建設計画が順調に進む新県立体育館 建設費は新スタジアムの2倍以上の約200億円 経済効果に専門家からは慎重な声も
新たな県立体育館の建設に向けた計画は順調に進んでいます。県は、施設の整備と運営を担う事業者の公募を今月中に始めることにしています。建設費は新スタジアムの2倍以上の約200億円。いよいよ動き始める一大プロジェクトを検証します。
佐竹知事
「菅前総理大臣が全面的にバックアップすると」
室伏長官
「計画段階からハード整備に至る段階まで、積極的に支援させていただこう という方針になっております」
湯沢市出身の菅前総理大臣。さらに。ハンマー投げのオリンピック金メダリスト、スポーツ庁の室伏広治長官も期待を示す新たな県立体育館。
検討に検討を重ね、県が施設整備の基本計画を示したのは去年12月。
冒頭に記されているのは同じ八橋運動公園内にあるスポーツ科学センターの機能を集約することです。
建設地は現在の県立体育館のすぐそば。来年度中に着工し、4年後の2028年秋の開館を目指す計画です。
6000人以上が収容できるメインアリーナはプロスポーツやコンサートなど、興行での利用をメインに。
サブアリーナはアマチュアのスポーツ大会や、レクリエーションなどでの利用を想定しています。
建設費は約200億円。国の補助金などを活用することで、県の実質的な負担は96億円程度と見込まれています。一方、維持管理・運営費は年間5億円 。予想される収入はおよそ1億5000万円で毎年3億5000万円程度を税金で賄うことになります。
現在の県立体育館の維持管理・運営費は年間4800万円ほど。県の持ち出しは8倍以上になる見通しです。
県は民間のノウハウを取り入れることで収支の改善につなげたいと説明していますが、数々の自治体の政策決定に携わってきたスポーツ経済学の専門家は。
中京大学 舟橋弘晃准教授
「民間市場で提供できない県民に対する福祉増進サービスの経費のようなものも含まれての この額だと思いますので、単純に3.5億という数字だけを切り取ってそれが高コストなんだと、数字だけが独り歩きしてはいけないかなという風には思っております。ただですね・・・行政主導で整備されたアリーナについても例えばSAGAアリーナの場合は、運営事業者に10年間で50億相当の委託料が支払われているんですけど公園全体の管理なんですね。アリーナ単体だけでいうとほとんどトントンで経営が出来ています。沖縄アリーナに至っては、管理委託料5年で3億円を拠出するという計画だったんですけど、事業者側が受け取りを辞退しているという状況になっているんですね。地方都市でもそういうことが可能になってきていますんで、そういう事例と比較すると今回の秋田の新アリーナの構想は、従来型の公共主導の施設計画であるという印象はどうしてもあるかなという。」
バスケットボールB1秋田ノーザンハピネッツのホームアリーナとしても使われる予定の新たな県立体育館。
県議会で出されたのが、経済効果に関する質問です。
小野一彦議員
「興行の収入が県経済、あるいは地域の色んな業種に与えるような経済波及効果については、ある程度シミュレーションはされているんでしょうか?」
樋口・県スポーツ振興課長
「直接効果として約32億円程度、一次二次波及効果を含めた総合効果としまして(年間)47億円程度を見込んでございます。」
県は、投じる税金よりも得られる経済効果の方が大きいと説明しています。
しかし。
中京大学 舟橋弘晃准教授
「あくまで経済波及効果は売上ベースの試算なので、利益を見積もるためには原価を引いたり人件費を引く作業をしなければならないので、もっと額は小さくなるはず。もう1つ重要なポイントとして、例えばバスケットボールの観戦に5000円使いましたっていうこの5000円は、多くの場合我々は同時に5000円どこかで節約をするはずなんですね。支出が純増することは考えてにくいんですね。仮にバスケを観戦しなかった場合は食事とか他の娯楽に費やしたはずのお金だと思うんですね。それがバスケに振り分けられたっていうことなんですね。なので新県立体育館も基本的には経済効果は無いと私は見ています。」
そのうえで舟橋准教授は、基本計画の中にある、お金に換算できない価値を生み出していくためにもプロバスケットボールに限らず多様な興行が行われる施設となる必要があると強調します。
中京大学 舟橋弘晃准教授
「興行主になるべく選ばれる施設にならなきゃいけない。それが叶わないと、先ほど申し上げたような子供に夢を与えるとか、にぎわい創りをするという上位目標が到底叶いませんので、その辺りをシビアに問うていく必要があるかなっていうふうに思ってます。」
県は、施設整備と運営を担う事業者の公募を今月中に始めることにしていて、今年中に決まる見通しです。