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【特集】尺八の魅力を伝えたい 世界が注目する日本一の尺八づくり職人 一本の尺八にかける思い

2024年8月6日 18:04
【特集】尺八の魅力を伝えたい 世界が注目する日本一の尺八づくり職人 一本の尺八にかける思い

日本一とも言われる尺八づくりの職人が能代市にいて、その技術を学ぼうと、世界各地の人が秋田を訪れています。

一年以上をかけ、一本一本丁寧につくりあげる尺八。

その技術と男性の思いを取材しました。

タケから生まれる、日本の伝統楽器。

長さ約54センチ、一尺八寸が名前の由来の「尺八」です。

いま、アジアを中心に愛好者が増えているといいます。

秋田市の神社で開かれていたのは、琴や三味線と奏でる、尺八の講習会です。

腕を磨きたいと、海外出身の人たちも集まっていました。

アメリカ出身
「尺八は独特の音色があって、もののけ姫とかいろいろな有名な曲があるので、それを吹きたいなと思って始めました」

中国出身
「(中国では)若い人を中心にいま燃えています!」

講習会を開いたのは、能代市の三浦龍畝さんです。

30年ほど前から、県内を拠点に尺八を教えています。

三浦龍畝さん
「いまは日本よりも外国、特に中国がものすごく増えています。私の作る楽器も半分以上中国に行っていますので」

尺八を作る「製管師」でもある三浦さん。

講習会の参加者の多くが、三浦さんが作った尺八に魅了された人たちです。

千葉から
「三浦先生のタケでないと味が出ないというか、ニュアンスが出ないというか、やっぱり性能が高いんです」

秋田市から
「吹いた感じが、音が抜ける、スパーンと、こもるのではなく抜けるから、その辺が素晴らしい」

日本を代表する演奏家からも尺八の製作を依頼されるという三浦さん。

能代市の自宅に工房があります。

1本をつくるのに費やす期間は1年以上、国内はもちろん、海外からも製作の依頼が寄せられていて、今では納品まで3年待ちの状態だといいます。

その技術を一目見ようと、中国で尺八店を営んでいる男性が三浦さんの元を訪れました。

曹晨さん
「三浦先生の尺八は中国で一番有名です。ほかの尺八ブランドはたくさんでも先生の龍畝名の尺八は一番有名です」

三浦さんが尺八づくりで最もこだわっているのが、タケの内部を整える工程です。

石膏や漆を混ぜて作った下地を、節を抜いたタケの内側に塗り重ねていきます。

三浦さん
「一遍に厚く塗ってしまうと、乾燥してからヒビが入ったりするので、3ミリぐらいずつ重ねていく感じが一番良い」

一本一本形状が違うタケ。

下地を塗り重ねることで、音程が正確になるだけでなく、響きが良く、吹き手にもやさしい尺八になるといいます。

三浦さんが独自に設計したもので、吹き口から菅尻に向かって内部が徐々に狭くなるのが一番の特徴です。

製作するために使う道具は、100種類以上。

三浦さんが手に取ったのは、先端に砥石を取り付けたオリジナルの道具です。

塗り重ねた下地は、乾くと膨張してくるため、内部を削って整えていきます。

このあと差し込んだのは、奥行ごとに変わる内径を図る道具。

光の漏れ具合から、設計通りになっているか確認します。

誤差は0.1ミリも許されません。

それぞれ身の厚さや形が異なる自然のタケ。

下地を塗っては削る作業を何度も繰り返します。

タケの内部を整える工程だけで半年以上を要することもあるといいます。

三浦さん
「日本のトンネル切削技術は世界一と言われていますよね。あの大きなシールドマシンで。あれの小さいのが欲しいなっていつも思っています」

世界をうならせる、三浦さんの尺八。

元々は奈良時代に現在の中国から伝わったと言われています。

今では日本の伝統楽器として世界中で親しまれている尺八。

三浦さんは、自身の技術を惜しげもなく伝えています。

三浦さん
「独学でやるしかなくて、苦しい時期があったので、そういう思いを尺八づくりを真剣にやろうと思った人たちには味わってほしくないなと」

高校生の時から趣味で尺八を習っていた三浦さん。

製管師の道を志したのは、22歳の時でした。

しかし、そこは職人たちが限られたパイを奪い合う、厳しい世界です。

尺八づくりを詳しく教えてくれる職人は誰一人いませんでした。

それでも必死に尺八を作り続けて半世紀。

その技を学びたいと、世界各地の人々が三浦さんの元を訪れるようになりました。

「良い尺八を作るためには良い演奏家でなければならない」と話す三浦さん。

その音色を世界中で響かせています。

三浦さん
「中国の人たちのパワーに圧倒されて、日本の若い人たち、もう少し興味を持ってくれないかなと、残念だなと、自分の国の文化にもう少し興味を持って頂ければいいなと、かねがね思っています」

世界に同じものはひとつとしてない、尺八。

それぞれの吹き手が響かせたい音色を、三浦さんはこれからも追い求めます。

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