近年被害が急増する「松枯れ」その原因と影響は…
最近、紅葉ではないのに葉が赤くなった木があちこちで見られています。木に害虫が侵入し、マツが枯れてしまう「松枯れ」の被害で、近年県内で急増しています。取材しました。
太田英梨花アナ
「秋田市と潟上市を結ぶ、県道秋田天王線です。こちらの道路沿いにはマツの木が植えられているんですが、赤く変色してしまっている木が目立ちます」
「夕日の松原」とも呼ばれるこの松林。約14キロにわたってマツが植えられていて、日本海から吹き付ける風や砂を防いできました。重要な役割を果たしているこのマツの害虫被害「松枯れ」が深刻化しています。
県のまとめによりますと、県内で初めて松枯れが確認されたのは42前の1982年です。その後増加傾向が続き2002年にピークを迎えました。被害が減った時期もありましたが、近年また被害が急増しています。
松枯れの被害を把握するため、県内では連日のように調査が行われています。
枯れている木の長さや太さを測り、1本1本印をつけていきます。
相原林業 南條星雅さん
「こういう細長い傷がついていると思うんですけれど、これがマツノマダラカミキリっていう松を枯れさせる虫が産卵した痕になりますので、その産卵した虫が大きくなって幼虫になって中に入っていった穴っていうのが、こう丸くなるんですけれど、これが材入痕っていう痕になります」「冬を越えるため暖かいところで過ごそうとどんどん奥に入っていった穴っていうのがこの痕になりますね」
マツノマダラカミキリは春に木の中で成虫になると体長1ミリにも満たない小さな病原体を連れて、夏から秋にかけて健全なマツに飛び移ります。
食害にあった木は1か月ほどで赤く枯れ始めるといいます。
相原林業 南條星雅さん
「やっぱり年々増えてきているようには感じますね。去年も一気に増えたなと思ったんですけど、やっぱり今年調査してみたら去年よりもさらに増えたなって感じるところがあります。」
調査が行われていた場所から2.5キロほど離れた大学の敷地内でも松枯れが確認されています。
公共施設や一般家庭でも被害が増えている「松枯れ」。森林生態学が専門の県立大学の星崎和彦教授は高温と雨が少ない近年の気候が大きく影響していると指摘しています。
秋田県立大学 星崎和彦教授
「去年なんか猛暑でしたよね。今年も割とずっと暑かったので、そういう状況が当たり前になってきていて、虫にとって増殖しやすい気象条件という年が連続しているっていう」
松枯れを引き起こす害虫は、夏の気温が高くなると活動が活発になります。また、近年は9月以降も平年より気温が高い日が多くなり、活動期間が長くなっていると星崎教授は分析しています。
さらに雨が少ないことも松枯れに大きく影響しているといいます
星崎教授
「夏に雨が全然降らなくて乾燥した状態がしばらく続くと、土壌の水分量減りますよね。そうすると、水を吸い上げる力が足りなくなってしまうんですよね。なので、しおれやすくなっているっていう状況が重なってるんですね」
秋田市で去年8月の1か月間に降った雨の量はわずか23.5ミリで、平年の1割余り。今年の8月も平年の約3割の58.5ミリにとどまっています。マツが水分を十分に吸収できていないことで、枯れやすい状況を作り出してしまっているということです。
枯れてしまったマツは元の状態には戻らず、害虫が増殖する恐れがあるため伐採する必要があります。防砂林や防風林としての役割を果たしてるマツが減っていけば、わたしたちの生活にも影響を及ぼします。
県はさらなる被害拡大を抑えるため、害虫が活発になる夏に積極的に薬をまくなどして対策を行っていく考えです。
松枯れが周辺に拡大しないようにするために家の庭のマツの伐採・撤去の費用を補助している市町村もあります。詳しくはホームページなどをご確認ください。以上、特集でした。