【解明】人気テーマパーク「USJ」の次なる戦略は?「ドンキー」「コナン」海外客にも人気のワケ
国内外のゲストから絶大な人気を誇るテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、大阪市)。2024年3月、映画「ターミネーター」のアトラクション跡地で、大人気アニメ「名探偵コナン」の常設アトラクションをオープンさせると、12月には新エリア「ドンキーコング・カントリー」を開業するなど、新たなアトラクションやショーを次々と展開している。“人気”に固執することなく変化を求め続けるUSJ、そのワケと舞台裏に迫る。(報告:中野颯大、山本真帆)
■2年連続“世界3位” 世界に誇る大阪のテーマパーク「USJ」
アメリカの「テーマエンターテインメント協会」(TEA)などが2024年に発表した「2023年の世界のテーマパークの来場者数」によれば、USJは2年連続で「世界3位」となっている。
1位は、アメリカ・フロリダ州にあるウォルト・ディズニーの「マジックキングダム」(1772万人)、2位がカリフォルニア州にある「ディズニーランド」(1725万人)。それに次ぐ3位が、来場者数1600万人を誇る「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」。来場者数は、2022年と比べて約30パーセント増え、増加の一途をたどっている。
継続的な人気の理由として挙げられているのが、2021年にオープンした「スーパー・ニンテンドー・ワールド」。現在も入場には整理券が必要となるなど人気はとどまることを知らない。
そんな「スーパー・ニンテンドー・ワールド」に続くことができるのか…期待が寄せられているのが、同じエリア内に2024年12月、新たにオープンした「ドンキーコング・カントリー」。オープン初日には、朝4時から並ぶ人がでるなど混雑が続く。今後パークのさらなる入場者増加を牽引できるのか、期待は高まる一方だ。
■日本発の人気アニメ「名探偵コナン」初の常設アトラクションに
2024年で連載開始30周年を迎えた「名探偵コナン」は、漫画の最新刊が106巻まで販売され、アニメも老若男女問わず人気のコンテンツだ。
その「名探偵コナン」をテーマにした新たなアトラクションが2024年3月22日にオープンした。USJではこれまでにも“日本発のアニメ・マンガ”をテーマにしたアトラクション・ショーを期間限定で何度も実施してきたが「常設」のアトラクションを運営するのは今回が初の試みだ。
このアトラクションが作られたのは、元々、映画「ターミネーター」のアトラクションがあった場所。改装された建物内では、幅40メートルを超える巨大スクリーンで「コナン」のオリジナルストーリーを見ることができる。鑑賞中には、実写キャラクターたちによるアクションのほか、水しぶきやスモークなどの様々な仕掛けも用意されていて、コナンファンだけでなく、アニメを見たことがない人も一堂に楽しむことができる作りとなっている。
なお「ターミネーター2:3Ⅾ」の案内役として大人気だったキャラクター「綾小路麗華」は、2024年6月に「しゃべくり・ゼネラル・マネージャー」に就任。SNSやパーク内外での特別イベントに姿を見せているほか、ぬいぐるみやチケットホルダーなどのグッズ展開も行っている。
■開業延期を経て…国内外のファンが待ち望んだ新エリア「ドンキーコング・カントリー」がオープン
2024年12月11日には、新エリア「ドンキーコング・カントリー」が開業。「ドンキーコング」は任天堂のゲームシリーズで、スーパーマリオと並び、海外での人気も高い。
2021年にオープンした「スーパー・ニンテンドー・ワールド」を従来の1.7倍にまで拡張して作られたエリアで、メインとなる新アトラクション「ドンキーコングのクレイジー・トロッコ」などが楽しめる。これは、エリアに広がるジャングルや神殿の中を4人乗りのトロッコで駆け回る新アトラクション。途切れたレールを飛び越えたり水しぶきを浴びたりする仕掛けで、ゲームさながらの体験を味わうことができる。
またエリア内にある「ドンキーコングの家」では、時折あらわれるドンキーコングと会うことができるほか、限定フードやグッズなども販売されている。開業初日から大混雑の新エリアだが、実は元々の開業予定は、2024年春頃だった。なぜ延期したのか。
その理由として、USJは「常にゲストの期待を上回るワールドクラスの体験をお届けしたく尽力しており、これまでにない体験価値をさらに引き出し完成度をより高めるため、さらに一定の調整期間を要すると判断した」としている。延期の甲斐あってか、初日には海外客も多く訪れ、再現された「ドンキーコング」の世界に大興奮する姿が見られた。
■冬の風物詩「クリスマスツリー」終了へ…ほんまになくなる?
