持ちに初めてなったんです」

震災後、全国から様々な支援を受けたからこそ、3月11日のこの日に“赤字覚悟”で中華そばを提供し、寄付を続ける久枝さん。その味は…。

藤井キャスター
「ん~おいしい。麺がおいしい! ぐっとかみしめると小麦の香りがふわっと広がって、それとともにスープがまたおいしいから、体の中にふっと入ってくる感じ」「完食しました」

そして3月11日のきょう…。店には、続々と客が。

「311円中華そば」を注文した客
「すごくおいしかったです。これが募金(寄付)になるからうれしいなって」

「311円中華そば」を注文した客
「被災した立場としてこういう(被災地を)応援する企画は共感できるので、一緒に応援したい」

この企画に143人が来店し、寄付する人も多く見られました。

藤井キャスター
「全国で災害が多発していますが、被災された皆さんにどんな思いでいらっしゃるか教えてもらえませんか」

久枝さん
「(私たちも)この先どうなるか、暗い気持ちしか最初はなかった。日を追うごとに、いろんな方の助けや、自分の気づきがあった。なくなったものは戻ってきませんけど、また新しくつくり直すことはできます。命があって人を思う気持ちがあれば、今はつらいでしょうけれど、必ず光はさすとお伝えできればと思います」

藤井キャスター
「今回取材し、被災地は街並みの多くが整備され、東日本大震災から14年という年月の経過を改めて感じます」

「VTRでお伝えしたラーメン店の久枝さんは、赤字覚悟で311円の中華そばを提供し、売り上げを寄付する理由について、『単なる語呂合わせじゃなく3月11日を忘れずに胸に刻んでいきたいという思いが一番』と話していました。葵さんは、いかがですか」

葵わかなさん(俳優・『news zero』火曜パートナー)
「私には、岩手出身の20代の知人がいるのですが、ネットで『3.11』と検索することで寄付が出来るシステムをSNSにあげて共有し合っていると聞きました。忘れないでいたいという思い、忘れられないというのもあると思いますが、若い世代にもこの日を大切に、記憶に残していこうという思いがシェアされていると感じます」

(3月11日放送『news zero』より)

最終更新日:2025年3月12日 6:33