×

低迷期を経て…なでしこW杯連覇へ

2015年1月1日 10:02

 2015年6月、サッカーのFIFA女子ワールドカップ(W杯)がカナダで開催され、女子日本代表「なでしこジャパン」が大会連覇を狙う。

 4年前のドイツ大会では決して下馬評は高くなかったが、日本は粘り強いサッカーで勝ち進み、決勝では過去24回戦って一度も勝てなかったアメリカを延長PKの激闘の末に破り優勝。6回目の出場で初めて世界チャンピオンに輝いた。この時、日本が世界に衝撃を与えたのが、女子サッカーでは異例とも言える、人もボールも動く完成度の高い連動性のあるサッカーだった。身体能力で欧米の強豪に劣る日本は、その対抗策として正確で速いパスサッカーで相手を翻弄(ほんろう)し、そのプレースタイルから「女子版バルセロナ」とも称された。当時チームの平均年齢は約25歳。脂の乗りきった「なでしこジャパン」は翌年のロンドン五輪でも銀メダルを獲得し、五輪では過去最高の結果を残した。

 その後、佐々木則夫監督はさらなるチームの底上げと世代交代を視野に入れ、あえて若手を積極的に起用。W杯MVPで得点王の精神的支柱である澤穂希選手を一時的に代表招集外とするなど、W杯連覇を見据え新たなチーム作りに取りかかった。しかし、2013年は期待された若手の目立った台頭もなく、完成度の高かったチームを一度崩した結果、東アジアカップ優勝を逃すなど通算5勝4敗3分と低迷。相手チームが日本の戦術を研究し、対応し始めたことも苦戦の要因ともなった。

 それでもW杯を前年に控えた2014年は主力の海外組の多くを欠きながらも6月のアジアカップで初優勝。また10月には、W杯開催国の強豪カナダとのアウェー2連戦で連勝を飾るなど通算14勝2敗3分と安定した戦いを見せた。勝ち方を知る中堅ベテランをメンバーの軸に沿える戦いを多くしたことに加え、フォワードの高瀬愛実選手ら若手も徐々に日本代表のスタイルに慣れてきたことなどが結果に結びついた。一方で、高瀬を含め、187センチの長身ゴールキーパー・山根恵里奈選手以外、いまだW杯・ロンドン五輪のレギュラーメンバーの座を脅かすような強力な若手が存在していないのも事実だ。過密日程で行われるW杯では前回大会で一気にブレークした川澄奈穂美のような新戦力の出現も優勝へ欠かせない要素と言える。

 それでも現在FIFAランキング4位(去年12月末時点)の日本は、W杯グループリーグではスイス(同19位)、カメルーン(同52位)、エクアドル(同46位)と同組。大会序盤は優位な戦いが予想されている。しかし、佐々木監督は「日本は“天国のグループ”だと皆さんは言うが、2014年の男子のW杯ではそういうグループで強豪国が敗れているので、我々は気持ちを引き締めて1戦1戦を戦って連覇へチャレンジしたい」と連覇への道筋は決して簡単ではないことを強調した。

 ディフェンディングチャンピオンとして打倒日本を目指すライバルたちを相手にする一方で、連覇への周囲の期待という初のプレッシャーとも戦いながらW杯へ臨む「なでしこジャパン」。開幕までの半年で佐々木監督がどのようなチームを完成させるのか、メンタルコントロールを含め前回以上にその手腕が大きく問われることになりそうだ。そして最後にひとつ。ロンドン五輪以降、代表で輝きを放ち続けているとは必ずしも言えない澤選手はは36歳でW杯を迎える。百戦錬磨の大ベテランを佐々木監督は招集するのか否か。最終メンバーが発表される見込みの5月、その指揮官の決断も注目となりそうだ。