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【特集】冬眠しないクマ なぜ街中をさまよう?異常事態を徹底検証 冬眠のメカニズムと出没の謎

2025年1月21日 19:01
【特集】冬眠しないクマ なぜ街中をさまよう?異常事態を徹底検証 冬眠のメカニズムと出没の謎

県内では、冬になってもクマの目撃例が続いています。

秋田市では、去年11月から12月にかけて、建物の中にクマが居座る事態が相次いで発生しました。

冬眠しているはずの時季にクマが街中をさまよう異常事態がなぜ起きているのか探りました。

去年11月。

秋田市土崎港の市街地にあるスーパーにクマが侵入、従業員に襲いかかり、その後、店舗に留まり続けました。

佐々木勇憲 記者
「いま猟友会、警察がおりを店の中へと入れていきました。風除室の中に設置しておくということです」


発生から丸2日。

店内で捕獲されたのは、推定6歳のメスのクマ。

体重は約70キロあり、脂肪を蓄え、丸々と太っていました。

県や秋田市によりますと、クマは出口を探すため、売り場の棚を壊したりガラスを割ったりしましたが、店の中の商品を食い荒らしたような形跡は見当たらなかったといいます。

県内ではその後も街をさまようクマが各地で目撃されています。

カメラがとらえたその姿は、いずれも丸々として見えます。

県自然保護課 近藤麻実さん
「結構あちこちで足跡が見かけられていて、ただ通っただけ、まだ寝ていない、ウロウロしている。目的地を目指してどこかに歩いているわけではなく、本当にあちらこちらを目的もなくさまよっている」

冬眠せずにさまようクマ。

なぜ冬の間も人の生活圏に出続けるのか?

冬眠のメカニズムと出没の謎に迫ります。

■街中をさまようクマ

先月下旬。

秋田市にある自動車整備工場にクマが侵入しました。

発見される数時間前、現場から700メートルほど離れた住宅街にある防犯カメラは、クマとみられる動物の姿をとらえていました。

去年7月に運用が始まった、県のツキノワグマ等情報マップシステム「クマダス」。

出没情報を集約していて、地図画面にはクマの目撃を表すアイコンが、県内の広い範囲に示されています。

クマダスによると、先月1日以降、20日までに184件の目撃情報が寄せられています。

記者
「これとこれは大きい」
県自然保護課 近藤麻実さん
「サイズが違いますね。明らかに足跡の大きさが違うので、そういうこと(親子)なのか」

クマが目撃された地点を調べる、県自然保護課の近藤麻実さん。

近藤さんは、2020年に研究者から県職員に転身した、クマのスペシャリストです。

近藤さん
「結構あちこちで足跡がみかけられていて、ただ通っただけ、まだ寝ていない、ウロウロしている。目的地を目指してどこかに歩いているわけではなく、本当にあちらこちらを目的もなくさまよっている」

取材した日は、クマの目撃例が続いていた秋田市の飯島地区や県立大学の敷地を調査しました。

近藤さん
「食べるものがある限り、クマは起きていることができます」
「何か集落付近で食べるものがいつまでもあって、それに餌付いているということであれば、食べることができるので(冬も)起きている」

■冬眠のメカニズム

秋田市にある、大森山動物園。

冬の間もエサを与え、冬眠させない動物園が多くある中、大森山動物園では、動物本来の生態を伝えることを目的に、クマを冬眠に誘導する取り組みをしています。

秋田市大森山動物園 宇佐美均さん
「基本、エサを調整して、自然のサイクルに合わせた形で、秋口・9月中旬にエサを少しずつ増やしてあげて、冬眠に入る12月中頃にはエサを減らしてという形でエサで調整しながら、冬眠に入ってもらうという形をとっています」

冬眠中でも意外に動き回るクマ。

取材した日は、楽な姿勢をとりたかったのか、ワラを抱え込んで丸くなる姿が映っていました。

宇佐美さん
「ぐっすり何も聞こえない状態で寝ているイメージもあるかもしれませんけど、音は聞こえますし、時々動いたりもしますので、(クマの冬眠は)爆睡状態という感覚ではない。物音に気付いて反応したりというのもありますので」

さらにメスのクマは冬眠中に子どもを産み、子育てもします。

また、暖冬の年は、2月に目覚めて、活動的になるクマもいるといいます。

クマの冬眠には、エサと気温が大きく影響しています。

■学習して慣れたクマ

髙橋勤 記者
「遠く離れた場所からでもクマが歩いている様子が確認できます」

横手市に姿を現したクマは、冬眠せずに、カキの木のある場所に出没し続けました。

冬の間もクマが出続ける背景について、クマの専門職員の近藤さんは、昨年度の大量出没で、人里近くの環境に慣れてしまったことや、冬でも人里なら食べ物が簡単に手に入ることを学習してしまったのではないかと推測しています。

近藤さん
「昨年度もかなり遅くまでクマが集落にいてしまった、恐らく近くで寝たであろう集落近くの環境に慣れたクマがたくさん出てしまった。前のシーズンにかなり集落に寄せてしまったというのが(要因として)効いているような気がしています」

冬の間も集落や市街地をかっ歩するクマ。

「クマは冬眠するもの」という常識が通用しない異常事態が、いま秋田で起きています。

■どう対処?担当記者が解説

田村修アナウンサー
「ここからはクマの取材を続けている川口大介記者とお伝えします。冬の間もクマが出続けている要因について、クマの専門職員の近藤さんは、昨年度の大量出没が引き金になったのではないかという見方でしたね」

川口大介 記者
「はい。昨年度は山の中が極端なエサ不足で、人里近くでたくさんのクマが目撃されました。クマ目線だと『ここまで行くことができた』『ここで食べ物が得られた』といったことを学習・経験したと言えます。

鴨下望美アナウンサー
「そういえば、昨年度は雪の降る中、カキを食べるクマの映像が秋田放送にも多く寄せられましたね」

川口記者
「はい。それまで秋田で暮らすクマはカキを食べることはあまりないと言われていて、昨年度をきっかけに、カキを食べ物としてしっかり認識したと近藤さんは考えています」

田村アナ
「冬の間もクマが街中をさまよい続けるという我々の常識を超えた異常事態への対処はどうしたらいいでしょうか?」

川口記者
「建物の中に侵入すると、猟銃も麻酔銃も使えず、対応が困難になります。倉庫や車庫のシャッターはできるだけ閉めてください。また、クマのエサとなりえる生ゴミなどの管理の徹底も必要です。そして、足跡を発見したら、家族や近所の人と情報共有してください。また、VTRでも紹介したクマダスへの投稿も注意喚起となります。市街地でクマを目撃した場合は、人身被害の危険性が増し、緊急度が上がります。お住いの市町村や警察への通報も大切です。また、県は、今年度、クマが指定管理鳥獣になったことから、クマの捕獲などについて定める「管理計画」を、今後、改訂する方針で、奥山にいるクマの生態は守りつつ、集落やその周辺では捕獲の圧力を強めて、クマの行動を抑制していく方針です」

最終更新日:2025年1月21日 19:01
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