子どもによる「盗撮」相次ぐ…大人がそそのかす? 校内なら“プレミア”も「スマホ持ち込み」禁じるべき?【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「学校内で相次ぐ盗撮…防ぐには?」をテーマに解説します。
「年が明け、学校も始まります。子どもたちにとってスマートフォンやタブレット端末が当たり前になっていますが、子どもによる盗撮が後を絶ちません。それも学校の中で行われ、子どもが加害者にも被害者にもなっている状況があります」
「子どもたちを守るために何ができるか考えます。記者が話を聞いたのは、九州地方の中学校に娘が通うさきえさん(仮名)です。去年7月、『お子さんが盗撮被害に遭いました』と、中学校から突然電話がかかってきました」
「学校側の説明によると、女子生徒らが体育の授業で着替える教室に男子生徒のスマホが録画状態で設置されていたそうです。学校が事案を把握した時には、既に男子生徒は撮影した動画を削除していたといいます」
「さきえさんは『どこまで撮影されていたのかわからない。動画が拡散されていないかも不安だ』と話していました。警察に相談したところ、『動画が削除されて確認できないので、盗撮での捜査は難しい』と言われたそうです」
鈴江奈々アナウンサー
「こういった問題が学校内で起きていると初めて知りました。ICT教育はとても大事ですが、小学生ですらタブレット端末を1人1台持つような中で、新たな問題も起きてしまっているんですね」
小野解説委員
「本当に相次いでいます。こうしたケースもありました。去年6月、埼玉県の中学校が修学旅行に行った際、宿で複数の男子生徒が女子生徒の入浴している様子を盗撮したとして、警察が捜査したということがありました」
「男子生徒らは、撮影した動画や画像をSNSで学校内の友人に送っていたとみられています」
森圭介アナウンサー
「魔が差したとか、出来心だったとかではなく、完全な犯罪ですし、傷ついている人たちがいるということを絶対に忘れてはいけませんよね」
斎藤佑樹キャスター
「『子どもだからしょうがないよね』とは絶対にならないと思うんですよ。これは罪にはならないんですか?」
小野解説委員
「罪になり得ます。一昨年7月に施行された、性的な盗撮行為を取り締まる『性的姿態等撮影罪』(通称・撮影罪)では、3年以下の懲役または300万円以下の罰金になります」
「子どもの検挙数は多いです。警察庁によると、加害者も被害者も中学生(14歳以上)の盗撮行為のうち、撮影罪で検挙された人数は一昨年7月~去年11月の1年あまりで83人でした。高校生になるともっと増え、316人です」
瀧口麻衣アナウンサー
「そんなに多いんですね。さらにどんどん拡散されていくと考えると、とても怖いですよね」
小野解説委員
「子どもたちがSNSで拡散すると、それに大人が乗っかってくるとみられるケースもあるようです。あるSNSでのやりとりの画面では、盗撮されていた女子生徒の住所や電話番号など、個人が特定される可能性のある情報まで載せられていました」
「ボランティアでネットパトロールを行い、盗撮画像などの削除要請や通報を行っている『ひいらぎネット』代表の永守すみれさんに話を聞きました。永守さんによると、盗撮された画像などがネット上で売買されることもあるといいます」
永守さん
「(撮影地が)駅や商業施設だと成人女性に制服を着てもらって撮影するポルノの可能性が出てきますが、学校内(での撮影)だとその可能性はなく、限りなく100%現役の女子高生が被害に遭っているということで、ある意味“プレミア”がついてしまっている」
小野解説委員
「プレミアという嫌な言葉が出てくるぐらい、はびこっていたりもするわけです。永守さんは『大人が中高生に盗撮をそそのかしているような現状を変えないといけない』と話していました」
斎藤キャスター
「大人が盗撮を肯定するようなことは絶対にいけないと思いますが、子どもによる盗撮はなぜこんなにも相次いでいるんですかね?」
小野解説委員
「専門家に聞きました。3000人以上の性加害者を対象に再発防止のための相談や治療プログラムなどに携わってきた西川口榎本クリニックの斉藤章佳副院長によると、小学6年生の男子児童が学校内で盗撮をしていたケースもあるといいます」
「斉藤副院長は『今の子どもたちは生まれた時からスマホがあり、スマホなどで同意なく撮影したり撮影されたりする暴力性について、他の人にどのように影響するか想像力が働きにくいという特徴がある』と話します」
「そして偏った思考を持っています。斉藤副院長は『のぞかれる人が悪いし、中が見えるような建物が悪い』などと自分を正当化したり、『のぞいても被害はないし、相手は傷つかない』などと自分に都合のいい認識を持っていたりすると指摘しています」
鈴江アナウンサー
「間違いなく相手は傷つきますし、加害者になった人も傷つきます。絶対によくないことだと大人が教えていかなければいけないと思います。デジタルの道具が先に来ていると、(使う側のリテラシーが)追いついていない現状もあると感じました」
鈴江アナウンサー
「成長の途上にある子どもたちと向き合う先生たちにとって、こういったことを防ぐためにはどういうことが大事になるんでしょうか?」
小野解説委員
「そこは大事なところで、斉藤副院長はこう指摘します」
斉藤副院長
「学校内での盗撮は『子どもがやったことだから』と内々に処理されてしまうことが多く、被害者が警察に相談するなど大事になってから発覚するケースが多い」
「事実を隠したり、退学や停学をさせてなかったことにしたりすると、本人には『この程度で済んだ』という負の成功体験になる時もある」
小野解説委員
「この問題について私たちは先にウェブ記事で配信すると、多くの方からご意見をいただきました。その中には『スマホなどの学校への持ち込みを禁止すべきだ』といったコメントも多くありました」
「ただ盗撮行為は、軽い気持ちで始めたものがやがてやめたくてもやめられない状態に陥ってしまったり、大人になってもエスカレートしてやり続けたりする可能性があります」
「斉藤副院長は『盗撮した子どもにはカウンセリングや、グループで行う教育プログラムなどの治療的介入を行う。そして相手の同意なき性的な接触や盗撮がいかに相手を深く傷つけるのかを、小さいうちから包括的な性教育の中で学ぶべきだ』と呼び掛けています」
鈴江アナウンサー
「いろんな立場に立って考える授業もとても大事ですし、被害者も加害者もネット時代にはさらされるんだということを第一に知っておくことが大事です。そういったことを私たち親としても丁寧に向き合って話すきっかけにしたいなと思いました」
小野解説委員
「盗撮行為は真剣に取り組まないと、いっそうはびこる可能性があります。子どものうちからしっかりと向き合う必要があると感じます。皆さん、いかがお考えでしょうか」
(2024年1月6日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)