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【赤裸々に語る】『全てを彼から学んだ』元検事正からの性加害訴える女性検事が激白「何度も殺された」 検察トップの犯行は「検察組織の土壌が作り上げたもの」「私は検事の仕事をしたいだけなのに…」(単独インタビュー全文掲載=後編=)

2025年1月6日 8:00
【赤裸々に語る】『全てを彼から学んだ』元検事正からの性加害訴える女性検事が激白「何度も殺された」 検察トップの犯行は「検察組織の土壌が作り上げたもの」「私は検事の仕事をしたいだけなのに…」(単独インタビュー全文掲載=後編=)
取材に応じる女性検事

 大阪地検の元検事正が、酒に酔った部下の女性検事に性的暴行を加えた罪に問われている裁判。女性検事が読売テレビの単独インタビュー取材に応じました。“検事のイロハ”を教えてくれたという元検事正と対峙する心境、謝罪から一転して無罪主張に転じた被告、検察庁に対する率直な思い…約2時間にわたるインタビューで女性検事が語った言葉を、2回にわたって、全文で掲載します。(取材・報告:丸井雄生・田淵菊子)

■被告が一転「同意があったと思っていた」 女性検事「言うことが難しい状況でされた性行為=性犯罪」

 大阪地検のトップを務め、法曹界で“関西検察のエース”とも呼ばれた北川健太郎被告(65)は、検事正在任中だった2018年9月、大阪市内にある官舎で、酒に酔って抵抗が難しい状態だった女性検事に対して性的暴行を加えた罪に問われ、2024年10月の初公判で「公訴事実を認め、争うことはしない」として謝罪しましたが、12月になって一転、「同意があったと思っていた」などとして、無罪を主張する方針を弁護人が明らかにしました。このため、次回の裁判期日は未定のままとなっています。

Q(記者) 被告の「同意があったと思っていた」という主張に対し、「同意はなかった行為だ」と主張されているが。

A(女性検事) 私個人はもちろんそう思ってるし、まず被害者側に同意がないかどうかについては、私は同意をしていないので同意がなかった、この被告人に私が同意していたと思っていたと言えるのかどうかというところが、今回のポイントだと思うのですが、法改正されて、同意をする、同意をしないという気持ちとか発想を持つことすら難しい状態でされた性行為というのが性犯罪だと定義されましたし、同意をしないという発想は持てたけれど、それを表に出すこと、言うことが難しい状態でされた性行為が性犯罪というふうに定義付けられました。

 それは何かといったら、要は性行為はすごくプライバシーの高い行為で、男女間でお互いに性行為に同意するという明示の意思表示があって行われるべきことで、だけど性犯罪は明示の同意というのがないわけじゃないですか。明示の同意をできない状態でされていることが多いので、そうすると被害者側にとってみたら、同意をしていないよという気持ちすら、発想すら持てないような状態でなされた行為は、加害者側から見たら、同意しない意思を示してないではないかと。

 だから、(加害者側が)同意があったと勘違いしたというふうにつけこんでいくわけなのですが、そうではなくて、同意しない意思を示したりできない関係性で至る経緯で、その犯行状況とか、場所とか時間帯とか、置かれた被害を受けている状況などに照らすと、それは同意しない意思を明らかにするのは難しいよねと、あなたもわかるでしょうということさえ言えれば、その加害者側の内心に故意はあったと言える。だから、事実関係さえ認識していればいいとされている。

 私のことを例に出すとあまり適切でないかもしれないですが、例えば、すごく圧倒的な社会的関係の差、上下の関係の差があって、その2人の間に個人的な男女の関係がなかったと。そうすると、その関係性だけで、いきなり性行為が始まったりしたら、同意しない、同意していませんということを言うことすら難しいのは、それはあなたもわかるでしょうという話で。

