×

【一体何が…】高齢姉妹の財産『食い物』に…2000万円着服か 介護施設元社長“異常”な犯行の実態 自宅も売却され口座残高ほぼゼロ!

2024年6月30日 10:00
【一体何が…】高齢姉妹の財産『食い物』に…2000万円着服か 介護施設元社長“異常”な犯行の実態 自宅も売却され口座残高ほぼゼロ!

 大阪市鶴見区の介護施設運営会社の元社長が、約2年間にわたり、施設を利用していた80代の姉妹から現金約2000万円を着服していたなどとして逮捕された事件。元社長の西影由貴容疑者(38)は、介護職という立場を悪用して姉妹から信頼させ、全財産を管理し、姉妹の口座の残高はほぼゼロ…。取材で明らかになったのは、高齢者を「食い物」にした異常な犯行の実態だった。(報告:泉達也・福島達朗)

■親族もいない80代姉妹…介護施設「金づかい荒いから管理してあげる」

「神様…むちゃくちゃ…」

 事件発覚後、被害にあった80代の妹が、涙ながらに呟いた。

 大阪市鶴見区の一戸建て住宅に住んでいた姉妹。警察や知人などによると、2人とも認知症はなかったが、特に姉は足腰が悪く、近くに頼れる親族もいなかった。2人は2019年1月ごろから、西影容疑者が運営する介護施設「りはびりぷらすDay Service」に通所し、入浴などの介護を受けていた。

「金づかいが荒いから、僕が財産管理してあげる」

 介護福祉士の資格を持つ西影容疑者はそんな姉妹に言葉巧みに近づき、2021年春ごろから、姉妹の通帳やキャッシュカード、そしてクレジットカードを預かるようになったという。

 事実上、姉妹の全財産を管理するようになった西影容疑者。2023年7月までの約2年間で、132回にわたり、計約2000万円を引き出したとして、業務上横領などの疑いで大阪府警に逮捕された。

 事件が明るみになったとき、姉妹の口座に残っていたのはわずか数百円だったという。

■生命保険は解約、自宅も売却…「パン1枚を2人で」電気もなく熱中症で搬送

「手元に現金があったほうがいい」

 そう言って、姉妹の資産を現金化していったという西影容疑者。姉妹が万が一の場合に備えた生命保険を解約させた。解約金は1200万円で、この他にも、2人が亡くなったときのために残していた葬祭用の費用約34万円、2カ月に1回の2人の年金も対象となった。

 口座に金が入ればすぐに引き出し、また別の金が入ればすぐに引き出す―。西影容疑者はこうした着服を繰り返していたとみられている。

 さらに西影容疑者は、姉妹の自宅を2021年6月に譲り受け、2023年には売却。これによって得られた約800万円を懐に入れたとみられるという。

 姉妹はこの間も、あくまで西影容疑者が“善意”で財産を管理していて、「まさか介護施設の人が着服などしないだろう」と信用していたというのだ。

 自宅を売却された姉妹は、その後、西影容疑者が手配する集合住宅に無理やり引っ越しさせられたが、ここでの生活は「経済的虐待」ともいえる悲惨なものだった。

 食事は与えられていたものの、パン1枚を2人で分け合うような時もあった。電気やガスは時々止まり、風呂に一か月以上入れないことも。冬には暖房が使えず、夏にはクーラーもなし―。姉は2023年7月に熱中症になり、病院に救急搬送された。

 集合住宅の清掃をしていた女性がたまたま妹と話すなかで、「通帳をとられている」「金くれへん」などの発言があり、不審に思った女性が8月に警察に通報し、事件が発覚した。

 ある捜査幹部は「この女性が気づいてくれていなかったら、姉妹は死ぬまで搾取されていただろう」と明かす。

■会社スタッフを『養子』に…姉妹は知人に「しゃべったら怒られる」

 姉妹への“搾取”が発覚するのを免れようとしたのか、西影容疑者は驚くべき“隠ぺい工作”を行っていたと捜査関係者や姉妹の知人らは明かす。西影容疑者の会社の女性スタッフが、なんと、妹の『養子』になっていたのだ。

 読売テレビが入手したのは、この女性スタッフが姉妹の知人などに宛てた書面。

 そこには「長女である私が姉妹を面倒みていくことになりました。母(妹)や叔母(姉)の同意の上で、大阪家庭裁判所に保佐人の選定の申立てを行う手続きに入っております」などと書かれていた。

 さらに姉妹は、被害を明らかにしようとする知人に対し、不思議な手紙を送っていた。

 「こちらの望んでいない事をされたことに関しては私はとても立腹しています。今後私たちについて何か言いまわるような事はしないでいただきたいし、連絡を取ったりお会いする気もございません」

 西影容疑者は、財産を管理する正当性を持たせるために女性スタッフを養子にさせた上、事件の発覚を免れるために、姉妹にこの手紙を書かせていたとみられている。

 こうした状況に対し、書面や手紙を受け取った知人は、ある『異様さ』を感じたと明かす。

 「(姉妹は)怖がっていましたね、(西影容疑者に)怒られるねんと。マンションの下で近所の人としゃべっていても『しゃべるな』とか怒られるねんと。(妹は)ここから出たいと言っていた。介護事業者がそこまでするのかなと思った」

■預かったクレジットカードで生活費「僕は孫にあたる」とウソの説明

 西影容疑者が会社を設立したのは2011年で、通所サービスは100人程度が利用していたという。西影容疑者を知る人によると、「仕事熱心な印象だった」というが、一方で、捜査関係者は「会社の賃料は2023年11月時点で670万円ほどが“未納”の状態で、社会保険料も2500万円くらい滞納していた。競馬もしていたようだ」と明かした。

 警察が今年2月、会社などを捜索した際、西影容疑者は「自分なら(経営を)なんとかできる」と話していたという。

 一方で、姉妹のクレジットカードの利用履歴からは、西影容疑者が自身の電気代や携帯電話料金、フードデリバリー代、子ども用品の購入代などで、約100万円が使われていたことが判明している。

 注文者情報とカードの名義人が違うことから、カード会社からは確認の連絡もあったが、「僕は(被害者の)孫にあたるんですよ。親戚で集まったときに『あんたも買い』と言ってくれて」などとウソの説明をしていたという。

 調べに対し、「金の引き出しはお願いされてやった」などと容疑を一部否認しているという西影容疑者。警察は、姉妹の資産が借金の返済や会社の運営資金だけでなく、西影容疑者の生活費としても使われていたとみて裏付けを進めている。

読売テレビのニュース