「先が見えない」能登の海女、漁再開できず… 能登半島地震から半年
元日の午後4時10分、最大震度7の地震が北陸を襲いました。石川県では299人が亡くなっています。(※うち災害関連死70人、一部手続き中を含む)
石川・穴水町の住民
「いっぱいありすぎて、半年とは思えない。たくさんの人に助けてもらってる」
能登半島地震から半年、季節は夏になりました。
鈴江奈々キャスター(石川・輪島市、6月22日)
「輪島朝市の火災現場に来てみますと、焼け落ちてしまった建物の合間から草木が生えています。半年という時間を感じます」
6月22日、鈴江キャスターは輪島朝市のすぐ近くにある漁港を訪れました。出会ったのは、門木奈津希さん(43)です。家族代々、海女で、約27年海に潜っています。
門木奈津希さん
「私たちは7月1日が解禁日で、もうそろそろ」
鈴江キャスター
「解禁になるとどんな漁が?」
門木奈津希さん
「サザエ、アワビ、もずく」
輪島の海女は素潜りの技術を代々受け継ぎ、アワビやサザエ、もずくなどを収穫。その技術は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。(輪島の海女漁の技術)
輪島を活気づける海女。明るく振る舞いますが…
鈴江キャスター
「隙間ができているのは地震の影響?」
門木奈津希さん
「地震です。リフトも通れなくなって、ここに鉄の板を張って」
漁港は、地震で使えない状態になりました。
鈴江キャスター
「この黒い袋は何が入ってる?」
「津波のゴミ」
漁場には多くのゴミが押し寄せ、撤去に追われています。さらに…
門木奈津希さん
「海岸の白い貝がついている所が、水につかっている部分」
鈴江キャスター
「色が変わってる。貝殻がついている」
門木奈津希さん
「本来なら水につかっている」
地震で海底が2メートルほど隆起したといいます。
鈴江キャスター
「こういう状況が続いている気持ちは?」
門木奈津希さん
「もっと早く復旧するかと思ったけど、何も変わらない」
◇
海に出られなくなった約130人の輪島の海女。今思うことを、聞かせてもらいました。
鈴江キャスター
「長年、海女を続けてきて、半年も漁ができないことあった?」
門木奈津希さん
「ないね」
浜谷美恵さん
「半年たっているから『当たり前のように漁に出ているんじゃないか』『当たり前のように仕事しているんじゃないか』、そういう風に思われているかも。まだ全然変わっていない。忘れ去られているんじゃないか、まだこんな状況ですよと、忘れないでほしい」
山岸美咲さん
「家もダメ、漁はできない。先が見えないしか言えない」
アワビも、サザエも、とることはできなくなりました。
先の見えない不安が続く中…。早朝、ウエットスーツを着ていた門木さん。
門木奈津希さん
「いつも潜っている所のもずくの育成と海底の調査に」
もずくの生育状況を見るため、地震で変わった海へ…
「隆起で上がった?」
「分からん」
門木奈津希さん
「いつもから見れば、もずくの生育が少ないけれど、少量の漁から試験的に操業してみてもいいかなと」
そして、6月28日、7月から試験的に海女漁を再開できることが決まりました。まずは、もずくを対象とした漁から始めるということです。
なりわいを取り戻す一歩を踏み出せた、輪島の海女。
鈴江キャスター
「海に出られることが喜び?」
門木奈津希さん
「毎日ワクワクしていると思う、みんな。少しずつ何かをして、1つでも早く元に戻ること。戻ってほしいです」
鈴江キャスター
「まずは再開に向けた一歩となる試験的な漁は始まりますが、海産物を船から運び出し、氷を作ったり、仕分けしたりする港の工事は見通しが立っておらず、本格的な漁を始めることはできていないんです」
斎藤佑樹キャスター
「仕事ができなければ、もちろん生活することも子育てすることも、とても難しいですよね」
鈴江キャスター
「被災された方たちにとって『生活再建』は言葉で言うほど簡単ではなく、先行きが見えないことが、精神的にも経済的にも大きな負担となっています。その背中を押していく息の長い支援と、見通しを一日でも早く描くことが、明日への希望につながると感じます」