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【独自解説】新宿・タワマン女性刺殺事件 犯人は“ストーカー”としての逮捕歴も、禁止命令の効力は“1年のみ” ナイフの刃が折れるほどの凶行…背景にはいったい何が?元捜査1課刑事が指摘「ストーカーとは全く違った動機があると感じる」

2024年5月9日 18:00
【独自解説】新宿・タワマン女性刺殺事件 犯人は“ストーカー”としての逮捕歴も、禁止命令の効力は“1年のみ” ナイフの刃が折れるほどの凶行…背景にはいったい何が?元捜査1課刑事が指摘「ストーカーとは全く違った動機があると感じる」
逮捕・送検された和久井学容疑者(51)

 2024年5月8日、東京・西新宿の高層マンションの敷地内で、住人の平沢俊乃さん(25)が刺殺された事件。殺人の疑いで逮捕・送検された和久井学容疑者(51)は、事件前日の夜からマンション周辺にとめた車内で待ち伏せしていたとみられることが新たにわかりました。2022年には、平沢さんに対するストーカー規制法違反で逮捕歴があったという和久井容疑者。犯行の動機は?警察の対応は?元埼玉県警捜査1課警部補・佐々木成三(なるみ)氏の解説です。

 5月8日午前3時すぎ、事件前日の7日夜から車で待ち伏せしていたとみられる和久井容疑者は、平沢さんがマンション1階のコンビニから出た際に接触。逃げる平沢さんを追いかけて刺したとみられ、平沢さんは腹や首などに数十か所の刺し傷がありました。和久井容疑者は「体を傷だらけにしてやろうと思って刺した」と話していて、使用された2本の果物ナイフの内1本は刃が折れた状態でした。

 犯行の動機について、和久井容疑者は「経営を応援するために出した1000万円以上を返してもらうために行った」と供述していて、警察によると容疑を認めているということです。

Q.相当な殺意、そして計画性をみて取れますか?
(元埼玉県警捜査1課警部補・佐々木成三氏)
「刃が折れるぐらい刺しているということ・数十か所も刺していることに関しては、殺意が明確にあり、殺害を最後までやり遂げるという強い意思があったと思います」

Q. 1本は刃が折れて、もう1本用意しているというところも、殺意を感じますよね?
(佐々木氏)
「これは計画性が十分ありますし、殺意が当初からあったということは間違いないと思います」

 平沢さんと和久井容疑者が出会ったのは、4年ほど前。平沢さんが過去に経営していたガールズバーに、客として和久井容疑者が訪れました。捜査関係者によると、和久井容疑者は2年半ほど前から平沢さんへのストーカー行為があったとして2度ほど警視庁から注意を受け、2022年5月には、ストーカー規制法違反で逮捕されていたことが明らかになっています。その後、釈放された和久井容疑者には「ストーカー規制法に基づく禁止命令」が出ていましたが、1年の有効期間の後、平沢さんに確認した上で2023年6月に解除されていました。

Q.平沢さんに確認の上で禁止命令を解除したということは、「身の危険を感じなくなったので解除でいいです」となったんですよね?
(佐々木氏)
「状況確認のため、警察は容疑者に対しても電話などをしますので、この間には被害者も何か危険を感じるようなことはなかったんだと思います」

Q.今回、「マンション周辺にとめた車で待ち伏せしていた」と明らかになりましたが、平沢さんは住居を変えていなかった可能性がありますよね?
(佐々木氏)
「その可能性は高いと思います。ストーカー規制法では、警察は被害者に対して『どこかに身を隠してください』『引っ越してください』という指導はできるんですけど、それを被害者が強いられるというのは、生活や仕事がどうなるのかということもあるので、現状できなかったということがあると思います」

 ストーカー相談の流れとしては、「ストーカー規制法」に触れる行為があり、それが「ストーカー行為罪」に当たれば検挙されます。ストーカー行為罪に当たらなくても、警察は「禁止命令等」を出したり「警告」したり「援助」したりします。禁止命令等が出されているにもかかわらず、それに背く行動をした場合は、「禁止命令等違反罪」で検挙されます。弁護士・亀井正貴氏によると、「禁止命令の効力は1年のみ。その後は被害者の申出、あるいは公安委員会の判断で延長できる」ということです。

Q.禁止命令の効力は原則1年のみで、もう一度申し出ないと、延長されないのですか?
(佐々木氏)
「延長というより、さらに禁止命令を申告するということです。ただ、禁止命令が出ている間に何かしらの接触を図ってきたり付きまといをしてきたりすると、また逮捕になりますので、そういった行為に対して警察はちゃんと態勢を整えていたのですが、この2年は何もなかったということです。今回の事件に関しては、ストーカーとは全く違った動機があるなというふうに感じます」

 平沢さんとのトラブルかどうかは不明ですが、和久井容疑者の父親は「3年ほど前、結婚の話が出て、車もバイクも売ってお金にして、お金出したら結婚の話がダメになった。それでストーカーになって、お金返してくれっていって」と話しています。和久井容疑者が供述している犯行の動機にも、「経営を応援するために出した1000万円以上を返してもらうために行った」とありました。

Q.「ストーカー規制法」なのか「金銭問題」なのか、というところになってくるわけですね?
(佐々木氏)
「きっかけはストーカー規制法違反だと思いますが、少なくとも2年間は、和久井容疑者は何かしらの違反に抵触する行為はしていなかったわけです。『金を返してもらうために行った』となると、“恋愛感情のもつれはない”ということなので、これは恐らくストーカー規制法には抵触しない行為になります。ただ、住居侵入など、別の法律で逮捕することは可能です。そういったことを警察が認知していれば、何かしらのアクションはできたのかもしれませんが、これがいきなりとなると難しかったと思います。警察も、禁止命令のときは状況把握などの電話はしていますけど、今のこの中で警察ができることには、かなり限界があると思います。ただ、その中で警察が被害者からの情報などを何か握っていたら、また別の結果は出ていたのかなと。最悪な結果になってしまったことが残念でなりません」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年5月9日放送)

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