■「被告は自己保身の塊」「同意していたといえる具体的な事実は何一つない」

A この関係性さえ認識していれば、その故意があると言っていく一つの要素にもなるだろうし、あと性行為に至るまでの経緯の中で、例えば、そういう関係性にあっても、加害者側から、実はとても好きだと、好きだし、そういう関係を匂わすような、すごく僕はあなたのことが個人的に大好きなのだということを言ったりなどしているのであれば、単に食事をしてるだけとか、単に会っただけとか、それだったら性行為が前提となってないじゃないですか。

 それなのにいきなり性行為をされたら、びっくりして抵抗する、同意をしてないということを言いにくくなる。例えば、複数人から性行為されることを、おそらく一般的な常識的に考えたら、同意をしない意思をなかなか示すことは難しい。そういう事実となると思います。

 ケースバイケースですが、そういう一個一個の事実を認識していれば、行為は認定できるので、そう考えていったときに、北川被告が私との性行為を、私が同意していたと思っていたと言えるような、具体的な事実は何一つないと思っています、私は証拠関係を見たところ。

 だから、同意があったと思っていたという主張は、その主張をし始めた時から、全く合理的な根拠がないからおかしいじゃないですかということを、北川被告に対しても、直接私は何度も言っています。何度もメールでも、彼が捕まった後も内容証明を送って、賠償金をつき返す時に、同意があったと思っていたという主張はおかしいでしょということを文章に書いて送りつけていますから。

 それを分かった上で、今もなおこれを主張しているのが、本当に自己保身の塊で、被害者の気持ち、私の気持ちを1ミリも考えていないというのが、明らかです。なので、本当に残念な人だと思います。

■男性同士なら“レイプ”と思われる…「なぜ女性だけ自宅に行くと仕方ないという風潮になるのか」

Q 日本社会の中でよく言われるような「男の人とお酒を飲んだから、そういう性的行為に至ることも合意の上だった」とか「男の人の家に行ったから、性行為をしてもいいという同意のサインだった」というようなことを社会通念上言われることがある。

A 私はそういう時にいつも思うのは、例えば、男性同士でお酒を飲むとして、男性同士がお酒を飲んですごく酔っ払うとする。でも、一方の男性は、もう一方の男性に対して性的な関係を持ちたいと思っていたが、それはおくびにも出さず、被害者側の男性は単にお酒を一緒に飲んでただけだった。それで、どこかに連れ込まれてレイプされた場合に、その男性がいっぱいお酒を飲んでいたからレイプされてもいいとみんな思いますかと、思うんですよ。

 なぜ女性だけが、そのお酒をいっぱい飲んでいたからレイプされても仕方がないよねという風潮になるのかが理解できないし、家に行くというのも、自宅に行くことは自宅に行くという事実なのであって、そこはいろいろな目的があって自宅に行くわけだから、自宅に行く=性行為を許容しているなんて、もう明らかに、非常識な発想です。

 良識ある裁判官はそういうふうにきちんと認定されていますので、一部誤っている人はいますが、そのような誤った認識や認知が悪影響をもたらしていると思いますし、それは公表されてる裁判例でも、男女のそういう性の営みというのはとてもプライベートなものだから、本当にその性行為に至るまでのいろいろなものを飛躍して同意があったと思っているというのは、それはその加害者の認知が歪んでいるから、その認知が歪んでいることをその故意がなかったということに結びつかないと。それは関係ない、あなたがおかしいからというふうに、裁判で判断されているものも多数ありますから、そういう常識的な、本当に被害者の心理に寄り添った常識的な認定を、警察も検察も裁判官も弁護士もすべきだと思います。

■「この事件は検察組織で起きたもの」「検察組織の土壌が作り上げたものではないか」

Q 被告から同意の有無に関する主張や、事件直後には“口止め”のようなことをしてきたことを明かされていた。言葉で言い表せない思いを本当にされたのではないかと思うが、何回も「思いを踏みにじられた」と感じたのではないか。

