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“団地の水は安心だと聞いていた...” 岩倉団地水源から国の基準に近い数値のPFAS検出...岩倉市が独自対策へ「県水で濃度低減を目指す」

2024年12月27日 18:37
“団地の水は安心だと聞いていた...”  岩倉団地水源から国の基準に近い数値のPFAS検出...岩倉市が独自対策へ「県水で濃度低減を目指す」

発がん性などが疑われる化学物質「PFAS」。愛知県岩倉市では、約2,600世帯に供給する水源から全国で最も高い濃度が確認されました。水源が地下水であることから、原因の調査は困難なものに。“安全な水”を確保するため、岩倉市は対策に乗り出しました。

“全国で最も高い”数値が岩倉団地水源で検出

愛知県岩倉市で10年ほど暮らす加藤和代さん(77歳)。今まで使っていた水から、有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が検出されました。

以前は泡消化剤やフライパンの表面加工などに使用されていた「PFAS」。体内に入ると発がん性など、健康への影響が疑われています。

岩倉市では今年5月、地下水を使用する岩倉団地水源から、1Lあたり49ナノグラムのPFASが検出。国が定める暫定目標値は超えなかったものの、これまで高い数値だった地域で対策が進み、環境省・国交省が発表した「水道水のPFAS調査(本年度)」によると、今年、岩倉団地水源が全国で最も高い数値に。岩倉市の1割にあたる約2,600世帯が、その水で生活しています。

「PFASは新聞なんかに載ってた。ちょっとショックですよ。地下水は安全だと思ってたから」と、心境を明かす加藤さん。

他住民からも、「団地に来たときは、団地の水を安心だと聞いていた。どうしてこうなったの、なんでこうなるの、今度どうなるのかがすごく不安です」、「息子の妻や子どもになると、ちょっと引っかかりますよね。心配だなって。(住民で)勉強して、高い値が出ていることをどうすればいいか、みんなで考えてやらないと」など、PFAS検出に対してさまざまな声が寄せられていました。

加藤さんも不安に思い、先月、血液検査を受診。日本では血中濃度の指針は定められていませんが、アメリカの学術機関が健康影響へのリスクが上がるとしているPFASの値は、1mLあたり20ナノグラムとなっています。血液検査の結果、加藤さんのPFASの血中濃度は、その3倍の“60.1ナノグラム”という結果に。

当時の心境について、「私自身はこんなに高いと思ってなかった。60ナノグラムありますと言われても、ピンとこなかった。説明を聞いて、『え、なにこれ高いじゃん』と思って」と振り返る加藤さん。今のところ、PFASが悪影響を及ぼすとされる腎臓などに、異変はないといいます。

現在の対策について、「(他の住民は)天然水買ってくるって言うけど、私もそれは考えるけど限度がある」と話し、活性炭で除去できると聞いたことから、浄水器を設置。「(水を)沸かせば、なんとかなるものでもない。全部生活を変えないと」と加藤さんは話します。

“安全な水”の確保「県水で濃度低減を目指す」

なぜ、岩倉団地水源から「PFAS」が検出されたのでしょうか。原因の調査には膨大な費用と時間がかかるため、自治体は頭を抱えています。

『岩倉市役所』上下水道課・田中伸行課長曰く、「原因がわかれば取り除いてしまえばいいけど、いろんなものに使われてたので、どこにどういう具合に堆積してるかわからない」というPFAS。続けて、「岩倉市では50(暫定目標値)以下なので、(国は)何もしてくれないのが現実」と現状を明かします。

地下水を使用しているこの地域。『京都大学』原田浩二准教授は、原因を突き止めるのは難しいといいます。その理由について、原田准教授は「地下水がどこから流れてきているのか、まず調べる上で必要ですが、なかなか難しい、はっきり分からない」と話し、早急にするべき対策として、「住民にとっては毎日使う水なので、(PFASの)濃度をしっかり下げていくということが重要」と述べました。

まずは、“安全な水”の確保。岩倉市は対策に乗り出しました。来年4月から、岩倉市では県営水道の水を半分混ぜ、「PFAS」の濃度を下げた水を供給予定。『岩倉市役所』田中課長は、「県水(県営水道の水)を入れて、県水はPFASが検出されてないから、そこで濃度低減をはかる」と話します。

また県水の購入費は、令和9年度までは水道料金に上乗せしないとし、「(国の)暫定基準が変わって厳しくなったときに、100%県水に切り替えることも可能になるので、先を見越しても比較的安価で、この先も使える対策になると思う」と話しました。

来年の春をめどに、基準値“引き下げ”を検討

全国的にも、さまざまな地域で検出されている「PFAS」。

国交省と環境省によると、1Lあたり50ナノグラムを越える数値が検出された水道事業所は、過去4年間で全国で14か所。自治体で見ると、過去4年間で目標値を超えた東海地方の自治体は4か所。それぞれ最大値は、各務原市550ng/L(2021年)、桑名市290ng/L (2020年)、北名古屋市175ng/L (2020年)、豊山町175ng/L (2020年)となっていました。

しかし、今年はPFASが検出された水道事業所は全国で0か所。水源を切り替えるなど、さまざまな対策で最新の検査では基準値を下回る結果となりました。

一方、原因や人体への影響について、はっきりわかっていない部分が多いことから、“基準値を下回っていても不安”なのがPFAS。

さらに、不明点が多いからこそ、PFASの基準値は国によってばらつきがあります。環境省によると、“PFAS”とは、有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物を総称したもの。

PFASの代表的な物質である、「PFOS」、「PFOA」について、日本で定められている基準は合算して1Lあたり50ナノグラム(2020年)、アメリカはそれぞれ1Lあたり4ナノグラム(2024年)。

一方、ドイツはそれぞれ1Lあたり100ナノグラム(2017年)となっています。ドイツは、2028年にPFOS・PFOAのほか2物質を含む総量を、20ナノグラムとする方針を発表。日本も基準値「50」の引き下げなどの方針を、来年の春をめどに検討しているといいます。

最終更新日:2024年12月27日 18:37
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