【特集】宮大工が新感性のクラフト 岩手・軽米町
特集です。新しい感性で様々ことに取り組む人たちを紹介するシリーズ、4回目は、宮大工職人として働きながら、レーザー加工機を使って繊細なクラフトを作る軽米町の男性を取材しました。
木の板にレーザーを照射し非常に細かい抽象的な連続模様や彫刻を施すと。完成したのはオシャレで魅力的なコースター。計算し尽くされたデザインと、繊細な模様が特徴のクラフトです。
県北・軽米町の小軽米地区。ここで、オシャレなクラフトを作っているのが、tumiki club(ツミキクラブ)の安藤 賢(まさる)さんです。本業は、なんと!宮大工。神社や仏閣の建築、修復などに携わっているんです。
tumiki club 安藤 賢さん
「やっぱり曲線のついた材料って本当に多いので、あと単純に一方向に対して反っているだけじゃなくて、二方向にねじれながらだとか、すごく立体的な形の材料を削り出していったり」
宮大工は、伝統技法を使い、精巧な建築物を作るため、細かい作業が要求され、高い専門知識とスキル、さらに体力や集中力も必要です。復元整備などの事業にも携わりました。志波城古代公園の門や櫓は、当時の技術にならって復元したそうです。
安藤さん
「ボコボコなってるのが、その〝やりがんな〟仕上げ」
これが「やりがんな」という当時の「かんな」です。
安藤さん
「この志波城の建物は、やりがんなって言う刃物で表面を削って仕上げたであろうということで、表面が全部やりがんな仕上げになっています」
そんな安藤さんは元々CGが得意でした。そこで、新しいことに挑戦しようと始めたのが、最新のレーザー加工機を使ったクラフト作りです。(何を形にしたかというと…)
安藤さん
「日本の伝統文様。麻の葉とか、青海波とか、七宝とか、もっといっぱいいっぱいあるんですけど、伝統文様ってすごい繰り返しの模様なんで、面白いんですよね。」
安藤さんがベースに選んだのは麻の葉文様。
安藤さん
「色々な形の麻の葉があるんですけれども、どうゆう風にアレンジしてもまとまりがよく収まってくれて」
使う木材は、自分の山から切り出したサクラの木。自分で板を作り、乾燥させて使っています。手作りとは真逆とも言えるレーザー加工機でのものづくりですが、非常に繊細かつ精巧なデザインが可能で、スタイリッシュな作品が出来上がります。
麻の葉文様をモチーフにしたもの以外にも、様々なデザインを施した数々のコースター。バリエーションは50種類を超えるそうです。素材が非常に軽いので、ピアスなどのアクセサリーにもぴったりです。ブローチやペンダント、キーホルダー…さらに髪飾りやかんざしなどもあります、
そして非売品として、こんなものも作ったことがあります。見たことありませんか?
そう、中尊寺金色堂にかけられていた金銅華鬘(こんどうけまん)を模した作品です。安藤さんは、中尊寺光勝院の建設にも携わったことがあり、建物が完成した時の記念品として作ったものなんです。そっくりですよね。
いまは新しい作品づくりに取り掛かっています。試作しているのはパネルを組み合わせた照明器具。伝統文様から漏れてくる明かりが、どことなく温もりと優しさを感じさせてくれます。
この日 安藤さんは、新しい素材を手に入れるため二戸に向かいました。
安藤さん
「二戸の小西美術さんに漆の木を譲ってもらいに行きます」
小西美術工藝社は、文化財修理を手がける企業で、中尊寺金色堂や日光東照宮などの修理にも携わってきました。二戸工房は、漆の苗木生産から管理、漆掻きまで自社で行い、持続可能な漆生産を行なっています。
取締役副社長漆生産部門 総責任者 福田達胤さん
「(掻き終わった)漆の木って建築材にしては弱い強度だし、薪材くらいしか使い道がなかったのがすごくもったいないと思っていたので、こういった風に活用していただけると資源が循環するし、無駄なく使えるじゃないかなと思ってます。ありがたいと思ってます」♪安「金色ですね、これは」
漆の木は、柔らかく強度はないものの、優しい手触りで、色はなんときれいな黄色でした。その木目を生かした作品づくりに取り掛かります。
安藤さん
「ちょっと蛍光の黄色ですけど、色が落ち着いて本当の金色的に見えて、上品な感じがしますね」
漆の木の個性を生かした試作品。地元の特産品にもなりそうな出来栄えです。
安藤さん
「自分が好きなデザイン、美しいと思うデザインを、もっと作って、それを作ったものを誰かに見てもらったり、評価してもらったり、共感してもらえたらと思ってます」
伝統を大切にしながら、新しい感性の作品を生み出す安藤さん。匠の技と最新技術を生かした挑戦が続きます。
安藤さんは、主にイベントで作品を販売していて、県内では10月に花巻で行われる「土澤アートクラフトフェア」に出店するそうです。
作品を購入したいという方は、電話080-5578-6775 、またはショートメールに直接連絡してみてください。