A そうです。本当におっしゃる通りで、どの場面においても傷つけられ続けている。レイプされたのはもちろんですが、どの場面においても、彼は私を一人の人間と扱っていない。自分の「駒」、検事正というすごい権力を持った人間が、部下のことを「駒」だと思っていた証だと思うし、その「駒」に感情があるということを考えてもいないのだろうと思いますし、今なおそう思ってるのだと思いますし、その同意がある性行為において、「これでお前も俺の女だ」なんて言いますかと。大事にしたい人じゃないですか。同意がある性行為なのであれば、大事にするじゃないですか。大事にするのだったら大事に、そういう性行為に至るまでの経過を踏むじゃないですか、信頼関係を築いて。そうではなく、酔いつぶれた単なる部下をレイプした。

 こういう事件は悲しいかな、いっぱいある。いっぱいあって、彼はそれを検事として、その事件に携わってきた。何度も何度も何度も…。こういうことが犯罪であることを熟知していた。なのに自分の性的な欲望を抑えられずに、酩酊した部下にレイプしているということ自体が本当に情けないし、その後のさまざまなことについても本当にひどい。ここまで自分のことしか考えていない、人の気持ちを考えられない人間が、大阪地検という“大”地検のトップにいたのかというところがすごくショックです。

 私は、それは申し訳ないですが、検察組織の土壌がある、そういう土壌が作り上げたものではないかと思います。ハラスメントなどが起きたときに適切に対応してきたのかと。今まで、ハラスメントをされた方が声を上げてもきちんと対応してこなかったツケが回っているのではないかと思いました。

 そういう意味で、この事件は検察組織で起きた事件であって、私個人の被害では絶対ないと思うし、その二次被害なんかはまさに検察庁内で起きているので、検察庁は組織の問題として、他人事ではなく自分事として対応してほしいし、こういうことが二度とないように職員がこんなに傷つかないように、再犯防止策を取ってほしいと思います。

■“二次被害”女性副検事を刑事告訴・告発 「本当に絶望的な気持ちになった」

Q 改めて訴えている『二次被害』の内容について聞かせて下さい。

A (検察庁には)起訴していただいて、すごく感謝して、検察に正義があったと思って、検事の仕事も何もかもできなくなるぐらいPTSD(=心的外傷後ストレス障害)の症状がひどくなって休職に追い込まれましたので、やはり検事としてのアイデンティティを取り戻すために処罰すべき人を処罰しなければならないと思って被害申告しました。そして、起訴してもらいました。

 やっと検事の仕事に戻れると思って、PTSDの病気はあったのですが、復帰に向けて取り組んできました。まさかそんな職場に私の被害を潰そうとしていた、そういう加害意志を持った人がいるなんてもちろん思っていなかったし、私が復帰する前に、私の担当主治医の方からPTSDの治療はまだ全然できてなくて、裁判も控えているから、私が症状が悪化することは目に見えているから安全な職場環境を整えてくださいと、具体的には私に対して加害を加えてくる危害を加えてくるような人は物理的に排除してくださいと、事件を思い出させるようなことからも遠ざけてくださいと、私が安心して働ける環境を整えてくださいという医師の指示があって、検察庁はそれを了解した上で非常に配慮した形で復帰したつもりだった。

 ところが、9月の段階で私と同じ所属部であり同じフロアにいた、しかも私が信頼していた女性副検事が、北川被告が自分のこの件を捜査されていることをまだ知らない段階で、最高検も入った捜査が始まっているというような捜査情報を北川被告側に漏洩していたことや、北川被告との連絡なども削除するなと言われていたのに削除していたことや、北川被告が当時同意があったと思っていたとか、私がそんなに酔っていると思っていなかったというような弁解、嘘の弁解に合うような形で、実際その被害者はそんなに酔っていなかったというような内容の事実とは違う話を彼女がしていたことを知って。

