【名古屋市長選】“給食費無償化”はどうなる? 全国的には拡大傾向も…課題は年間約60億円の財源 各候補者の主張は?
食材費は年々高騰…家計を圧迫する給食費
名古屋市東区の名古屋市立東桜小学校。午前の授業が終わり、子どもたちが楽しみにしているのが給食です。
この日のメニューは、ご飯にわかさぎの唐揚げ、五目豆腐にバナナもついています。もりもり食べる子どもたち。さらに、余ったバナナを巡って、じゃんけんによる争奪戦が繰り広げられていました。
学校生活に欠かせない給食。名古屋市では、給食費として各家庭が毎月4400円を負担しています。
子育て中の親たちに話を聞いてみると、「毎月2人分でPTA会費など全部入れると1万円以上引かれる」「(一年間で)結構飛びますね。負担といえば負担」という声が上がり、値上げラッシュが続く中、給食費が家計の負担になっているようです。
しかし、問題になるのが財源です。名古屋市教育委員会によると、小学校の給食費を無償化した場合、市が年間約60億円負担することになるということです。
さらに…。
名古屋市教育委員会 白井純也さん:
「主食のごはん・パン、その他の牛乳なども毎年価格は上がっている。全体を通じて食材費については上がっているかなと考えている」
近年の食材費の高騰などをうけ、名古屋市では4年前に給食費を600円値上げ。それだけではまかない切れず、市が2年前に5億円、今年度は倍の10億円を負担。今後、さらに増える可能性もあるといいます。
給食費を巡る各候補者の訴えは…?
給食費無償化について、河村前市長は「金持ちの優遇になる」と主張し、一律の無償化に否定的な立場でした。
今回の市長選の候補者は、給食費の無償化についてどのように主張しているのでしょうか。
広沢一郎さんは、一律の無償化はせず、就学支援として世帯年収700万円以下(4人世帯の場合の世帯年収)の家庭に対し、給食費のほか修学旅行費なども援助するとしています。ただし、就学援助を受けられる人と受けられない人の間で不公平感が出るという懸念も。
前副市長 無・新 広沢一郎氏(60):
「子どもにかかるお金は給食だけではないですので、給食だけを無償化にするよりも、その他いろいろと無償となったほうがいい」
学校給食の無償化を最初に実現すると公約として掲げているのは、大塚耕平さんです。小学校の無償化を行った後、中学校でも無償化すると公約にあげています。ただし、財源については明言しておらず、予算の組み替えや税制の見直しで行うとみられています。
前参院議員 無・新 大塚耕平氏(65):
「第一に給食費の無償化、給食費ゼロ。これはやらせてください。議会の皆さんとしっかり話し合えば、財源は確保できます」
尾形慶子さんは、今の減税政策を見直して財源を確保し、「すぐやる政策」として小学校の給食を無償化すると訴えています。河村前市長が行っていた市民税減税を中止するとしていて、そこから財源を見積もるとみられています。
政治団体共同代表 無・新 尾形慶子氏(67):
「給食費を無償にして、給食費毎月4400円。これを無償にすれば4万円以上タダになる」
他の候補については、太田敏光さんは、無償化は行うが財源は国に求めるとしています。水谷昇さんは、所得制限を付けたうえでの給食費無償化を実施。不破英紀さんは、小中学校で無償化。鈴木慶明さんは、無償化について質問しましたが現時点ではまだ回答を得られていません。
様々な意見がある中、給食費の無償化は、今度の名古屋市長選の争点の一つになっています。
全国で広まる給食費無償化 年間約60億円の財源は?
現在、名古屋市の小学校の給食費は月4400円。子ども二人の四人家族を想定した場合、夏休みなどを差し引いて11か月を分支払うことになるので、二人分だと年間で9万6800円となります。
これを無償化するとどうなるのでしょうか。名古屋市によると年間約60億円の財源が必要だということです。名古屋市の市民税の納税者は約121万人ですが、その納税者で負担すると、一人あたり約5000円。名古屋市の予算1兆5000億円のうち、0.4%が給食費に充てられることになります。
給食費無償化を実施している自治体は、ここ6年で7倍に増加。去年9月時点では、全国の約3割にあたる547自治体で実施されています。愛知県でも54市町村のうち7つの自治体で行われていますが、県内の約1割と、全国より少ないのが現状です。
大阪市など規模が大きい自治体でも実施されていることから、無償化の実現に市町村規模は関係ないようですが、基本的には自治体の努力でなりたっているため、各自治体で対応にバラつきがあるのも事実です。そのため、国が一律で負担すべきという声もあります。
子育て世代にとって給食費の無償化はうれしい話ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。メリットは、子育て世帯の負担が軽くなり、これに魅力を感じて移住者が増え、税収も期待できるということ。デメリットは財政負担が増えるということが挙げられます。
給食費の無償化が争点の一つとなっている名古屋市長選は、11月24日に投開票されます。