【特集】不登校からの再スタート 杜陵高校通信制の生徒が全国大会で生活体験発表へ
特集です。岩手県立杜陵高校通信制3年の水野花梨さんが、全国の定時制・通信制の生徒が生活体験を発表する大会に岩手県代表として出場します。中学校での不登校を経て、いまは生徒会やボランティアに積極的に取り組む水野さんが、全国に何を伝えたいのか、思いを取材しました。
体験の朗読 「中学生の頃の私は、人とのコミュニケーションを取ることが苦手で、まわりの視線がとても気になり、クラスにもうまく馴染めず、学校に行こうとするとお腹が痛くなり、学校に行けないことが多くなっていた」
宮沢賢治の妹トシのことばを交えた体験発表。水野花梨さん17歳は、不登校の辛い経験を経て、「誰かの役に立ちたい」と考えるようになった経緯と思いをスピーチに込めました。
水野花梨さん(17)
「人と話すことが今は楽しいと思っている。前はあまり得意じゃなかったが、すごく楽しい。(杜陵高校)入学前は考えられなかった。こうして人と話せるというのは」
盛岡市にある県立杜陵高校。通信制3年の水野さんは、普段、自宅で勉強し、週1回スクーリングの日に通学。他の生徒と一緒に数学などの授業を受けています。
コミュニケーションが苦手で、中学校のときは朝になるとお腹が痛くなるようになり、学校に通えなくなりました。
水野さん
「なぜ学校に行けないのか、なぜ(話す時に)緊張してしまうのかとか思い、不安だった」「2~3時間学校に行ってそのまま早退とか、途中から行ったりすることが多かった」
「転機」になったのは、杜陵高校通信制への進学でした。日々のコミュニケーションを心配することなく勉強できるようになり、気持ちが前向きになりました。
オートバイの免許を取り、ツーリングを楽しむのが趣味。将来のためIT関係の資格も取得しました。ボランティア活動にも熱心に取り組み、人と話すことにも抵抗がなくなりました。様々なことに積極的に挑戦しています。
水野さん
「(バイクは)風をバーッて浴びる感じが一番楽しいというか心地いい」
食べることが好きで、特技は料理。
「最後に食べられるというのが一番うれしいというか楽しい」
母親の洋子さんは、娘をあたたかく見守ってきましたが、不登校になったとき、娘が一人悩んでいたと、今回の体験発表で初めて知りました。
母親の洋子さん(48)
「(発表内容を見て)その時に、お腹が痛い原因が初めて分かったので、『えっ』と思い、辛かったのかなというのがその時分かった」「(全国大会では)今まで自分が経験してきた心の痛みとか喜びとか、様々な人の支えによって今あるということを、ぶつけてきてほしい」
水野さん
「(全国大会では)『私は変わったんだよ』と、過去の自分に言えるような感じで、難しいが、そんな感じで言えたらと思う」
水野さんは、杜陵高校で通信制の生徒会長を務めています。
「このお湯入れてポットを温めて」
この日は、水野さんたち生徒会が中心になって取り組んでいる、校内カフェの開催日。
「とりょんカフェで~す」
会議のため訪れた他の学校の先生たちに、メンバーと協力しながらコーヒーを提供しました。
高校3年間で学んだのは「誰かの役に立つこと」の楽しさ。
カフェのマニュアルも、自分が卒業した後、後輩たちに使ってほしいと考え、水野さんが自分で作りました。
通信制副会長 小保内康佑さん(19)
「僕がやってもいいと思うことも、走っていってやってくれたり、すごく頼りになる」
水野さん
「(コーヒーは)おいしいと言ってもらっている」「とても楽しい、皆で取り組んでいて」
この日、水野さんは、全国大会で発表する内容を集まった人たちの前で披露。緊張で声がかすれましたが、堂々と話しました。
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ことし8月、東北地区の定時制・通信制の生徒が杜陵高校に集まって交流するイベントが開かれ、水野さんは「MVP」に選ばれました。これからも「誰かの役に立ちたい」気持ちを原動力にして、卒業後は通信制の大学に進学し、IT系の仕事をしたいと夢を膨らませています。
11月17日に東京の六本木ヒルズで開かれる生活体験発表の全国大会。スピーチの最後は、こう宣言して締めくくるつもりです。
「強いボランティア精神を胸に秘め、未来への歩みを止めない」
水野さん
「誰かの共感を得られるというか、誰かの心に響くようなスピーチが出来たらいいなと思っている」
昨年度の小中学校の不登校の児童生徒の数は、全国でおよそ34万人と、前の年より15%増加しました。水野さんの声が誰かの心に届くといいですね。