 本当に絶望的な気持ちになって、何度も泣き崩れた私がどれほどの思いで一人でこの被害を抱えて、傷を抱えて誰にも言えずに耐えてきたのかとか、私がどれほどの覚悟を持って被害申告したのかとか、被害申告してもし起訴してもらえなかったら私は検事としてのキャリアを失うし、家族も傷つけるし、恥をさらしただけで救ってももらえないし、そんな恐怖を、リスクを分かりながら被害申告したので、どれほどの思いでこの6年間過ごしてきた上での被害申告だったのかというのを、その女性副検事も検事ですから分かっているはず、どれだけ苦しんでいるのか。北川被告と通じて事件を潰そうとしていた疑いがあることが分かって、しかも彼女は私が信頼していた人だったので、人間ってこんなに残酷なのかと思って、本当に泣き崩れました。

 そこから体調が悪くなって、正式復帰をしたものの、そこからほとんど職場に行けなくなってしまって、彼女を職場から異動させてほしいと、ただちに捜査をして処罰をして懲戒処分にしてほしいというのを9月の初めからずっと言い続けていますが、速やかな対応を検察がしなかった。

■「こんなことが検察庁で起きていること自体が本当に信じられない」

A そうこうするうちに彼女が私が被害者であることを吹聴したり、私が虚偽告訴をしているというようなことまで言いふらしたりしていることが分かって、しかもそれは単に噂好きの人が言っているとかではなく、彼女は自分は事件関係者だからこの事件の真相を知ってるんだというふうに言いふらすから、言われた人たちは真実はそうだったのかと思いがちになるような迫真に満ちた言い方をして言っていっているから、その話を真に受けてさらに私が信頼して慕っていた幹部までもが北川被告に近い人間だったので、それを真に受けてまた虚偽告訴だって伝播していったという…。

 こんなことが検察庁で起きていること自体が本当に信じられないし、それを直ちに、名誉毀損されていることを実態調査をして被害者の誹謗中傷するなと周知してほしいと、誹謗中傷は嘘ですよと、事実はそうではないということを周知してほしいと、検察庁に何度も言っているのですが、実態調査については捜査と一緒なので、そこに時間がかかるのは理解できますが、被害者の誹謗中傷してはならないという周知や、その誹謗中傷の内容は事実ではない、それは嘘だということを言ってほしい。

 この2つぐらいすぐにやってくれたらいいのに、それもせずに、私は名誉を毀損されたまま、検察庁内では。そんな職場に誰が戻れますかということであって、それをずっとお願いしているのですが、それすらも叶えてもらえないし、その捜査妨害をしていた疑いのある女性副検事をなぜ処罰もせずに放置していたのか、なぜその副検事と同じ職場に私を戻したのか、何の説明もしないから、その理由の説明を聞いてる。しかしそれは今やっている捜査と関わらないから説明できる話だと思う、過去のことだから。その説明すらもいまだ誰もしてくれない。

 被害者としてだけではなく検察職員として安全に働ける環境を作ってもらえないから私は復帰できない、いまだに。私は病気だけど、仕事に戻ろうとしていた。だから安全であれば今すぐにでも戻れるんです。でも安全じゃないから戻れない。だから検察庁に安全な職場を作ってほしいとお願いしているだけなんです。

 これは私だけのことではなくて 検察庁内で被害を受けたら、職員が被害を受けて声を上げたらこんな扱いを受けるのだということを、いま職員みんなが怖がって見ている、見守っていると思う。こんなふうにひどく傷つけられるのかと。そんなことでいいのかと思う。だから自分は現職で、組織のこういう対応を言うことについても恐怖ですが、その後どういう取り扱いをされるか分からないから。でも私以外の方にも影響があると思うから、声を上げ続けている。

(※女性検事の刑事告訴について、大阪地検は「告訴・告発があったことを含め、捜査機関の活動に関わる事項についてはお答えを差し控える。ただ、一般論として、告訴・告発があった場合には、内容に応じて適切に対応しているところである」とコメントしている)