"USJの冬の名物"とされてきた30メートルを超える巨大な「クリスマスツリー」が、2024年度をもってラストの展示となることが発表された。
2008年から始まったこのイベントだが、2011年には「世界最高の輝きを放つクリスマスツリー」として、装飾された電飾数がギネス世界記録に認定。これまでに何度も記録を更新し続けてきた。
今回の「終了」発表に、これまでクリスマスシーズンにUSJを訪れていた客からは、SNS上で「寂しい」「今後どうなるの?」との反応があった一方、「ほんまにラスト?」「毎年ラストって言っているような気が…」などと疑う声があがるなど話題となった。
今回、USJに改めて今後のクリスマスイベントの行方について尋ねると、30メートル超えのツリーを現在と同じ場所で設置することは終了するとしたうえで、「来年以降はまだ企画開発中だが、家族やパートナーのあり方が変わってきているという社会の変化に合わせ、恋人だけではなく、友達など様々な大切な人と一緒にクリスマスを楽しめるようなイベントを企画していく」としている。
■増え続けるインバウンドに対応へ 賃金アップ&海外クルーを積極採用
毎年、変化を続けているUSJだが、アトラクションやイベントだけではなく、パークを支える従業員“クルー”に対しても、新たな取り組みを行っている。
2024年4月から、USJはパート、アルバイトクルーの時給を一律で50円アップ。引き上げ前の1160円~だったものが、現在は1210円~となっている。
さらに、増加するインバウンド客への対応などを見据え、“外国人クルー”の採用もスタート。USJの社員が直接現地に赴き、説明会や面接を実施し、クルーの採用をしている。
2024年に取材したのは「住み慣れた故郷とは違う環境にチャレンジしたい」と『ワーキングホリデー』の制度を利用して来日した、台湾出身のクルー(30)。レストランの接客などで四苦八苦しながらも、強みである台湾語の能力をいかし、インバウンド客の誘導などをこなしていた。
調査会社によると、テーマパーク業界全体では、入場制限が緩和された2022年度以降、売り上げや入場者数はコロナ前の水準まで回復。しかしその一方で、急激な需要回復に対応するため、従業員の確保が急務となっているという。
そうした中、2024年の1年間には約230人の外国人クルーを採用(うち直接雇用が約160人、ワーキングホリデー制度での雇用が約70人)。
出身は8割がアジアで、アメリカやカナダ、ブラジル、フランス、イタリアなどもいるという。使用する言語は、英語や中国語、韓国語が中心だが、クルーの能力次第では、それ以外にも対応しているそうだ。
変化を続けるパーク内でより充実したサービスを提供するため、クルーの確保・育成にも暇がない。
■いよいよ2025年…新たな挑戦は?「常に刺激を提供」
アニメやゲームの新エリア・アトラクションの開業が続き、大きな注目を集めた2024年。「待ってました」「新エリア嬉しい」「他のゲームのエリアも頼む」などといった前向きなコメントが多くみられたのは、USJの人気と努力あってこそと言えよう。
その一方で、「金額が高すぎる」「映画の要素が無くなりすぎて…」「バック・トゥ・ザ・フューチャーにまた乗りたい(バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライドは2016年に終了)」など、変化し続けるパークに対する批判の声や、昔を懐かしむ声があったのもまた事実である。
今後、2025年4月には、アメリカの「ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド」にも、日本のアニメが初上陸することも決まっている。国内はもちろんのこと海外でも、20年にわたって築きあげたクオリティやノウハウをいかしたアトラクション・グッズ・レストランなどを作り上げ、「総合テーマパーク」としての地位を確立、非日常的な体験を提供し続けている。
今後の展望については「世間のトレンドやゲストのニーズに寄り添いながら、様々なコンテンツや新規イベントなどを導入し、常に刺激を提供しつづけていく」そうだ。
たくさんの変革を続けてきたからこそ来場者数が年々増え続け、2年連続で“世界3位”という実績を作り上げてきたユニバーサル・スタジオ・ジャパン。
日本を代表するテーマパークの1つとして、今後も訪れたゲストに“非日常の体験と驚き”を与え続けてくれるだろう。
聞こえてくる批判の声をも糧にー。私たちも関西の放送局として、“世界一位の座を奪った”というニュースを報じる日が来ることを、大いに期待したい。