■「私は検事の仕事をしたいだけなのに…」「検察に何度も殺された」

Q 会見の中では、「検察に殺された」と表現していたが、それほどの苦しみの感じ方をしたと。

A そもそも北川被告自身が検察庁の象徴だった。検察庁の象徴であった人からレイプされて苦しんで、被害申告して、そしたら検察庁の現職の副検事から事件を潰されそうになって、さらに名誉毀損もされて、その副検事に同調した検察幹部らが同じように誹謗中傷して、それを何とか助けてくださいと言っているのに、検察組織が適切な対応をしない。

 私は大好きだった検察庁から何度も何度も何度も何度も傷つけられて、自分は検事の仕事がしたいだけなのに。そういう意味で「何度も殺された」と言っています。

Q 女性副検事については「信頼していた」と話していたが、女性検事から見てどのような人物だったのか。事件後や復職後はどのように接してきたのか。

A 元々は彼女が事務官の時に知り合って、彼女もすごく正義感の強い方だと思っていたので、私のことも応援してくれていたので、2人でランチに行ったり、そういう親しい関係があったからこそ事件の時に懇親会に誘った。その後はほとんど接点を持たなかったですが、それでも副検事になられて頑張っているのだなと思っていた。

 今回、事件関係者になりましたので、被害申告してからは一切接触してなかった。接触するなと私も言われていましたし、彼女には私が被害申告したことで事情聴取とかで迷惑をかけてしまって申し訳ないとずっと思っていました。

 復帰した後、同じ職場だと分かっていたので迷惑をかけたことをお詫びしたいと思って、彼女に声をかけていいかと検察庁に聞いたら接触しないようにと言われたので、それは今後裁判も控えているし接触してはいけないと思って、同じフロアですが、彼女に会わないようにするために自分の執務室から出ないように心がけて、女性トイレも同じフロアの女性トイレを使わずに私は違う階の女性トイレを使うようにしたり、職員が乗るエレベーターも使わずに階段や荷物を運ぶエレベーターを使うようにしたり、職員が出勤退勤する時間や昼休みの時間などは避けてとにかく人に会わないようにしたり、マスクをして顔を隠したりして。

 私がまるで犯罪者かのようにこそこそこそこそ振る舞いながら、彼女に気を遣ってきました。そんなふうにして気を遣ってきたその相手が、私に対してそういうことをしていたということは、すごくショックでした。

■母に打ち明け「毎日泣いている」 支援の輪「300件のメッセージ」

Q 事件後、ご家族や支援者の方々は、女性検事にとってどのように支えになり、どのような気持ちになった?

A やはり家族が、特に夫がずっと一緒に苦しんでくれていて、どうすれば私を救えるかということをずっと考えて私に伴走してくれています。

 でも、夫も私が被害申告したら、北川被告をきちんと処罰できたら、自分は根は明るい方なので、また元の明るい妻に、検事として元気に戻れると信じて夫も被害申告を承諾してくれたし、それなのに予想外に女性副検事のことも内部での名誉毀損も予想外の展開がどんどん起きてしまって、思い描いていたような現実ではないということに2人で絶望しています。子どもにも2回目の会見後に被害を受けたことを言ったので、子どもはまだ小さいしあまり分かっていないですが、それでも母に対して気を遣うようなことをしています。

 あとは弁護士の先生がずっと伴走してきて、一緒に闘ってくれているお医者さん、心理士の先生、現職の検事、事務官、私の親しい方々もずっと応援してくれているし、一緒に戦ってきた警察官の方、私がサポートしてずっと一緒に闘ってきた被害者の方が、今度は私を支えたいと言ってくださっていたり、会見後にたくさんの面識のない方々が、全部で300件ぐらいメッセージを送ってくださったりして、その中には犯罪被害者当事者の方や、それを支援する方々、団体の方や全国から弁護士さんとかジャーナリストの方、本当に一般の方、たくさんの方が共にいます、共に闘いますと、これは自分事ですと、これはあなただけの事件ではなくみんなの事件だと、正義があることを証明しようというふうに言って、毎日のようにメッセージが送られてきていて本当にありがたく感じています。

Q 広がっていく「支援の輪」が大きな力になっていると。

A 元警察官の方で一緒に仕事をしてきた同志でもあり、今は友人なのですが、たくさんの現職の検事や事務官や警察官の方も応援してくれている中で、彼が今は別の仕事をされているので「一番自分が動きやすい」ということで支援の会を立ち上げてくださって、私を支えることが、私が守ってきた方々を支えることでもあるし、私がこれから今後守っていくであろう方々を支えることにもつながっていくから、私を支援する会を作りたいといって作ってくださいました。

 本当にありがたいし、力づけられていますが、やはり家族、夫もですが、母は毎日泣いていますし、母に言っていなかったのですが、2回目の会見後に母に打ち明けた。母は、自分の娘が誇りを持って検事の仕事をしてきたのに、なぜ検察庁にこんなにもひどい仕打ちをされなければならないのかと毎日のように泣いていますし、きょうだいもそうですが、被害者当事者だけでなく家族も苦しめることであるということを、検察庁に分かってほしいと思います。速やかな、適切な対応を求めたいです。

■「自分も検事になりたい」幼い子どもに「申し訳ない」

Q 子どもはまだ幼いとおっしゃっていたが、話を聞く中で傍にいて察している感じていることがあるようにも思った。どのような言葉をかけられるのか。

A 私は仕事を始めてから、ずっと毎日忙しくしていましたので、夫と2人で子どもを育てながら、時折母にも手伝ってもらっていましたが、週に何日かは子どもが寝た後にしか帰れないような、夜中に帰っていたので、子どもがママがいないことをずっと寂しがっていました。なので幼い頃は、私が夜中に仕事から帰ったら、机の上にちぎったような紙に「ママおかえり 夜遅くまで仕事ありがとう 帰ってきたら ぎゅーしてね 起きたら ぎゅーして ちゅーしてね そしたら にこりです」と、拙い文字で書いて絵も描いてくれて置いてくれていた。

 私が北川被告から被害を受けて、心労・過労が重なって、肺炎になって入院したのですが、その時はお見舞いに来てくれたら泣いて泣いて。「ママが死んじゃう」と言って、そんな思いまでさせて、寂しい思いをずっとさせて、検事の仕事を続けてきましたし、それでも、子どもは「ママが検事というのがかっこいい」と言って、一度自分の裁判も傍聴に来てくれた。「自分も検事になりたい」と言っていた。なのに、こんなことになってしまって、子どもにも申し訳ないし、子どももすごく困惑していると思います。

Q 改めて、北川被告、検察庁、そして司法全体に訴えたいことは。

A 北川被告に対しては、彼が検事を志したときの気持ちを、もう一度思い起こしてほしいと思います。被害者に寄り添い、犯罪者を適正に処罰するために検事になったはずですから、そのときの気持ちをもう一度思い出してもらって、北川被告が傷つけた被害者である私に対して真摯な謝罪を求めたいです。

 また、北川被告に対して適正な処罰を求めたいです。そうすることで、性犯罪がいかに許されない犯罪であるかということを世間に知っていただいて、こういう犯罪をしないという世の中にしていきたい。そういうことに尽力できたらと思っています。

 検察庁は組織の保身に走らず、本来守るべき犯罪被害者や、身を粉にして働いている一人一人の職員を正しく守る行動をしてほしいと思います。特に、最高検や上位幹部の人たちは、一人一人の職員のことを、きちんと正しく守ってほしいと思います。
(おわり)

※1月4日に配信した前編では、女性検事が赤裸々に語った「若い頃に抱いていた元検事正への尊敬の念」と、謝罪から一転して「無罪主張に転じた被告への率直な思い」をお伝えしています。

最終更新日:2025年1月6日 8:00
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